暗号資産のカストディ(管理・保管)サービスなどを手がけるファイアブロックス(Fireblocks)は、フィンテックや企業顧客に非カストディ型のウォレットサービスを提供している。これにより、デジタル銀行のRevolutやNubankといった企業を利用するエンドユーザーは、自分の資産を完全に管理できるようになる。これは、昨年さまざまな暗号資産企業が破綻したことを受け、市場の要件のようなものになっている。
企業をカストディアンの役割から解放
Fireblocksのマイケル・シャロフ(Michael Shaulov)CEOによると、この動きにより、フィンテック企業は本質的にカストディアンとしての役割から解放され、エンドユーザーは分散型金融(DeFi)やほかのWeb3アプリケーションなどの変わった暗号資産サービスに簡単にアクセスできるようになるという。
暗号資産レンディングのセルシウス・ネットワーク(Celsius Network)やブロックファイ(BlockFi)、暗号資産取引所FXTなどの暗号資産企業の破綻が注目を集めたことを受けて、サードパーティのカストディアンがユーザーの暗号鍵を保持できることに対する不信感が一般的になったことによって市場は変化した。
シャウロフCEOはCoinDeskとのインタビューで、Fireblocksのマルチパーティコンピューテーション(MPC)技術は非カストディ環境でもうまく機能し、企業をカウンターパーティのリスクから遠ざけつつ、同時に事故の際にはウォレットを復旧できるようにすると述べた。
シャロフCEOは、「この非カストディのリリースにより、フィンテックやWeb3企業、法人は、ユーザーが共有鍵の1つを(WebブラウザやiOS・Androidを使用したモバイルアプリで)持ち、もう1つの共有鍵をFireblocksまたはサービスプロバイダーが持つウォレットを作成することができる」と説明。「基本的に、もう1つの共有鍵はセキュリティを担当し、たとえばクライアントが携帯電話を紛失した場合にウォレット全体を復旧する機能を担っている」と述べた。
規制外のサービスへのアクセスも可能に
シャロフCEOは、カストディ責任を大企業からエンドユーザーに移すことで、DeFiやWeb3、NFT関連のサービスへの扉がさらに開かれるという利点もあると指摘。「顧客が鍵を管理する完全な非カストディ型の設定により、現在明確に定義された規制範囲の外にあるDeFiなどのWeb3サービスへのアクセスが可能になる」とし、「認可を受けた大手機関や大企業にとって以前は難しかったことも、企業に規制やカストディの制限がすべてなくなれば、ウォレットのエクスペリエンスに基づいて構築できるようになる」と述べた。
Fireblocksは現在、BNY Mellon、BNP Paribas、Flipkart、eToro、Revolut、NuBank、Wisdom Treeなどの大企業のウォレット1億3000万個以上の安全確保を行っている。
|翻訳・編集:林理南
|画像:Fireblocks
|原文:Crypto Safekeeping Specialist Fireblocks Introduces Non-Custodial Wallet Service