ソーシャルメディア大手フェイスブック(Facebook)の仮想通貨プロジェクト「リブラ(Libra)」を運営するために設立されたリブラ協会(Libra Association)の責任者は、リブラが国家の金融安定性を脅かすとする主張に反応を示した。
仏経済紙レゼコー(Les Echos)の2019年9月12日(現地時間)付のインタビュー記事の中で、リブラ協会のゼネラルディレクター、バートランド・ペレス(Bertrand Perez)氏は、リブラがその準備金に含まれる通貨を発行する中央銀行の金融政策に混乱をもたらす可能性を懸念する必要はあまりないとした。リブラの準備金は、複数の法定通貨や国債で構成されるバスケットで、リブラの価値を裏付ける。
ペレス氏は、そのような主張は「理にかなってるとは思えません」と語り、次のように続けた。「(中央銀行の)金融政策がバスケットを通じてリブラに影響を与えるのであって、その逆ではありません」
ペレス氏はリブラの準備金の詳細を明らかにすることで自身の発言の根拠を示し、準備金には米ドル、ユーロ、日本円、英ポンド、そしてシンガポールドルが含まれるが、中国人民元は含まれないと述べた。
ペレス氏によると、準備金は、法定通貨、およびそれら通貨を発行する国の1年未満の「超短期の」国債で構成される。また、準備金の総額は「数百億ドル」かそれ以上となるが、最大でも「おそらく2000億ドル(約21兆6200億円)に満たないだろう」と同氏は明かした。
これは巨額に思えるかもしれないが、世界的な金融市場においては「少ない」金額だと、ペレス氏は主張し「新たなブラックロック(BlackRock)になるつもりはありません」と付け加えた。米資産運用大手ブラックロックの運用資産は約6兆8400億ドル(約740兆円)。
同氏は、バスケットに含まれる通貨の1つが暴落した場合の対応についても明かした。
「現在からリブラ(のローンチ)までの間に、通貨が破滅的な状況に陥ったり、危機が発生したとしたら、我々はその通貨をバスケットから除外することができます。ただ、そのような判断は投票にかけられ、リブラ協会の3分の2以上の多数によって決定されるべきです」とペレス氏は述べた。同氏によると、リブラ協会はバスケットの配分をまだ決定していないが、米ドルが「非常に大きな割合、約半分を占めるでしょう」。
クレジットカード大手のビザ(Visa)やマスターカード(Mastercard)、オンライン決済サービスのペイパル(PayPal)、配車サービスのウーバー(Uber)などの大手企業を含む28社が現在リブラ協会に加盟している。来年までに加盟企業を100社にまで増やすことが目標だ。
加盟企業は、NGO、民間企業、ブロックチェーングループなどといった「活動領域ごとに定義されている規則や基準に基づいて客観的に」選ばれるとペレス氏は述べた。参画には「少なくとも1000万ドル(約10億8100万円)」を支払う必要があるが、参画を希望する企業は100社を超えている。
正式発表されて以来、リブラは規制当局からの激しい反発に直面してきた。おそらく最も注目すべきは、ブリュノ・ルメール(Bruno Le Maire)仏経済・財務相が、9月12日に、通貨主権への脅威となることを理由に「ヨーロッパにおいてリブラの開発を許可することはできない」と述べたことだろう(ルメール経済相の発言はペレス氏のインタビューが行われた後だと思われる) 。
インタビュー記事の中でペレス氏は、これらの問題について触れ、ローンチを6月のホワイトペーパー発表から1年後に設定したのは「これら全ての問題を解決するため」だと明かした。
ペレス氏はさらに、リブラが間もなくスイスで決済システムとして認可されることを示唆したが、規制面ではまだすべきことが多く残っていることも認めた。
そうであっても「我々は、2020年の上半期末から年末の間にローンチするという予定を堅持します」とペレス氏は語った。
翻訳:山口晶子
編集:町田優太
写真:Libra image via Shutterstock
原文:Facebook’s Libra Pushes Back at Claims Project Is Threat to Financial Stability