業界はSBF裁判を無視するべき

暗号資産(仮想通貨)は、今月は審判の月になることが約束されている。カーゴショーツに身を包んだ優秀なオタクから一転、暗号資産を騙し取った詐欺の容疑者となったサム・バンクマン-フリード(SBF)氏が、共謀罪と詐欺罪に問われて出廷するからだ。

法定闘争の報道に気を取られずに

メディアはこの法廷劇に多くのスポットライトを当てているため、合法的な暗号資産企業も、顧客やビジネス戦略に焦点を当てるよりも、欺瞞や悪質な行為に関する論争に加わりたくなる危険性がある。

バンクマン-フリード氏の裁判は、FTXの顧客や投資家が莫大な損失を被ったことから、世界最年少ビリオネアとしての彼自身の急速な躍進と凋落、そして麻薬に溺れたバハマでの酒宴やポリアモリーといったスキャンダラスな噂まで、メディアでの見せ物のような報道に拍車がかかっている。

さらに、少なくとも8つのハリウッドプロジェクト、関連書籍(マイケル・ルイス氏)、FTXに関するポッドキャストなどが、この瞬間を待ちわびていた。この熱狂は、最近話題になった複数の法廷闘争を超えるものになるだろう。

その一方で、あらゆる予想に反して、業界は警戒心を抱くワシントンD.C.で足場を固め始めていたが、今回の裁判は新たな逆風を招く危険性がある。裁判に気を取られて、バンクマン-フリード氏の行動によって、良識的な規制を前進させようとする業界の誠意ある活動に泥を塗るようなことがあってはならない。

暗号資産業界は驚くほど短期間のうちに、ワシントンD.C.の周縁部から最前線へと急速にシフトした。この業界は、数多くの業界団体、シンクタンク、政治活動委員会などを設立し、経験豊富なロビイストを多数集め、社内に政策チームを結成した。

こうした取り組みが政策立案者や規制当局の注目と関心を集め、ブロックチェーンテクノロジーの紛れもない将来性と推進者の情熱が浮き彫りになった。

この支援活動は、6月に4つの有望な規制法案が初めて議会の委員会で採決に成功するという、驚くべき「暗号資産の夏」に結実した。これは、規制の確実性の片鱗を明らかにする驚くべきマイルストーンではあるが、これらの法案のいずれかを法制化する道のりは依然として厳しい。

大切なターニングポイント

今はターニングポイントにある。業界はバンクマン-フリード裁判に焦点を逸らされるわけにはいかない。暗号資産コミュニティはこの瞬間の重大性を認識し、毅然と対応しなければならない。これは、開発者、プロトコル、投資家、スタートアップ、企業など、業界のすべてのプレーヤーに対する呼びかけだ。

業界にとって、不正行為者との関係を断ち、倫理的な行動と責任ある慣行への献身を示すことは極めて重要。暗号資産コミュニティは、まさにそれができる能力を証明してきた。

規制のハードルに対する迅速な反応、議員を教育するための積極的な取り組み、建設的な議論を進んで行う姿勢はすべて、業界の成熟度と可能性を反映している。しかし、バンクマン-フリード氏の騒動がストーリーを支配するようになってしまえば、暗号資産業界はこうした成果を台無しにしてしまう危険性がある。

裁判が始まり、世界中が注目するなか、業界はセンセーショナリズムを無視し、仕事に戻らなければならない。

2023年のワシントンD.C.での進展を表した時計の針は、またも逆戻りしてゼロに近づいており、暗号資産エコシステムのすべての関係者は、ワシントンD.C.での声を増幅するために奮闘しなければならない。暗号資産業界は、例外的な悪者たちを除けば、ブロックチェーンテクノロジーが確かなものであり、支持する価値があることを議会に示し続けなければならない。

目標は明確だ。イノベーションを促進し、消費者、開発者、イノベーターを保護し、同時にアメリカがWeb3革命のプレーヤーであり続けることを保証する規制環境を確立することだ。

そして、ワシントンD.C.の政策立案者たちへ。ニュースにとらわれずに深く掘り下げることを願う。アメリカの覇権は危機に瀕しており、あなた方はデジタルの未来を守る極めて重要な役割を担っている。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:サム・バンクマン-フリード氏(CoinDesk、加工済み)
|原文:Crypto Should Ghost the SBF Trial