- グレイスケールがSECに勝訴したことでGBTCの取引高が急増し、2022年6月以来で最高となった。
- デジタル・アセット・リサーチのCEOは、ディスカウント率の縮小に期待していた一部のトレーダーは利益確定したが、ETFへの転換があればさらなる上昇余地があると指摘した。
- GBTCは、昨年の暗号資産崩壊の要因となった。
価格は18%急騰
アメリカの控訴裁判所は29日、米証券取引委員会(SEC)に対して、グレイスケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)のETF(上場投資信託)への転換を求めるグレイスケール・インベストメンツ(Grayscale Investments)の申請を却下したことを見直すよう命じる判決を下した。GBTCがより広範な投資家の関心を引くことができるETFに転換される可能性が高まったことで、GBTCは過去14カ月で最も取引が活発になった。
Yahooのデータによると、GBTCは1日に2000万口近くが売買され、2022年6月に起きた暗号資産(仮想通貨)市場の暴落以来で最多となった。価格は18%急騰して21ドル(約3000円、1ドル145円換算)近くとなり、ビットコイン(BTC)が7月中旬に3万1000ドル(約449万5000円)に達して以来の高値となった。
ディスカウント率は17%に
グレイスケールは今年初めにSECの決定に対して控訴し、法的対立を開始した。ETF転換によって償還が可能となれば、流通市場で取引されるGBTCの価格と、GBTCが保有するビットコインの一口当たりの純価値との差が縮まることになる。
このニュースを受けてビットコインは7%上昇し、2万8000ドル(約406万円)に達した。一方、GBTCのディスカウント率は17%まで縮小した。
昨年の暗号資産の崩壊の要因
GBTCのディスカウントは、昨年の暗号資産市場の暴落において重要な役割を果たした。暗号資産市場が上昇していたそれまでの数年間には、GBTCは純資産価値に対して大幅なプレミアムで取引されていた。注目すべきは、暗号資産ヘッジファンドのスリー・アローズ・キャピタル(Three Arrows Capital)がプレミアムで利益を得るために巨額のポジションを保有した後、2022年に暗号資産価格の急落によりGBTCがディスカウントに転じた際に大きな損失を被ったことだ。ブロックチェーン分析会社CryptoQuantのデータによると、暗号資産取引所FTXの破綻を受けてディスカウント率は最大45%まで拡大した。
さらなる上昇余地も
しかし、暗号資産データ会社デジタル・アセット・リサーチ(Digital Asset Research)のダグ・シュウェンク(Doug Schwenk)CEOによると、一部の投資家は裁判で有利な判決が出た場合のディスカウント縮小を期待し、過去3~6カ月にわたりGBTCを購入してきたという。
現在、ディスカウント率が縮小しているため、一部の投資家は利益確定を行っている。
シュウェンクCEOは「一部の市場参加者がニュースを受けてGBTCのポジションを決済しているのが見られる」とした上で、「もちろん、おそらくは転換が承認された場合にプレミアムの崩壊が続くことを期待してこうしたポジションを取っている買い手もいる」と指摘した。
またシュウェンクCEOは、ディスカウントが解消された場合、この取引はビットコイン価格の上昇に加えて依然として25%近いリターンをもたらす可能性があり、「裁定取引者にとって非常に魅力的なはずだ」と述べた。
|翻訳・編集:林理南
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|原文:Grayscale’s Victory Ignites a GBTC Trading Frenzy as Investors Bet on Narrowing Discount to Bitcoin Price