オーストラリア中銀、「CBDCの導入は数年間見送る」と発表
  • オーストラリアでは、1年にわたる調査プロジェクトの結果、いくつかの未解決の問題が見つかったため、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入は数年間見送られることになった。
  • オーストラリア準備銀行(RBA)とデジタル金融共同研究センター(DFCRC)は、決済システムに関するユースケース調査を実施した。

オーストラリアは中央銀行デジタル通貨(CBDC)について、パイロットプロジェクトの終了時に表面化したいくつかの未解決の問題のため、数年間は決定を保留すると同国の中央銀行が8月23日に発表した

報告書は「まだ解決されていない多くの問題を考慮すると、オーストラリアにおけるCBDCの決定は数年先になりそうだ」とし、プロジェクトではCBDC導入のコスト、メリット、リスク、その他の影響を完全に評価するものではないとした。「その代わりに、CBDCが決済システムの機能を強化するために産業界によってどのように利用されうるかを探ることに焦点を絞った」。

オーストラリア準備銀行(RBA)とデジタル金融共同研究センター(DFCRC)は昨年、この研究プロジェクトを開始した。DFCRCは、産業界のパートナー、大学、オーストラリア政府が1億8000万豪ドル(約169億2000万円、1豪ドル=94円換算)を出資するのプログラムで、資産のデジタル化とCBDCのユースケースから生じる機会を研究するために設立された。

報告書は、ある意味で「CBDCは、民間部門のイノベーションを代替するのではなく、それを補完するものとみなすことができる」と述べている。

調査結果によると、オーストラリアのCBDCはオフラインの電子決済をサポートし、「よりスマートな」決済や、より経済的でリスクの少ない複雑な取引を可能にすることができる。その他の調査結果では、分散型台帳技術(DLT)プラットフォームにおける資産のトークン化にはいくつかの利点があることが示された。報告書はまた、CBDCによって完全に裏付けされた民間発行のステーブルコインの可能性があるとしている。

しかし、法的、規制的、技術的、運用上のさまざまな問題があるため、さらなる研究が必要であるとしている。

試験的なCBDCプラットフォーム上でアクションを実行するためには暗号鍵が必要だが、鍵管理のための手頃な価格で十分に安全なソリューションを見つけることは、他のDLTネットワーク上で運用する能力を持たない企業にとっては課題であると報告書は述べている。

この調査では、CBDCプラットフォームと業界のユースケースアプリケーションを統合することが困難であり、これは潜在的な展開モデルに影響を与えることもわかったという。

世界中の法律家や個人はCBDCの潜在的な監視の側面を懸念しており、オーストラリアでもプライバシーの問題は未解決のままであった。

「プライバシーとデータ共有に関するさまざまなニーズを効果的にサポートするために必要な設計上の決定は困難であり、これらの要件を単一のCBDCプラットフォーム上に実装するための技術もまた複雑であり、さらなる研究が必要だ」と報告書は述べている。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Australia’s CBDC Likely Some Years Away, Central Bank Says