2024年のブロックチェーン技術予測──リップル、コインベース、a16z、スタークネットなど10人の専門家に聞く

ブロックチェーン開発者の多くは、未来の金融・ビジネスインフラを構築するという究極的に最先端の仕事をしていると感じているだろう。まさに「革命」にほかならない。

私たちが目撃し、報道したことに基づくなら、それは間違っていない。少なくともブロックチェーン領域におけるイノベーションのペースと新展開のスピードは我々を驚かせ続けている。

2023年、暗号資産(仮想通貨)市場は大半は低迷したが、発表、新製品の市場投入、インテグレーション、パートナーシップ、コラボレーション、資金調達、ローンチ、展開、移行は息つく暇もなく続いた。

多くの変革があり、情報があり、すべてが非常にテクニカルで複雑だ。追いつくことは大変だが、常に最新情報を把握しておくことも同様に大変。小惑星の密集帯で宇宙船を操縦しながら、個々の小惑星を詳しく探査することを想像してみてほしい。もしかしたら、AIが唯一の希望かもしれない。

2023年の主要トレンドのいくつかは、専門家によって広く予測されていた。だが、そうではないものも多い。実際のところ、暗号資産・ブロックチェーンがどこに向かっているのかは誰にもわからない。

暗号資産・ブロックチェーンテクノロジーの専門家による2024年の10の予測をまとめてみた。彼らの予言は他のどんな予言にも劣らず、かなり専門的だ。ご覧あれ。

相互運用性(インターオペラビリティ)

2024年以降には、ブロックチェーンの相互運用性プロトコルの進歩により、異なるブロックチェーン間の既存のサイロが取り払われ、大きな変化を遂げるだろう。このシフトにより、多様なブロックチェーンプラットフォームがデータと価値の移転を共有することでシームレスに相互作用することが可能になり、統一されたより効率的なブロックチェーンエコシステムが構築される。

この変革において、相互運用性プロトコルの役割は極めて重要となる。相互運用性プロトコルは、イノベーションを促進するだけでなく、特にDeFiにおいて、新しいアプリケーションやユースケースを育成するからだ。

デビッド・シュワルツ(David Schwartz)氏:リップルラボ(Ripple Labs)CTO

ビットコインの取扱手数料

マイナーのブロック報酬が減少するという観点から、取引手数料による変動報酬を引き上げる要因がますます重要になると我々は考えている。ビットコインのコアプロトコルはほぼ安定しており、2021年11月のTaproot(タップルート)アップグレードは、少なくともソフトフォークを必要とする変更に関して、過去5年間で唯一の大きなプロトコルアップグレードだった。

従って、利用促進の要因は、主に既存ネットワーク内での技術イノベーションに由来すると考えている。すなわち、OrdinalsやAtomicalsのようなブロブデータの利用増加、ライトニング・ネットワーク(Lightning Network)のようなレイヤー2の活発化、あるいはビットコインネットワーク上に構築されたスマートコントラクト環境、例えば、Rootstock、Stacks、RGB、あるいはBitVMの将来の実装などだ。

デビッド・ドゥオン(David Duong)氏:コインベース(Coinbase)機関投資家リサーチ責任者

モジュラリティ(モジュラー性)

Celestiaをデータ・アベイラビリティ・レイヤーとして使用するイーサリアムのロールアップのような、より多くのハイブリッド・ソリューションが市場に出てくるにつれて、モジュラリティをテーマにしたインテグレーションやこの分野におけるエキサイティングな発展も起きている。

一方、ソラナ(Solana)のようなブロックチェーンは一枚岩の方向性を堅持し、レイヤー2は流動性とユーザーエクスペリエンスに悪影響を及ぼすと見なして、否定している。

この2つのストーリーが2024年にどのように展開されるのか、特にイーサリアムのロールアップの一部がソラナ・バーチャル・マシンの利用を模索するなか、興味深いものとなるだろう。

アブデルハミド・バクタ(Abdelhamid Bakhta)氏:スタークネット(Starknet)エコシステムのリード兼コアイーサリアム開発者

ゼロ知識(zk)証明

ゼロ知識証明プロトコルのzk-SNARKは、信頼されていない『証明者』が、ある計算ワークロードの『暗号レシート』を偽造できないように計算することを可能にする。

以前は、このようなレシートを計算するためには、元の計算に対して10の9乗の能力が必要だったが、最近の進歩により、この数字は10の6乗まで低下している。

したがって、SNARKは、最初の計算の提供者が10の6乗の計算能力を負担でき、クライアントが最初のデータを再実行または保存できない状況では実行可能なオプションとなる。その結果、多くのユースケースが生まれる。

IoT(モノのインターネット)におけるエッジデバイス(末端に位置するデバイス)は、アップグレードを検証できる。メディア編集ソフトウェアは、コンテンツの真正性と変換データを埋め込むことができる。リミックスされたミームは、最初のソースに敬意を払うことができる。LLM(大規模言語モデル)の推論には真正性情報を含めることができる。自己検証可能な税務関連のフォームや、偽造不可能な銀行監査など、消費者に利益をもたらす多くの用途が考えられる。

