テザー(USDT)やUSDコイン(USDC)のようなステーブルコインのマーケットは、世界中の人々がステーブルコインを通じて米ドルにアクセスするようになるにつれて、今後数年間で数兆ドルの時価総額と数百兆ドルの取引高に成長すると予想される。オルタナティブ資産運用会社ブレバン・ハワード・デジタル(Brevan Howard Digital)がレポートで述べた。
ステーブルコインは「世界中のアンバンク/アンダーバンク状態にある人々に金融サービスを提供し、高インフレ通貨からの逃避手段となり、これらの新しいグローバル・オープンネットワークをベースとしたお金の移動手段上に構築されたイノベーションの爆発に火をつけるだろう」と、ベンチャー投資の共同責任者ピーター・ジョンソン(Peter Johnson)氏とアナリストのサイ・ニマガッダ(Sai Nimmagadda)氏は記している。
同社は、決済大手ペイパル(Paypal)が最近、独自のステーブルコイン「ペイパルUSD(PYUSD)」を発表したことに触れ、この動きは「ステーブルコインのチャンスを強調するものであり」、さらに「世界の金融サービスを一変」させる可能性があると指摘した。
「2022年、ステーブルコインはオンチェーンで11兆ドル(約1600兆円、1ドル145円換算)以上を決済し、ペイパル(1.4兆ドル)を大幅に上回り、ビザ(11兆6000億ドル)とほぼ並び、ACH(Automated Clearing House)の決済高の14%、Fedwireの決済高の1%以上に達した」
ACHは、アメリカで主流の銀行間電子送金の一種。Fedwireは米連邦準備銀行が運営する決済システム。
「わずか数年で、世界最大かつ最も重要な決済システムのいくつかに匹敵し得るステーブルコインは注目に値する」
ブレバン・ハワード・デジタルは、2500万以上のブロックチェーン・アドレスが1ドル以上のステーブルコインを保有していると述べた。伝統的金融で見れば、2500万口座を持つ米国の銀行は、口座数で世界5位となる。また、小額のステーブルコイン保有が多いことは「伝統的金融機関が十分にサービスを提供していない顧客に、グローバル金融サービスを提供するステーブルコインの可能性」を示している。
「ステーブルコインの使用は、暗号資産取引所の取引高との相関関係が低い」ことから、かなりのステーブルコインが非投機的な目的で使用されている可能性が高いことを示しているとレポートは述べた。
レポートの注釈によると、ステーブルコインは最近の暗号資産市場の低迷の中でも回復力を示しており、暗号資産市場の時価総額が57%減少した一方で、ステーブルコインの時価総額はピークから約24%しか減少していないという。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Pixabay
|原文:Stablecoins Can Provide an Escape From High-Inflation Currencies: Brevan Howard Digital