バイナンスは今週、厳しい結果を迎えたが、実は明るい展望になるかもしれない。
米司法省の数カ月に及ぶ捜査の結果、共同創業者兼CEOのチャンポン・ジャオ氏は22日、連邦法違反を認め、バイナンスは40億ドル(約6000億円、1ドル150円換算)相当の和解金を支払うことになった。また暗号資産業界で最も影響力のある人物のひとりだったジャオ氏は退任となった。
バイナンスにとっては、かなり悪い結果のように思えるかもしれないが、これは再出発のチャンスであり、おそらく最善のシナリオになり得る。バイナンスは米当局が市場に壊滅的な打撃を与えるかもしれないという懸念に悩まされていた。
ローウェンスタイン・サンドラー(Lowenstein Sandler)法律事務所のパートナーのイーサン・シルバー(Ethan Silver)氏は「和解は事業継続のための唯一の選択肢だった」「おそらく、彼らはビジネスは清浄化され、きわめて大きなマネタイズを継続する絶好の機会を得て、今後、コンプライアンスに基づいて運営できると考えているだろう」と語った。
ここ数年、業界関係者はバイナンスが規制を守っていない、さまざまな不正を行っていると批判してきた。そうした噂をジャオ氏は、SNSに数字の「4」を投稿することで否定した。同氏は「4」という数字は「FUDを無視する」の意味だと述べた。FUDとは、Fear, Uncertainty and Doubt(恐怖、不確実性、疑念)の頭文字で、暗号資産業界ではネガティブな感情を広めることを意味する。
同社はまた、本社の所在地を常に変更しているように思えることに対しても日常的に批判されていた。
今回のような犯罪捜査は、FTXのケースのように致命的な結果をもたらす可能性があった。FTXの創業者で元CEOのサム・バンクマン-フリード氏は一生を刑務所で過ごすことになりそうだ。
またバイナンスに対する米司法省の刑事告発が取り付け騒ぎの引き金となりるという懸念もあった。
司法省との和解
つまり、バイナンスが司法省と和解したことは、ただちに取り付け騒ぎなどの苦境に陥る兆候はなく、ジャオ氏が長期の実刑判決を避けられるうえに、同取引所のビジネスにとってもポジティブな結果となる可能性がある。なお、バイナンスは連邦証券法違反の疑いで米証券取引委員会(SEC)の調査を受けている。
「楽観的な見方をすれば、多くの投資家を遠ざけていた、この業界に対する長年の重荷を取り除くことができたと見ることができる」とビットコインに特化した投資会社ニューヨーク・デジタル・インベストメント・グループ(NYDIG)のグレッグ・シポラロ(Greg Cipolaro)氏は記している。
経営陣の交代、つまりバイナンスの米国外の事業を以前担当していたリチャード・テン(Richard Teng)氏が新しいCEOとなることは、事態の好転につながるかもしれない。
ムーディーズ・インベスターズ・サービス(Moody’s Investors Service)のDeFi(分散型金融)&デジタルアセット戦略の責任者、ラジーヴ・バムラ(Rajeev Bamra)氏は、メールによる声明で、テン氏の広範な規制に関する広範な経歴と経験を称賛した。バンラ氏によると、テン氏の新CEO就任によって、バイナンスは規制上の懸念を乗り越え、「安定と再出発への道筋を描く」可能性があるという。
短期的には、バイナンスはコンプライアンスの結果として市場シェアを失う可能性が高いとDEX(分散型取引所)MarginXのコア・コントリビューターであるダニー・リム(Danny Lim)氏は述べた。だが長期的には、市場の優位性を取り戻す可能性がある。
BNBトークンの推移
バイナンスは今年、すでに大きな打撃を受けており、市場の反応さえも、今回の和解がトレーダーにはそれほど大きなものではないことを示している。
バイナンス、およびそのエコシステムを支える暗号資産ビルドアンドビルド(BNB)は、ここ数日の下落の後、横ばいで推移しているようで、現在は過去数カ月間のレベルとほぼ同じで、崩壊はしていない。BNBの時価総額は約360億ドル、4番目の規模を持つ暗号資産となっている。
直近では、ビットコイン先物の取引高でバイナンスはシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)に逆転されていた。だが逆転劇は、捜査による不安のためだったかもしれない。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN
|画像:チャンポン・ジャオ氏(CoinDesk)
|原文:Binance Settlements Could End Death-Spiral Fears – And Might Be Good News