新規Xユーザーに1ドル課金するイーロン・マスク氏のプランでは、ボットによる詐欺を阻止できない

ソーシャルアプリX(旧Twitter)の新規ユーザーに1ドルを課金する計画は、暗号資産プロジェクトやユーザーの多くが利用する人気プラットフォームで蔓延するボットを抑止する効果はほとんどないかもしれない。

Xは10月18日、ニュージーランドとフィリピンで新規ユーザーに対する年間課金を開始した。同社は、新規ユーザーが投稿、返信、「いいね!」を含む重要な機能を使用する際に課金されるため、このテストは「スパム、プラットフォームの操作、ボットの活動を減らす」のに役立つだろうと述べた

しかし、これまでのユーザー課金の取り組みでは、プラットフォーム上の認証済みアカウントによるフィッシング詐欺を完全に防ぐことはできなかったようだ。月額8ドル(日本では1380円)のXのプレミアム・サービス(ユーザーには青いチェックマークが与えられる)は、暗号資産(仮想通貨)に特化したボット軍団や詐欺師によって広範囲に利用されているようだ。

認証済みアカウントによるフィッシング・メッセージの例。(X)

このようなフィッシングボットは、認証済みアカウントによる投稿によく見られる。米CoinDeskの複数の異なる投稿への返信を見ると、青いチェックマークのついた認証済みのボットが取引を画策していることがわかる。疑うことを知らないユーザーの注意を引くことが目的であり、そのリンクをクリックすると、数分後に財布の中身が抜き取られていることに気づく。

暗号資産セキュリティサービスに携わるマーケットオブザーバーは、この課金は一部のボットを思いとどまらせるのに役立つかもしれないが、他の対策の方がはるかにインパクトを与える可能性が高いと見ている。

「この新しいプログラムはよかれと思って開始されたものだが、既存の問題を解決するためには報告手段を強化する方がより効果的かもしれない」と暗号資産ウォレットSafePalのCEO、ベロニカ・ウォン(Veronica Wong)氏は説明する。「我々のユーザーを守るために、ボットや詐欺アカウントを報告する専門のチームメンバーがいるにもかかわらず、そのプロセスに時間がかかり、常に新しいXアカウントが出現しているため、終わりのない戦いになっている」。

「青や金のチェックマークが付いたボットアカウントは影響を受けないため、ユーザーはまだ脆弱である可能性があり、これを軽減するためには詐欺広告を拒否するための厳格な審査が重要になる」とウォン氏は付け加えた。

しかし、ウォン氏は、Xの企業向けプレミアム・サービスでは、アカウントに金のチェックマークが付与されるため、「ボットやなりすましが悪意のある攻撃を実行するのが著しく難しくなった」と指摘した。

一方、一部の暗号資産ファンドは、ブロックチェーンを利用することで、広範なボットの脅威を鎮めることができると述べている。

DFGの創設者兼CEOであるジェームス・ウォー(James Wo)氏は、「ボッティングの蔓延は、業界の評判に長い影を落とす手ごわい課題だ」と述べた。「このような詐欺の実行による不正な利益は、関連費用を大幅に上回る」。

「たった1ドルの年会費でこの問題を鎮めようとする試みは、断固としたグループの前では不十分なように見える。解決策として、Web2プラットフォームは、ボット問題に効果的に対処するために、本人確認と分散型識別子(DID)の実装を検討する必要がある」とウォー氏は付け加えた。

分散型識別子(DID)は、中央集権的な企業や組織に依存することなくユーザーを識別するものだ。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Elon Musk’s Plan to Charge New X Users $1 May Not Deter Crypto Bots