三菱UFJ信託銀行とNTTデータは、三菱UFJ信託銀行が手がけるデジタルアセット全般の発行・管理基盤「Progmat(プログマ)」と、国内で圧倒的なシェアを誇るNTTデータグループの社債管理基盤を連携させ、デジタル社債向け「標準化インフラ」の構築を進めることに合意。さらに三菱UFJ銀行は両社と協業して、同インフラを用いたデジタル社債の発行支援を開始する。
リリースによると、Progmat(9月以降に独立会社「Progmat(仮)」に移管予定)は現在、国内で組成された公募デジタル証券、いわゆるセキュリティ・トークン(ST)の運用資産残高の80%以上を占めるという。だが、国内市場の大部分は不動産セキュリティ・トークンで、デジタル社債、いわゆる社債セキュリティ・トークンはまだ試験的なものにとどまっていた。
今回の提携は、伝統的な社債(振替債)における受託金融機関向けシステムとして、シェア95%を誇るNTTデータグループの「B-Apps Online」のデジタル社債管理向け機能「DBN(仮)」と、Progmatを連携させ、そこに振替債の多くの受託実績を持つ三菱UFJ銀行が加わることで、デジタル社債市場の活性化を図っていくものだ。
Progmatの開発・提供を推進している三菱UFJ信託銀行デジタル企画室デジタルアセット事業室Vice President of Productの齊藤達哉氏は「昨年11月頃から、2社でプロトタイプ開発を進めてきた。想定利用者の一角として、随一の社債管理実績を有する三菱UFJ銀行も入って検証を行い、商用化可能と判断した。NTTデータの既存基盤を導入している全金融機関を対象に提供していく」とCoinDesk JAPANに語った。
ステーブルコインとの連携も視野
ブロックチェーン技術を使ったデジタル証券(セキュリティ・トークン)は、小口化・効率化・コスト削減などの効果が期待され、特にデジタル社債は、投資家情報をリアルタイムに把握できることからマーケティングへの活用なども期待されてきた。
だが現状は「実態として、トライアルから先には進んでいない」(齊藤氏)。三菱UFJ信託銀行もこれまで信託銀行としての競争優位性を発揮できる不動産STにリソースを集中して取り組んできたという。
今回、伝統的な社債、セキュリティ・トークンのそれぞれで大きなシェアを持つNTTデータと三菱UFJ信託銀行が提携し、さらに三菱UFJ銀行が加わることで、金融機関や事業会社にとってはデジタル社債発行に向けたハードルは一段と下がることになる。
さらに今回の取り組みには、他のセキュリティ・トークン・プラットフォームにはない強みがある。Progmatが発行に向けて取り組んでいるステーブルコインだ。日本では6月に改正資金決済法が施行され、電子決済手段に位置づけられたステーブルコインの発行が可能となった。
「三菱UFJ信託銀行は、ステーブルコインには規制策定段階から積極的にかかわってきた。Progmatならステーブルコインとセキュリティ・トークンの連携を迅速に行うことができるうえ、独立会社化による各メガバンクとのパートナーシップにより、一気にマスアダプションが可能なポジションにいる」(齊藤氏)
デジタル社債の市場規模について、同行は2032年時点で個人向け社債発行額1.34兆円の4%の500億円、グリーンボンド発行額1.93兆円の9%の1800億円、年間発行額の合計は、少なくとも2300億円と試算している。
|文:増田隆幸
|画像:リリースより