ロシア最大の銀行であるロシア貯蓄銀行(ズベルバンク:Sberbank)は、ブロックチェーンを用いて、シンガポールに拠点を置くコモディティ取引大手のトラフィグラ(Trafigura)から1,500万ドル(約16億2,000万円)相当の売掛債権を購入した。
同銀行の広報担当者によると、(オープンソースのブロックチェーン基盤の一つである)ハイパーレジャー・ファブリック(Hyperledger Fabric)のプラットフォーム上でこの実験的な取引は行われた。ネットワーク参加者のサブセット間で特定のデータを機密に保つことができるという、ファブリックのデータ機密保持機能を有効活用した形だ。
同銀行が試験運用したこのシステムは、アウレリア(Aurelia)のフレームワークと同銀行のクラウドソリューションであるスベルクラウド(SberCloud)を用いて、プログラミング言語「スカラ(Scala)」で書かれたスマートコントラクトを活用している。一連の取引を1秒で完了させると同銀行は主張している。
この案件は先週、同銀行の筆頭副会長アレクサンダー・ヴェディアキン(Alexander Vedyakhin)氏が、ロシアのウラジオストク(Vladivostok)で開催された東方経済フォーラム(Eastern Economic Forum)で発表したが、その時点では規模や技術面の詳細は明かされていなかった。
同銀行の取得分は、元々はトラフィグラとトルコの大口顧客との間のものである。
ヴェディアキン氏はプレス発表の中で、この技術が文書フローを効率化に役立ったことで、案件を終えるまでに必要な時間が「1日から1時間」へ削減されたと述べた。
「我々のブロックチェーン・プロジェクトのパイロット版は、取引の全過程を記録します。つまり、購入要求、銀行での申請の処理・承認、銀行から提示内容の発行、トラフィグラによる条件の確認、取引の決済までです」と同氏は述べた。
ロシアが進める、ブロックチェーンを活用したパイロット案件
このパイロット版は、ブロックチェーン技術がどれほど進化し、またビジネスにも有用であるかを示すものだ、と同銀行は胸を張る。
「我々が2019年、特にこのパイロット版に何を見出しているかというと、この技術の止まらぬ進化です。将来有望ではあるものの未だ発展途上の技術を、既存の価値観を打ち砕くような当初のイメージに沿う、より進んだ、そして成熟したソリューションにしていきます」と同銀行の広報担当は述べた。そして、同銀行とトラフィグラは、グローバルな取引にブロックチェーンの利用を広げていく考えだと付け加えた。
「取引は両社間で円滑に行われ」、両社はこの技術の他の活用方法について議論中だ、とトラフィグラの広報担当はCoinDeskに語った。
同銀行のブロックチェーン・ラボは、分散型台帳の可能性を調査しながら、これまでハイパーレジャー・ファブリックを使用してきた。2018年11月には、ロシアの投資会社インターロス(Interros)のキプロス支店と取引所外買戻条件付売買契約を締結している。
2017年、同銀行は別のパイロット版もローンチしており、ロシア企業のメガフォン(MegaFon)、メガラボ(MegaLabs)、アルファ銀行(Alfa-Bank)に関係する支払いを、ファブリックを用いて分散型台帳に記録した。
同銀行は、フィンテック協会(Fintech Association)のメンバーでもある。これは、マスターチェーン(Masterchain)と呼ばれるイーサリアムベースの企業向けプラットフォームに取り組むロシア連邦中央銀行(Russian central bank)が支援するコンソーシアムである。
翻訳:石田麻衣子
編集:T.Minamoto
写真:Shutterstock
原文:Russia’s Largest Bank Buys $15 Million in Debt Using Hyperledger Blockchain