破綻した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXが、保有する34億ドル(約4930億円、1ドル145円換算)の暗号資産の一部を売却するのではないかとの懸念から、暗号資産市場は11日に急落した。しかし、アナリストらはこうした懸念はおそらく行き過ぎだと指摘している。
FalconXのリサーチ責任者、デビッド・ラワント(David Lawant)氏は、「実際の売り圧力は当初の予想よりはるかに小さい可能性がある」と述べた。
ビットコインは6月以来の安値
FTXが11億6000万ドル(約1682億円)のソラナ(SOL)と5億6000万ドル(約812億円)のビットコイン(BTC)を含む暗号資産の隠し資産の売却を開始するのではないかと懸念され、11日の暗号資産市場は急落した。ビットコインは2万5000ドル(約362万5000円)を割り、6月以来の安値を付けた。一方、ソラナは最大8%下落した。
FTXは、13日に予定されている次回の破綻をめぐる裁判所公聴会で資産売却の承認を得る可能性がある。
ラワント氏は、FTXの暗号資産の隠し資産の一部は資産売却を防ぐロックアップを伴うベンチャー投資である点や、市場への影響を和らげるために資産売却にも制限がかかる可能性がある点を指摘。「FTXの売却の可能性に対する反応が過大評価されていた可能性が高く、市場はここから落ち着く」との見方を示した。
暗号資産運用会社アルカ(Arca)の最高投資責任者であるジェフ・ドーマン(Jeff Dorman)氏は、市場参加者は当初、売却による潜在的な影響に過剰反応したとし、「暗号資産マーケットメーカーやトレーダーがFTXによる供給の先取りをしている様子は、シンジケートによる売却プロセスがどのように機能するかについて完全に誤解していることを示している」と指摘。「自分の身を自分で守らなければならない状態でのベンチャーキャピタルのロック解除ではない。これは裁判所命令のプロセスであり、(FTXと提携するとされる)ギャラクシー(Galaxy)社は非常にゆっくりと機会を狙って売却することになる」と述べた。
市場は最初の恐怖から回復し、ビットコインは11日の急落前の水準に近い2万6000ドルに反発した。
さらなる売り圧力が迫る
FTXによる暗号資産売却の市場への影響は予想よりも弱いかもしれないが、価格の下押し圧力を高める可能性のある他のイベントが迫っている。
暗号資産市場分析会社K33 Researchのシニアアナリストであるヴェトル・ルンデ(Vetle Lunde)氏はレポートで、「市場はマウントゴックス(Mt. Gox)の管財人やアメリカのシルクロード(Silk Road)のビットコインからのさらなる売り圧力も予想している」と述べた。
アメリカ当局は、ダークウェブ「シルクロード」に関連して昨年11月に押収した5万BTCを段階的に売却している。数年前に約85万BTCが盗まれたものの、まだ一部しか回収されていないマウントゴックスでのハッキング事件の被害者は、今年後半に資産を取り戻すことができるかもしれない。
ルンデ氏は、「こうした潜在的な売り手側の資金の流れのスケジュールや構造は不明だが、すべてがすでに圧力をかけられているセンチメントを打ち砕く決定的な力となっている」と指摘した。
暗号資産サービスプロバイダーのマトリックスポート(Matrixport)は、エイプコイン(APE)やアクシー・インフィニティ(AXS)でも、今後数週間のうちに大規模なロック解除が発生し、初期のベンチャーキャピタル投資家が売却できるようになると報告した。
|翻訳・編集:林理南
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|原文:Fear of FTX-Spurred Crypto Crash Is Overblown, Analysts Say