- 世界で最もボラティリティの高い通貨のひとつを裏付けとするステーブルコインが、非米ドルペッグのステーブルコインの代表格になった。
- トルコリラを裏付けとするTRYBは、わずか3週間で4倍となり、時価総額ではテザーのユーロペッグのEURtに次ぐ2位となっている。
ステーブルコインの世界は、テザー(USDT)やUSDコイン(USDC)のような米ドルに裏打ちされたトークンで占められているが、他の通貨にペッグされた市場もある。現在、世界で最も不安定な法定通貨の1つであるトルコリラ(TRY)に裏打ちされたトークンが、世界をリードする非米ドルペッグのステーブルコインの1つとなっている。
トルコを拠点とするフィンテック企業BiLiraが提供するイーサリアムベースのステーブルコインTRYBは、トルコリラにペッグされており、ユーザーは1TRYで1TRYBを発行・換金できる。公式ウェブサイトによると、このステーブルコインはトルコの銀行に保有されている準備金によって100%裏付けされている。
Coingeckoのデータによると、TRYBの時価総額は3週間で325%急増し、1億3610万ドル(約197億3450万円、1ドル=145円換算)に達した。テザー(Tether)のユーロペッグのステーブルコインEURtの時価総額2億2400万ドル(約324億8000万円)に次ぐ、世界第2位の非米ドルペッグのステーブルコインということになる。テザーはまた、世界最大のステーブルコインであるドルペッグのUSDTを発行しており、その時価総額は約830億ドル(約12兆350億円)だ。
「トルコリラの価格は非常に不安定で、米ドルに対して価値を失っているため、TRYBはほとんどの場合、通貨交換の媒体となっている。我々の顧客は、トルコリラを暗号資産(仮想通貨)に交換するゲートウェイとしてTRYBを使用しており、その逆も同様だ」とBiLiraは米CoinDeskに電子メールで語った。
この利用パターンは世界的な傾向と一致している。ステーブルコインは暗号資産取引ペアの基本となる通貨として広く使われており、トレーダーは法定通貨のボラティリティを回避しながら安定した資産にアクセスできる。
アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は2022年12月、「ステーブルコインは暗号資産取引所での取引を促進し、多くの暗号資産ローンの原資産として機能し、市場参加者が暗号資産取引のために法定通貨を通すことで生じる非効率性を回避できるようにする。この暗号資産は本質的に、これらの取引における支払い手段と価値の保存の両方の役割を果たす」と述べた。中央集権型取引所の取引高の80%以上にステーブルコインが関係しているという。
しかし、TRYBがトルコで人気を集めているように見えても、USDTは依然として優勢を保っている。先週のある1日のトルコ最大の暗号資産取引所であるBtcTurkに上場されているUSDT/TRYペアの取引高は1230万ドル(約17億8350億円)で、取引所における総活動の18%を占めている。一方、MECX、Pangolin、Icrypexに上場しているTRYB/TRY取引ペアの総取引高はわずか6万1700ドル(約894万6500円)だった。
時価総額のボラティリティが高い
TRYBの不安定な時価総額は暗号資産コミュニティの注目を集めた。
ChainArgosはX(旧Twitter)で 「TRYBの大量のミントとバーンのタイミングは少し不気味だ。1. FTXが崩壊する直前にすべてバーンされた。2. シグネチャー銀行(Signature Bank)が破綻した直後に大量にミントされた。3. バイナンス(Binance)がTUSDに切り替えた時にバーンされ、プライム・トラスト(Prime Trust)は倒産した」 と述べている。
2/ The timing of the large mints and burns of $TRYB is a little bit uncanny. Basically Turkish BiLira:
— ChainArgos (@chainargos) August 31, 2023
1. All burned off right before FTX collapsed
2. Massively re-minted right after Signature Bank collapsed
3. Burned off when Binance switched to $TUSD, Prime Trust went bankrupt pic.twitter.com/rWIw1adQ3J
米CoinDeskへの電子メールでBiLiraは、他のステーブルコインプロジェクトとは異なり、持続不可能なガス料金を避けるためにトークンを一括でミントし、換金していると説明した。
同社は平均2日分の供給を事前にミントし、プレミントウォレットに保管する。事前にミントされる量は、1日の発行量に依存する。ユーザーはBiLiraが管理する独自のデポジットでコインを受け取る。換金されると、トークンはリダンプションスイープウォレットに送られ、その後、バーンウォレットに送られる。
BiLiraは「新興国ステーブルコインとして、発行と償還のたびにミントとバーンを行うことは、運用上のセキュリティ基準と高いガス代により、我々のオペレーションを持続不可能にする」と述べている。
BiLiraは、他のステーブルコイン・プロバイダーと協力して、ミントとバーンの機能とその頻度を改善していると述べた。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Coingecko
|原文:Lira-Backed TRYB Token Becomes World’s Second-Largest Non-Dollar-Pegged Stablecoin