盛り上がるブロックチェーン予測市場、米共和党の有力大統領候補にラマスワミ氏──トランプ前大統領は討論会を欠席

8月23日夜に行われた2024年米共和党大統領候補指名をめぐる最初の討論会では、候補者たちが辛辣な言葉を交わし、明らかなトップランナーであり、最近FOXニュースの司会者を解任されたタッカー・カールソンとのインタビューを優先して討論会を欠席したドナルド・トランプ前大統領からスポットライトを奪おうとした。

候補者の当選確率を評価するには、世論調査や識者に頼るのが一般的。しかし、識者は政治レースを判断する指標としては厄介であり、世論調査はリアルタイムで予測するには時間がかかり過ぎる。そこで登場するのがブロックチェーン予測市場だ。

共和党候補指名の結果を予測

ポリマーケット(Polymarket)やマニフォールド(Manifold)のようなブロックチェーンベースのベッティング(賭け)プラットフォームは、アメリカでの法的な地位は危ういが、ほとんど何にでも賭けられることを売り文句にしている。選挙での勝算を測るための予測市場の正確さには議論の余地があるが、このツールはそれでも、世論の興味深い指標となる。

一言で言えば、ブロックチェーンで賭けをする人たちは先日の討論会の結果、賭けを大きく変えることはなかったようだ。ブロックチェーン・ベッティング・プラットフォームは、そのパフォーマンスが称賛されたビットコイン・フレンドリーな起業家、ヴィヴェック・ラマスワミ(Vivek Ramaswamy)氏が、この1週間でフロリダ州知事のロン・デサンティス氏(Ron DeSantis)氏を抜き、トランプ氏に挑戦する明確な最有力候補となったことを示している。

ブロックチェーンを利用した最大の予測市場ポリマーケットのユーザーは、共和党の指名争い結果の予想に、これまでに500万ドル(約7億2500万円、1ドル145円換算)近くを投じている。ポリマーケットはアメリカでは、賭けに使うことは違法であるにもかかわらず。

2022年、米商品先物取引委員会(CFTC)はポリマーケットを違法なバイナリー・スワップを助長したとして起訴した。CFTCとの和解の一環として、ポリマーケットは140万ドルの罰金を支払い、プラットフォームのアメリカ在住ユーザーを強制的に「閲覧のみ」モードに設定することに同意した。

ポリマーケットでの共和党大統領候補をめぐる賭けは、討論会以降、比較的落ち着いているが、2024年の大統領選に関連する資金がすでにこのプラットフォームに殺到していることを考えると、選挙戦が進むにつれて、賭けの動きは大きくなるかもしれない(そしてボラティリティも)。

現状では、ポリマーケットでの明確な最有力候補は、ほとんどの世論調査と一致して、ドナルド・トランプ前大統領だ。

2位争いで有力候補浮上

ベッティング市場では、ある結果に賛成票を投じるコストが高ければ高いほど、その結果の可能性が高くなると考えられている。ポリマーケットでは現在、トランプ氏の2度目の指名に賭けるには71セント、反対に賭けるには32セントかかる。実際的な言い方をするならば、トランプ氏が指名を勝ち取れば、指名に賭けた人は71セントの賭けに対して、1ドルを手にすることができる。負ければ、すべて失う。

フロリダ州知事のロン・デサンティス氏は、討論会で得るものが最も大きく、失うものも最も大きい候補だった。かつては2度目のトランプ政権誕生を阻む共和党内最大の脅威と目されていたが、一連の選挙戦の混乱と資金難を受け、ほとんどの世論調査で前大統領に大きく遅れをとった。ポリマーケットの数字を見る限り、デサンティス氏の討論会でのパフォーマンスは、すぐにはそれほど大きく票を動かしたようには見えない。

ポリマーケットでの過去1週間のデサンティス氏支持に賭けるコストは、14セントから12セントに低下している。

一方、起業家であり、右派の新人であるラマスワミ氏は、より有名な政治家たちが集まる中で、自身を際立たせることに成功したとして、討論会の後に識者たちからおおむね称賛された。ポリマーケットのユーザーたちは、平均的な予測市場と同じように、共和党の指名争いでラマスワミ氏をデサンティス氏より優位に置いている。

過去1週間、ラマスワミ氏支持に賭けるコストは13セントから16セントに上昇している。

ポリマーケットのようなプラットフォームでは、ビットコイン支持の立場から、ラワスワミ氏に対して好意的なセンチメントが見られることは想定内だが、2位争いのレースにおける同氏の明らかなリードは、世論調査や伝統的なベッティング市場にも反映されている。

盛り上がるブロックチェーン予測市場

ここ数カ月、暗号資産(仮想通貨)が大きく低迷する中、予測市場はブロックチェーンの主力として台頭している。規制上の問題にもかかわらず、業界外への魅力を維持している数少ない暗号資産のユースケースのひとつだ。

2020年、非ブロックチェーン予測市場で賭けた人たちは、その年の米大統領選の結果を予測するために2億ドル以上を賭けたと言われている。

一方、ポリマーケットで賭けた人たちが、2020年のトランプ氏とバイデン氏の対決に投じた金額は1000万ドルと比較的控えめだった。決着がつくのがはるか先の、あまり激戦ではなさそうな共和党の指名争いですでに500万ドルが賭けられているという事実は、今回の選挙戦で、ブロックチェーンベースのベッティング・プラットフォームの記録が塗り替えられるかもしれないことを示している。

ブロックチェーン・ベッティングが最近急増しているのは、共和党の指名争いだけではない。

韓国の科学者が先月、発表前の研究論文で初の常温超伝導体を発見したと主張したとき、つまり、今世代で最大の科学的飛躍のひとつとなるブレークスルーがあったとされたとき、インターネットの一角で人々は、ポリマーケットとマニフォールドで事実と虚構を見分けることに躍起になった。

その多くが最先端の材料科学に関しては無知であるはずの、これらプラットフォームのユーザーたちの意見の正確性がどれほどであるにしても、「群衆の知恵」は、興奮した非専門家が研究の信憑性を判断する最も簡単な方法のひとつであることが証明された。

ポリマーケットでは270万ドルが賭けられ、マニフォールドでは5600人が賭けに参加し、ユーザーたちは一時、発見が真実である確率を50/50程度と見ていた。つまり短期的に、どちらに賭けるにも同じくらいのコストがかかっていた。

しかし、再現の失敗や科学者たちからの批判を受け、最近の数字では、リニアモーターカーや超高効率量子コンピュータ実現の可能性は近い将来に可能という域を外れている。ポリマーケットでは現在、2025年までに超伝導体研究の再現に成功した場合に1ドルを受け取るのに5セントしかかからない。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:米フロリダ州で開催された「Bitcoin 2023」で記者会見する共和党大統領候補ヴィベック・ラマスワミ氏(Frederick Munawa)
|原文:After GOP Debate, Blockchain Bettors See Ramaswamy as Most Formidable Trump Challenger