- 待ち望まれているのビットコインスポット上場投資信託(ETF)の承認は部分的に織り込み済みだとコインベースのデビッド・ドゥオン氏は主張する。
- スポット型ETFの承認で予想される資金の殺到は、時間経過とともに起こるという。
金融市場では、未確認の好材料を背景に特定の資産が突出する一方で、マクロ経済の不利な展開によって市場全体は苦境に陥ることがよくある。
ここ数カ月の暗号資産(仮想通貨)市場では、まさにそれが起きている。コインベース・インスティチューショナル(Coinbase Institutional)によると、マクロ経済が不透明な中、ビットコイン(BTC)は他の暗号資産をアウトパフォームしているが、これはトレーダーがスポットベースの上場投資信託(ETF)が承認される可能性を評価しているためだという。
「ビットコインと他のトークンのパフォーマンスの乖離は、1つ以上のビットコインのスポットETPが承認される可能性がすでに部分的に織り込まれていることを示していると考える」とコインベース・インスティチューショナルの機関投資家リサーチ責任者であるデビッド・ドゥオン(David Duong)氏は、10月12日に購読者に送付された最新の月次レポートの中で述べた。「そのため、アメリカ証券取引委員会(SEC)で有利な決定が下された場合、ビットコインがどの程度アウトパフォームするかは明確でなくなっている」と述べた。
6月中旬にブラックロック(BlackRock)や他の伝統的な金融大手がスポットベースのビットコインETFを申請して以来、ビットコインは8%上昇した。同時に、時価総額第2位でその他の暗号資産のリーダーであるイーサリアム(ETH)は7.5%下落している。
マクロ資産であるビットコインは、6月中旬以降の米国債イールドカーブに望ましくない展開が発生したにもかかわらず、より広い暗号資産市場をアウトパフォームした。これはETFへの期待など他の要因が市場に影響していることを示している。
ビットコインは、10年物と3カ月物の利回りのスプレッド(3m10yスロープ)が6月中旬以降、-0.8%と0.7%近く上昇しているにもかかわらず上昇した。
「2023年第1四半期半ば以降、暗号資産の価格は米国債のイールドカーブの変化と逆相関を示してきた。しかし、その関係の強さはBTCとETHでは大きく異なる」とドゥオン氏は述べている。
ドゥオン氏によると、ビットコインと前述のイールドスプレッドの90日相関係数は0.45で「ビットコインと最近のイールドカーブとの直線的な関係は比較的弱い」という。一方、イーサリアムは相関係数0.76と強い逆相関を示している。
「この乖離は6月中旬、アメリカで複数のビットコイン上場商品ETPの届出が行われた頃に現れ始めた」とドゥオン氏は言う。
暗号資産市場は、メインストリームマネーへの門戸が開かれることを期待して、スポットベースのビットコインETFを何年も待ち望んできた。NYDIGによると、ビットコインのスポットETFは、世界最大の暗号資産に300億ドル(約4兆5000億円、1ドル=150円換算)の新たな需要をもたらす可能性があるという。
ビットコインの見通しは?
コインベースの分析によると、スポットETFが承認されると、ビットコインはしばらくの間、より広い暗号資産市場に対する優位性を失う可能性がある。我々は、2021年10月の先物ETFのローンチ後にそうしたことが起こるのを見てきた。
「SECが有利な決定を下した場合、ビットコインがどの程度アウトパフォームするのかは明確ではない。つまり、1つ以上の承認があった場合、意味のある純流入があり得ると考えているが、市場がせっかちになりがちな中、実現には時間がかかるかもしれない」とドゥオン氏は言う。
19年前にデビューし、現在500億ドル(約7兆5000億円)以上の資産を持つアメリカ初のスポット金ETFであるSPDRゴールド・シェアETFがそうだった。ビットコインの支持者は、この暗号資産をデジタル・ゴールドとみなしている。
ドゥオン氏によると、SPDRゴールド・シェアETFは発売から30日間にインフレ調整後でわずか19億ドル(約2850億円)の資金を集めただけだったが、最初の12カ月が終わる頃には48億ドル(約7200億円)にまで増えていた。
しかし、ドゥオン氏は、スポットETFが開始される可能性があることの影響は資金のフローにとどまらず、規制環境の「暗黙のシフト」を示唆するものであり、市場のバリュエーションにとって好材料になりうると主張した。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
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|原文:Bitcoin Spot ETFs Approval Partially Priced In, Coinbase Says