ブロックチェーンを企業へ提供してきた最初期の企業の一つであるファクトム(Factom)は、米国政府の出資による、国の送電網を保護する技術実験に参加している。
9月5日(現地時間)の発表によると、「モノのインターネット」(IoT) のセキュリティ関連スタートアップ企業であるTFAラボ (TFA Labs)が、送電網上の機器がマルウェアに感染していないか診断するファクトムのプロトコルについて有効性実験を行っている。
米国エネルギー省(DOE)から20万ドル (約2,140万円) 近くの資金を受けるこのプロジェクトの目的は、数多くあるこうした機器のセキュリティを向上させることだ。
ある実験では、TFAラボはファクトムのブロックチェーン上で機器の正常性や状態などの生データを確認している。その他の実験では、機器に恒久的にインストールされるソフトウェアであるファームウェアに、デジタルIDの割り当てをしようとしている。もしファイルが改ざんされた場合、そのデジタルIDに合致しない暗号化ハッシュを生成して、何か不具合が生じたことを知らせる。
「生データや、そのデータ・ハッシュを格納できる」と、TFAラボのCEOであるデニス・バンフィールド (Dennis Bunfield) 氏はコインデスクに語り「IoT機器の利用に最適だ」と胸を張る。
実験の第一段階は3月まで続き、TFAはユースケースのためのプロトタイプを得たいとしている。第2段階に入った際には、TFAラボは機器メーカーと協力し、 米国エネルギー省 から100万ドル (約1億700万円) 近くの資金提供を受ける可能性がある。
ブロックチェーン・スタートアップによる精力的な取り組み
ファクタムは他にも米国国土安全保障省(DHS)と協同して、ブロックチェーン上でカメラやセンサーのデータを記録するプロジェクトを進めている。ビル&メリンダ・ゲイツ財団とは、世界中の僻地に居住する個人の記録をデジタル化できるかどうかを検証している。
ユーザー企業は、慣れ親しんだプログラム言語を使ってファクトムのプロトコルを取り扱うことができる、とはファクトム・プロトコルのマーケティング責任者であるグレッグ・フォースト(Greg Forst)氏の弁だ。
「政府、スタートアップ企業、そして誰に対してでも、我々はデータ中心主義であり、法人の事業用途に耐えうるレベルのものを提供する」とフォスト氏は語る。
2014年にテキサス州オースティンで設立されたこの企業は、最初期にトークンのオファリングをしており、2015年に「ファクトイズ (factoids)」の販売により110万ドル(約1.1億円)を調達している。
しかし、「このトークンがなければ、我々のプロトコルを使えない訳ではありません」とバンフィールド氏は述べる。「プロトコルを使うのに仮想通貨に触れる必要はなく、そのため政府や企業が使うのに最適な製品になっています」
その後のシードおよびシリーズAラウンドで、ファクトムは800万ドル(約8億5,500万円)以上を調達した。ホンジュラスにおいて土地所有権を記録する初期のプロジェクトは失速して、ファクトムは後に住宅ローン業界へ製品を投入している。今年7月には、非営利団体トリアル・ファンデーション (Triall Foundation) がファクトムについて検証試験を行っていると発表した。
翻訳:下和田里咲
編集:T.Minamoto
写真: Power grid image via Shutterstock
原文:US Energy Department Funds Trial of Factom Blockchain to Secure Power Grid