- ビットコインに関連するアウト・オブ・ザ・マネーのコール・オプションとプット・オプションが相対的に豊富であることは、トレーダーがビットコイン市場の「テール・リスク(想定外のリスク)」を織り込んでいることを示唆している。
- テールリスクは、投資が平均から3標準偏差以上動く可能性が高いことを示唆するものだ。
稀な出来事を背景に、資産が現在の価格から3標準偏差以上動くリスク。これを暗号資産(仮想通貨)市場ではテールリスクと呼んでいる。
トレーダーは、ビットコイン(BTC)が8月14日から20日の週に10%以上下落して以来、2万6000ドル前後で動きがないにもかかわらず、そのようなイベントを恐れている。アンバーデータ(Amberdata)によると、BTCの年率換算した7日間のヒストリカルボラティリティまたは実現ボラティリティは、先週初めの60%近くから26%に低下している。
「ビットコインのバタフライ指数は年初来最高を更新した。これは投資家とマーケットメーカーがテールリスクを織り込んでいることを示している」と暗号資産運用会社Blofinのボラティリティトレーダーであるグリフィン・アーダーン(Griffin Ardern)氏は述べている。
バタフライ指数は、暗号資産取引所デリビット(Deribit)のビットコイン・ボラティリティ・インデックス(DVOL)とアット・ザ・マネー(ATM)のボラティリティを比較することで、アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)の高い権利行使価格のコール・オプションと低い権利行使価格のプット・オプションの相対的な豊富さを測定するものだ。
指数の上昇は、OTMオプション(ウイング)またはBTCの現在価格より高い権利行使価格のコール・オプションと、BTCの市場レートより低い権利行使価格のプット・オプションに対する需要が相対的に強いことを示す。言い換えれば、トレーダーがテールリスクを恐れているか、不確実性に敏感であることを意味する。
コールはデリバティブ契約であり、購入者に後日、原資産をあらかじめ設定された価格で購入する権利を与える。プット・オプションは売る権利だ。コールの買い手は暗黙のうちに市場に強気であり、プットの買い手は弱気ということになる。OTMコールとプットの需要は、トレーダーが平均以上の値動きを予想するときに高まる。
「BTCのバタフライ指数を見ると、ウイングが上位90%パーセンタイル付近(赤い水平線)にあることがわかる。つまり、ボラティリティ(の指標)はスポット価格の統合に自信を持っているように見えるが、トレーダーはまだテールの代金を払っている」とアンバーデータのデリバティブ部門ディレクター、グレッグ・マガディーニ(Greg Magadini)氏は週次のニュースレターで述べた。
この指数は、暗号資産取引所デリビットのビットコイン・ボラティリティ・インデックス(DVOL)とアット・ザ・マネー(ATM)のボラティリティの比率またはスプレッドで表される。デリビットのDVOLはすべてのオプションの価格設定を考慮し、ATMツールはアット・ザ・マネーのオプションの価格設定に基づいている。
テールリスクの価格設定は、長引くマクロ経済の不確実性と一致している。
8月25日、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル(Jerome Powell)議長は、中央銀行が2%のインフレ目標を達成し、それを維持することに引き続きコミットしていることを再確認する一方、金融引き締め政策は予想よりも長く続くことを示唆した。
FRBが引き締めを継続しているため、債券利回りは2007年以来の高水準に上昇した。利回りの上昇は、暗号資産を含むリスク資産を圧迫する傾向がある。
マガディーニ氏は「パウエル議長の発言は『インフレ率を2%に戻すには、トレンドを下回る成長が必要になる可能性が高い』ということだ。これは、パウエル氏が経済と雇用市場に多少の痛みを伴うことを恐れていないことを意味している」と指摘した。
アーダーン氏は、今週金曜日のアメリカの非農業部門雇用者数の発表を控え、テールリスクは高止まりするだろうと述べた。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、このデータは6月の20.9万人増に続き、先月も20万人増を記録し、その結果、失業率は3.6%で横ばいと予想されている。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Amberdata
|原文:Bitcoin Traders Remain Fearful of ‘Tail Risk’ Amid Renewed Price Lull: Observers