オンチェーン取引高はブロックチェーンネットワークの脈拍に当たる。デジタル資産投資家にとって、ネットワーク内のこうしたフローを注視し、プロトコル間で比較することは、プロトコルの普及率と有用性を確認し、プロジェクトがさらに発展していくのか、それとも時代遅れの遺物なのかを判断する方法となる。
取引高と市場センチメント
取引高という視点は、ユーザーの活動、ネットワークの有用性、暗号資産(仮想通貨)エコシステム全体の健全性についての貴重な洞察を与えてくれる。
取引高の急増は多くの場合、ネットワークの利用、普及、取引活動の増加を意味する。これは関心の高まり、新しいプロトコルの有用性、あるいは投機的な熱狂を示している可能性がある。
逆に、オンチェーン取引高の減少は、開発の衰え、プロトコルの停滞、または競合への市場シェアの喪失を示すかもしれない。
ブロックチェーン取引高を牽引する要因はいくつかあり、これらのニュアンスを理解することは、常に進化し続ける暗号資産市場のサイクルを切り抜けることに役立つ。暗号資産市場が過剰なほどに強気の祭典のようになる局面では取引高が急増する傾向がある。規制の明確化、機関投資家による採用、プロトコルの大幅なアップグレードなど、ポジティブなニュースは取引の活発化に火をつける。
さらに、市場センチメントも重要な役割を果たす。強気なセンチメントはしばしば、トレーダーや投資家をDEX(分散型取引所)に向かわせ、オンチェーンでの取引を急増させる。
DEXでは、CEX(中央集権型取引所)で取引される主要トークンよりも、オンチェーンでの活動により大きな影響を与えるNFTや小規模なトークンのローンチなど、より新しいイノベーティブなプロダクトの取引に集中する傾向がある。これは、強気サイクルにおける取引高の増加に貢献する。
逆に、弱気サイクルでは取引高が減少し始め、デレバレッジの時期に取引高が急増する。不確実性、ネガティブなニュース、規制当局による取り締まり、市場の反発などが、しばしば取引の減少につながる。
投資家は様子見アプローチを採用し、それが取引高の減少につながるするだろう。さらに、資産をコールドストレージやステーブルコインに移し、取引所での全体的な取引活動を減少させることもある。
取引高データの有用性
オンチェーン取引高データの有用性をより深く掘り下げるため、プロトコル別のドル建てのオンチェーン取引高を提供するSonarVerseが提供するデータを使用して、ビットコイン、イーサリアム、ポリゴンの各プロトコル間の取引高を比較してみる。
これらのプロトコルの取引高を正規化するために、取引高をプロトコルの時価総額で割っている。
ビットコインの取引高は比較的少なく安定しており、イーサリアムとポリゴンの取引高にはピークと、それを比較的相殺するような取引活動がある。ポリゴンがイーサリアムベースのプロトコル用のEVMスケーリングソリューションであることを考えるとこれは理にかなっている。
データを活用する
このデータの投資メリットをさらに浮き彫りにするために、非常に単純なバックテストを実行した。ここでは、正規化されたポリゴンの取引活動がイーサリアムよりも大きい場合はポリゴンにローテーションし、そうでない場合はイーサリアムのネイティブトークンを保有するという単純なルールで最近の正規化されたオンチェーン取引高に基づいてイーサリアムとポリゴンをローテーションする。
このローテーション戦略は、イーサリアムのトークンとポリゴンのトークンに個別に配分した場合と比較して、暗号資産市場のサイクルにおいて絶対リターンとリスク調整後リターンを向上させる。
このアウトパフォーマンスは、オンチェーン取引高の指標に含まれる情報による可能性があり、その情報が戦略を最近の活動が活発な、それに関連してブロックチェーンプロトコルの需要がより大きなプロトコルへと向かわせる。
オンチェーンアクティビティのダイナミクスを理解することで、市場センチメントをより的確に測定し、基盤となるプロトコルの健全性を評価することで、より多くの情報に基づいた取引判断を下すことができる。
強気局面では、取引高の多さは潜在的な利益確定の機会やボラティリティの高まりを示す。弱気サイクルでは、取引高の少なさは、市場の底打ちの可能性や蓄積の機会を示すかもしれない。
オンチェーンの取引高やTVL(預かり資産)のようなその他のブロックチェーン指標を注視することは、暗号資産市場の鼓動を聞くようなものであり、投資家が業界の発展による紆余曲折を切り抜けることを可能にする。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Why On-Chain Transaction Is the Key Blockchain Indicator