- メタバースに特化したブロックチェーン「Lamina1」は、開発者とクリエイターのためのベータネットとハブを立ち上げた。
- Lamina1のCEO、レベッカ・バーキン(Rebecca Barkin)氏は、メインネットのローンチは「そう遠くない」と述べ、来年初頭までに、より広く一般的に使用できるプロダクトの提供を目指していると語った。
SF作家のニール・スティーヴンスン(Neal Stephenson)氏とビットコイン投資家のピーター・ヴェッセネス(Peter Vessenes)氏が共同で設立した、メタバースに特化したレイヤー1ブロックチェーン「Lamina1」は、未来のオープンなメタバースの基本的要素をデザインするクリエイターのためのベータネットとハブを立ち上げた。
スティーヴンスン氏は1992年、小説『スノウ・クラッシュ』の中で、デジタル世界と物理世界が絡み合うサイバーパンクの未来を描き、「メタバース」という言葉を生み出した。しかし近年、いわゆる「メタバース」は断片化された仮想世界として具現化され、互いに相互運用可能な状態には至っていない。
足場作り
スティーヴンスン氏は ビジネス誌『Fast Company』での最近のインタビューで、Web2の潜在的な危険と、デジタル空間を結びつける「空間的組織」に由来する、メタバースに関する現在のビジョンについて語った。
「私たちがLamina1で(メタバースに関して)取り組んでいるアイデアは、より根本的なもののように感じている。1つの特定の解釈や製品ではなく、体験を構築するために誰でも使える機能のベースレイヤーのようなものだ」
Lamina1は8月14日、Web3開発者のための新しいハブとベータネット・ブロックチェーンを立ち上げ、Web3ウォレットの体験とオンボーディング・プロセスを簡素化することで、スティーブンスン氏のビジョンを発展させた。ベータネットの期間中、パートナー、バリデーター、開発者らは、ネットワークの試したり、ツールキットをテストすることができる。
Lamina1によると、ベータネットの目的は、来るメインネットのローンチに向けて、開発者が「より永続的で安定した環境で」オープン・メタバースの足場を作ることができるようにすることだという。
拡張現実を手掛けるマジック・リープ(Magic Leap)の元幹部でLamina1のCEO、レベッカ・バーキン氏は、ベータネットは今年1月に稼働を開始し、4万7000人以上の参加者が急成長中のメタバース・コンセプトを体験したテストネットの「進化版」と語った。
「私たちが目指すものは、複雑な状況をさらに細分化する単なる別のレイヤー1やレイヤー2になることではなく、コンテンツクリエイターのコミュニティに、高品質のコンテンツを開発するための最も簡単な道を提供することだ」
メタバースのハブを作る
最新のアップデートは、オンボーディング・プロセスを効率化し、煩雑な言語やプロセスを取り除くことで、Lamina1のユーザーエクスペリエンス(UX)を向上させることに重点を置いている。
このプラットフォームは現在、ユーザーが秘密鍵を保持することなく新しいブロックチェーン・ウォレットを作成できるような、よりシンプルな認証プロセスを特徴としており、ハブはユーザーのプロフィール、取引履歴のダッシュボードとして、またLamina1上に構築された新しい体験を発見するためのツールとして機能する。
音楽や3Dオブジェクトのようなデジタルアイテムの送受信やアップロードもまもなく可能になり、ユーザーはそれらのアイテムを使用して、より安定してリアルな環境でオンチェーン体験を構築できるようになる。今後6カ月の間に、L1ネームサービス、連絡先の保存と管理機能、特化したサブネット、デジタルアイテムの分散型ストレージ、デジタル・アイデンティティのカスタマイズなどの新機能を展開するとバーキン氏は述べた。
同社はまた、委任型のデリゲート・プルーフ・オブ・ステーク・コンセンサスメカニズムや、新しいノードがサブネットを検証する前にカーボン・クレジットを購入し、償却することを義務付けるプロセスを構築することによって、インフラがカーボンネガティブになることを確実にするための措置を講じている。
「パートナーに適したアーキテクチャを評価していたとき、アバランチ(Avalanche)が開発したものが気に入ったため、そこから始めた」とバーキン氏は説明する。
目指すところ
「最終的には、運用コストとガス代(取引手数料)の安定性と予測可能性を維持し、セキュリティ上の脆弱性が少なく、よりエクスペリエンス重視のインターフェイスを持ち、相互運用性とアイデンティティと価値の流動的な移動のメリットがエコシステムに組み込まれていることを約束する基盤を提供したいと考えている」
さらに、2022年6月にリード・ホフマン(Reid Hoffman)氏、ロニー・アボヴィッツ(Rony Abovitz)氏、マシュー・ロザック(Matthew Roszak)氏といったIT業界の大物から初期資金を調達して設立された同社は、相互運用性とデータ所有権というコアバリューにコミットしている。
バーキン氏は、人々はオンライン空間を移動する際に「プライバシーと成功」を手に入れるべきであり、アイデンティティ、個人データ、資産を管理し、創作物に対して公正な報酬を得るべきであり、「地球や社会の構造、他人の生活を破壊しない」方法で互いに交流できるべきだと述べた。
Lamina1のメインネット立ち上げの時期は未定だが、バーキン氏は「そう遠くはない」とし、来年初頭までに広く一般に利用できるプロダクトを発表することを目指していると述べ、次のように続けた。
「立ち上げ前に最低限、使いやすさ、安定性、アイデンティティ、ゲームエンジンとの統合、そしていくつかの主要な開発ツールを確実に提供できるようにしたいと考えている。私たちは、強制力のあるロイヤリティの問題を解決しようと尽力している。(知的財産権の)保護、透明性、より良い経済性は、質の高いクリエイターを引き込むための約束であり、私たちはそれに取り組まなければならない」
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Lamina1
|原文:Neal Stephenson’s Metaverse Vision Is One Step Closer as Lamina1 Blockchain Launches Betanet