ステーブルコイン、1年半の下落トレンドが転換──新たな資金が暗号資産に流入
  • ステーブルコインの時価総額は2022年5月以来初めて上昇に転じ、特にテザー(USDT)は、過去最高の約900億ドル(約13.5兆円、1ドル150円換算)近くに達した。
  • トレンドの転換は、多くの資本がエコシステムに参入し、暗号資産(仮想通貨)市場の流動性が改善している兆しとアナリストらは述べている。

18カ月ぶりの転換

テザー(USDT)の時価総額が過去最高の890億ドルに達したことに象徴されるように、18カ月以上ぶりにステーブルコイン市場が拡大し、新たな資金が暗号資産に流入している。

グラスノード(Glassnode)のデータによると、主要ステーブルコインの時価総額合計は、過去1カ月で約50億ドル増加し、1240億ドルに達した。

増加は、厳しい「暗号資産の冬」の始まりとほぼ同じタイミングの2022年5月に始まった下落トレンドからの大きな転換を意味している。

(Glassnode)

ステーブルコインは、法定通貨とブロックチェーンベースの暗号資産のブリッジとして機能し、市場参加者にトレーディングとレンディングのための流動性を提供している。

つまり、ステーブルコインの市場規模のトレンド転換は、最近の暗号資産市場上昇の全般的な健全性を示す強気シグナルとなる。

コインメトリクス(Coin Metrics)のアナリスト、タネイ・ベド(Tanay Ved)氏は「この上昇トレンドは、オンチェーンでの流動性向上の先行指標として解釈でき、多くの資本が展開できる環境を示している」と述べた。

USDTの供給量は過去最高水準

テザー(USDT)は時価総額最大のステーブルコインで、主に中央集権型取引所や発展途上国での取引で使用されている。USDTの供給高は9月以降に70億ドル増加しており、10月中旬以降「有意義な形で」発行量が増加していると暗号資産サービスプロバイダーのマトリックスポート(Matrixport)は指摘している。

実際、USDTの時価総額は2023年の大半で増加を続け、2022年の史上最高水準を上回り、現在900億ドルに近づいていることがコインゲッコー(CoinGecko)のデータで示されている。だがステーブルコイン全体では、USDコイン(USDC)やバイナンスコイン(BUSD)といった競合の縮小が最近までUSDTの伸びを相殺していた。

アナリストでニュースレター「Crypto Is Macro Now」の著者であるノエル・アチェソン(Noelle Acheson)氏は「トレンドは上昇傾向にあり、投資家の関心が高まっていることを示すものとして、暗号資産にとっては強気といえるだろう」と述べた。

ただし、「ステーブルコインの時価総額は、間違いなく現在よりもはるかに見通しが悪かった今年初めの水準を大きく下回っており、まだ初期段階だ」とアチェソン氏は付け加えた。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:ステーブルコインの時価総額(Coin Metrics)
|原文:Fresh Money Flows to Crypto as Stablecoin Market Expands After 1.5 Years Downtrend