暗号資産やその関連市場の深刻な低迷期だった1月初旬に、グレイスケール・インベストメンツ(Grayscale Investments)のグレイスケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)を先行して購入した逆張り投資家らは、大きな利益を手にした。
今年220%急騰
トレーディングビュー(TradingView)によると、GBTCは今年220%急騰して1口26.79ドル(約4000円、1ドル150円換算)に達した。一方、S&P500の上昇幅は9%、その構成銘柄の中で最もパフォーマンスの高い半導体大手エヌビディア(Nvidia)の上昇幅は198%だった。国債などの従来の債券商品が暴落する中、ビットコイン(BTC)価格は今年に入ってから倍増し、3万5000ドル(約525万円)に上昇した。
GBTCのパフォーマンスが市場全体より高くなっている背景には、GBTCのオープンエンド型ETF(上場投資信託)への転換を米証券取引委員会(SEC)が承認することが期待されていることがある。
楽観的な見方によって、GBTCの純資産価値(NAV)に対するディスカウント率は今年46%から13%に縮小しており、トレーダーは現物・先物市場で同時にビットコインを売却することで下値リスクをヘッジしながらGBTCを購入している。ETF転換が承認されるとすぐに、マーケットメーカーによってGBTCの価格が純資産価値に戻されることになる。
マレックス・ソリューションズ(Marex Solutions)のデジタル資産担当共同責任者であるイラン・ソロット(Ilan Solot)氏は先週電子メールで、「GBTCは、与え続けるギフトだ。先物との取引でスプレッドの縮小を成功させた人々(このリストに載っている多くの人々)におめでとう」とコメントした。
上昇圧力を補強する可能性が高い
GBTCのディスカウント率縮小から利益を得ることを目的としたヘッジ取引が、今年初めのビットコインの上昇を抑えた可能性がある。
SECがETF転換を承認する見通しが高まる中、ディスカウント率は急速に縮小している。トレーダーがビットコイン先物のショートポジションなどの戦略を解消することで、暗号資産市場の強気の圧力が強まる可能性がある。
Two Prime Digital Assetsのマネージングパートナーであるアレクサンダー・S・ブルーム(Alexander S. Blume)氏はCoinDeskに対し、「GBTCのETF転換承認の可能性が高まっているため、投資家はマーケットメーカーが取引開始と同時に価格を純資産価値に戻すと見込まれることを知っている。この投資商品が投資家にとって純資産価値に正常化するにつれて、ビットコインのショート圧力は弱まり、ビットコイン現物価格への上昇圧力を補強する可能性が高いと思われる」と述べた。
売り圧力になる可能性も
世界最大の資産運用会社ブラックロック(BlackRock)の現物ビットコインETFのティッカーである「IBTC」がアメリカの金融市場で証券の中央管理を担うDTCC(Depository Trust & Clearing Corporation:米国証券保管振替機関)のウェブサイト掲載されたことなど、主に現物ETFをめぐる噂を背景に、ビットコインは2週間足らずで28%上昇。3万5000ドル(約525万円、1ドル150円換算)を超えて17カ月ぶりの高値を記録した。
SECは来年初めにいくつかの現物ETFを承認すると予想されている。ETF承認を受けてビットコインは5万ドル以上に急騰するという見方がコンセンサスだが、金融化は市場にさらなる売り圧力をもたらす可能性もある。
ブルーム氏は、「ETFにより、より多くの機関投資家がこの商品をショートできるようになる。それが市場にどのような影響を与えるかは不明だ」と指摘した。
|翻訳・編集:林理南
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|原文:Grayscale Bitcoin Trust Outshines Nvidia With 220% Gain This Year