ビットコインは2024年、NFTとミームコインの基盤としての地位をイーサリアムから奪う

「スマートコントラクト」と聞くと、主にイーサリアムブロックチェーンを基盤としたDAO(分散型自律組織)やDEX(分散型取引所)、NFTを思い浮かべる人が多いだろう。

しかし、そんな状況が変わろうとしている。2024年、ビットコインは、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)コンセンサスメカニズムに基づく優れたセキュリティとネットワークの貢献者に長期間にわたって効果的にインセンティブを与えるよう設計された手数料モデルによって、開発者を引き寄せる取り組みにおいて主導権を握ると予想される。

対照的に、イーサリアムブロックチェーンの熱狂的な支持者は、イーサリアム(ETH)は時価総額でビットコイン(BTC)を追い抜くと何年も予測しているが、今やそのような予測が現実にはならないことは明白だ。

ETHの時価総額は現在、BTCに対して30%近く下落している。皮肉なことに、唯一起こりそうな逆転は、イーサリアムのユースケースがビットコインに移行することだ。たとえ、厳格なビットコイン・マキシマリスト(至上主義者)がそれに憤慨していても。

プルーフ・オブ・ステーク:イーサリアムにとっての死の宣告

イーサリアムブロックチェーンはプルーフ・オブ・ステーク(PoS)に移行したことで、段階的かつ必然的に陳腐化する道を歩み始めた。エネルギー消費の物理学と工学を考慮したプルーフ・オブ・ワーク(PoW)とは対照的に、ステーキングはチェーンの次の正しい状態を承認するために、一種の「投票」システムを実装している。持っている暗号資産の数が多ければ多いほど、投票の重みが増す。

PoSは実質的に「持てる者」が「持たざる者」や「少ししか持たない者」に対してより大きな力を得るという現在の金融システムの問題点のすべてを複製している。

さらに、PoWと同じ51%の攻撃脅威モデルのもとで考えると、PoSは根本的に、そして致命的に安全ではない。これはサイファーパンクのビジョンにとって忌まわしく、批判されるべきものだ。

絶え間ないハードフォークのうえに構築されたシステムは、ネットワーク参加者をアップグレードのたびに起こりうる不測の事態によって疲弊させるに違いない。

イーサリアムは、イーサリアム財団が自らに報酬を支払うために70%のプレマイニングを行って以来、最初から誤った方向へ進んでいたと言えるだろう。

これによって、権力者がネットワークをコントロールする方向性が定まり、規制の観点からも、イーサリアムが失敗する運命にあることは明白になった。米証券取引委員会(SEC)から電話がかかってきて、誰かが対応すれば、それは中央集権的だと見なされるというジョークがある。

イーサリアムが過去に手数料、NFTやミームコインのようなより表現力豊かなユースケースで一定の成功を収めてきたことも事実だ。

しかし、これらのカテゴリーにおけるビットコインの緩やかで着実な歩みと比較すると、イーサリアムが戦いに負けていることも明らかだろう。そしてもちろん、市場は嘘をつかない。

手数料をめぐるFUD

ビットコインに関するFUD(恐怖、不確実性、疑念:fear, uncertainty and doubt)の主要トピックの1つは、長期的なセキュリティモデルだ。主に、2100年代のある時期までブロック報酬が漸近的に減少するため、マイナーが長期的にブロックをマイニングし続けるインセンティブとなるための十分な手数料が発生しないという懸念だ。

この議論は今年、的外れなことが証明された。取引手数料の報酬がマイニング報酬を上回ることが何度もあり、つい先週も手数料がブロック報酬の2倍になった。そして、プロトコルとしてのビットコインの半減期スケジュール全体においては、現在はまだ早い段階にある。

インスクリプション(Inscription)は、手数料争奪戦の火付け役となり、現在までに全手数料の21%を占めている。

インスクリプション、いわゆるビットコインNFTが取引手数料にまつわる競争的な環境のきっかけとなったことは明白で(5月のインスクリプションブームのピーク時は1800万ドル)、現在、1日あたりの取引手数料は1300万ドルに達している。

かつてイーサリアムで見られたミームコインブームでさえ、ビットコインに移行している。5月には、BRC-20(Ordinalsプロトコルを使用した新しいトークン標準)が、ビットコインの取引手数料を過去2年間で最高レベルに引き上げた。

「トランザクションを目的とする」ビットコイン・マキシマリストの中には、BTCのトランザクションデータのみを伝播することが唯一かつ「真の」有用性であるとして、このような活動をネットワーク上のスパムと見なす人もいる。

だが、多くのユーザーに支持され、普及しつつある技術を後押ししないと頑なに考えることは甘いと言わざるを得ない。マイニング業界を永続的に支える、真に持続可能な経済モデルを提供することは正しい結果だ。

今年、ビットコインはOrdinalsとBRC-20トークンのおかげでイーサリアムや他のレイヤー1ブロックチェーンからNFTファンを引き寄せることができた。

かつてはイーサリアムの卓越したユースケースの1つであり、競争力とアピールされてきたイーサリアム上のNFTは、緩やかな転落を始めている。例えば、イーサリアム最大のNFTプラットフォーム「オープンシー(OpenSea)」の取引高はピーク時から98.5%低下。一方、OrdinalsはビットコインNFTの普及を牽引した。

実際、ギャラクシー・リサーチ(Galaxy Research)は、ビットコインNFTの市場規模は、2025年までに45億ドルに達すると予測している。このリサーチと新たなユースケースでのビットコインブロックチェーンの利用拡大は、イーサリアムの中央集権型ネットワークに終止符を打つ可能性を秘めている。

国際的、地政学的ステージでのビットコイン

解決する価値のある真の問題は通貨であり、機関投資家や国家での採用を含むほとんどの指標でビットコインが勝利している。

エルサルバドルはビットコインを法定通貨として採用し、豊かな国に変容させる方法として活用している。ブケレ大統領は、ビットコインを裏付けとする「火山債」を2024年に発売する規制当局の承認を得た。

最近就任したアルゼンチンの新大統領ハビエル・ミレイ氏もビットコイン支持者だ。彼は以前「ビットコインはマネーの創造者への返還を意味する。創造者とはで民間セクタだ」と述べており、アルゼンチンがビットコインを法定通貨として採用する次の大国になるかもしれないと噂されている。

ブータンは密かにビットコインマイニングを行っている。オマーンはビットコインのマイニングインフラに11億ドルを投資し、他の有力国もビットコインへの興味、投資を表明している。

欧米では、ロバート・F・ケネディ・ジュニア(Robert F. Kennedy Jr.)氏やビベック・ラマスワミ(Vivek Ramaswamy)氏のような米大統領候補が、社会の構造そのものを蝕んできた緩和的金融政策に対する解決策として、ビットコインのメリットを訴えている。

ビットコイン現物ETF(上場投資信託)の登場も目前に迫っており、ビットコインはどの角度から見ても、世界的な普及の新たな段階に入りつつある。

2024年を見据えて

人々が何よりも考えるべきことは、ビットコインは分散化され、繁栄し、すべての人にとって公平な未来に不可欠であり、イーサリアムのような「より良い代替品だ」と主張する他のネットワークは、DDoS攻撃のようなものと見なしても良いということだ。

結局のところ、真に分散型で健全な通貨ネットワークは、中央集権的な代替ネットワークを常に打ち負かすことができる。

半減期が近づき、普及が進むにつれて、2024年にはマイケル・セイラー(Michael Saylor)氏がよく言うように「次善のものはない」ことがますます明らかになるだろう。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:The Bitcoin Fee Flippening Is Upon Us