サム・ラグズデール(Sam Ragsdale)氏:アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)投資エンジニア

鍵管理/ユーザーインターフェース

アカウント抽象化の出現は、セルフカストディの技術的課題をまもなく克服できることを意味する。2024年はついに、シードフレーズがほとんどの人にとって過去のものとなるだろう。

資産の安全性を守るために、決して紛失することのない、しかし誰もアクセスすることのできない12個の単語を使うというアイデアは時代遅れであり、ユーザーへの普及を大きく妨げてきた。ブロックチェーンはようやく、当初から価値観の中心であった包括的金融という目標を実現できるポジションにつくことになる。

フリーデリケ・エルンスト(Friederike Ernst)氏:グノーシス(Gnosis)およびグノーシス・ペイ(Gnosis Pay)共同設立者

検閲

中央集権化に関する懸念は、本質的に次の2つの核心的な問題に集約される。

(1)中央集権化のベクトルは、アプリケーションを停止リスクにさらすネットワークパフォーマンスの問題につながるか?
(2)中央集権化は検閲上の問題を引き起こすか?

イーサリアムにおけるブロック構築、リレー、検証の分離について興味深いことの1つは、イーサリアムの取引処理スタックの3つの異なるレイヤー間で、検閲の課題をきれいに分離していることだ。

昨年夏、米外国資産管理局(OFAC)がトルネード・キャッシュ(Tornado Cash)のアドレスに制裁を加えた後、主要なイーサリアムのリレーは取引の検閲を始めた。この問題は、Flashbotsが市場を支配するリレーをオープンソース化し、Ultra Sound、Agnostic、bloXrouteのようなパーミッションレス・リレーが競争力を持つようになって収まった。

現在、取引をますます検閲し始めているのはブロックビルダーだ。私は2024年における最大の開発ブレークスルーのいくつかは、ブロックに含まれる前に、検閲を行う可能性のある当事者から取引を保護するメムプール(mempool)暗号化のような分野からもたらされると予想している。

ライアン・セルキス(Ryan Selkis)氏:メッサーリ(Messari)創業者兼CEO

セキュリティ/プライバシー

2023年、Euler FinanceやAngle Protocolを含め、暗号資産業界では数多くのハッキングや詐欺が発生した。

ブロックチェーンプロトコルがより多くのセキュリティソリューションを生み出し、プライバシーにより真剣に取り組むようになるだろう。

ラマニ・ラマチャンドラン(Ramani Ramachandran)氏:ルーター・プロトコル(Router Protocol)CEO

企業の暗号資産活用

ネットワークと開発者プラットフォームは、フリーの開発者と同様に、企業やスタートアップの開発者をオンボーディングするための準備をするべきだ。

ネットワークプロトコルチームは、ネイティブなデジタル体験で数百万人のエンドユーザーにリーチできるユーザーエクスペリエンスを準備しなければならない。大企業は、資産クラスとしての暗号資産を超え、ユーザーエンゲージメントのための製品やツールとしての暗号資産に移行しつつある。

暗号資産は、その適用範囲を拡大し、オンチェーン活動の次の波を引き入れる必要がある。

ヴァネッサ・ペストリット(Vanessa Pestritto)氏:JavaScriptネイティブのスマートコントラクトプラットフォームであり、プルーフ・オブ・ステーク・ブロックチェーンであるAgoric OpCoのパートナープログラム担当ディレクター

レイヤー2への流入

レイヤー2チェーンへのアクティビティの流入は、今年半ばには比較的下火になり、ほとんどの流動性はイーサリアムのメインネットに留まっている。その結果、レイヤー2チェーンにネイティブに存在するDeFiプロトコルは今年のほとんどの期間で流動性が流出した。

しかし、イーサリアムのガス代がアクティビティの急増とともに上昇するにつれ、新たな資本の一部は来年、新たな拠点としてレイヤー2チェーンに流れ込むだろう。

デジタル資産データおよび分析会社CCData(旧CryptoCompare)の展望レポート

レイヤー2の統合

イーサリアムはEIP-4844(プロトダンクシャーディング)を実装し、ポリゴン(Polygon)、アービトラム(Arbitrum)、オプティミズム(Optimism)などのレイヤー2チェーンの取引手数料を削減し、スケーラビリティを向上させるだろう。

アップグレードから1年以内に、イーサリアムのレイヤー2は、価値と使用の観点から、2~3の支配的プレーヤーに統合されるだろう。

マシュー・シゲル(Mathew Sigel)氏:ヴァンエック(VanEck)デジタル資産リサーチ責任者

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
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|原文:Blockchain Tech Predictions for 2024, From Experts at Ripple, Coinbase, a16z, Starknet