セキュリティ・トークン(ST)国内初の流通市場として大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)の私設取引システム「START(スタート)」が12月25日に文字通りスタート。同日、大阪市内でセレモニーが行われた。
セレモニーでは、まずSBIホールディングス代表取締役会長兼社長で、大阪デジタルエクスチェンジ代表取締役会長の北尾吉孝氏が「歴史的瞬間だ」と取引開始に喜びを表し、「セキュリティ・トークンは新たな金融商品として個人投資家に広く受け入れられ、飛躍的に発展していくだろう」と述べた。さらに今後のST商品については、ユーティリティ・トークン(UT)や再生可能エネルギー施設などを裏付けにした商品が増えるほか、社債STにおけるステーブルコインとの連携なども進むだろうと語った。
またそもそも大阪デジタルエクスチェンジに取り組んだ意義として、国内では東京一極集中を脱し、グローバルでは大阪を国際金融都市として発展させていくことを目指すと述べた。
続いて挨拶に立った大阪府の吉村知事は、大阪は商人の町であり、堂島の米市場はグローバルで見ても先物取引のパイオニアであったことに触れ、「ブロックチェーンを使ったデジタル証券の創出は、新しいことにチャレンジする大阪にふさわしい」とSTART開業を称えた。さらに2025年の大阪・関西万博を前に、国際金融機能の強化に向けたSTARTの果たす役割は非常に大きいと続けた。
その後、この日上場した2銘柄に関わる企業をそれぞれ代表して、いちご代表執行役社長の長谷川拓磨氏、ケネディクス執行役員の中尾彰宏氏が登壇。長谷川氏は「STARTの開始を通じて多くの投資家を呼び込み、小口化した不動産をより広く取り扱ってもらいたい」と述べた。そのうえで、「Jリートの時価総額は20兆円に上っており、STも同じように成長する」と期待を込めた。
中尾氏は、ODXでのST売買開始は「グローバルの中でも最先端を走る日本のデジタル証券市場を象徴する」と強調。ST流通市場における利便性と透明性の向上に加え、今後はステーブルコインとの決済連携などデジタル証券ならではの利便性を向上させていくことで、日本の投資環境が大きく変わると述べた。
最後に大阪デジタルエクスチェンジ代表取締役社長の朏仁雄氏が登壇し、STARTに関する概要と展望を説明。ST発行実績は、特に2023年の取引高が大きく伸びたと述べた。特に。100億円を超える大口案件が出てきたことや各社の取り組みによって発行頻度が上がったことに起因しているとした。現在、ST発行実績は累計約800億円に上り、約30件のSTが公募で発行されていると述べた。
また「START開始により市場は大きく変化する」と指摘。市場価格が常時提示されることで、「投資家にとっては、いつでも買える、いつでも売れる安心感が生まれる」と説明した。通常、プライマリー(発行)市場への参加をためらう投資家も、セカンダリー(発行)市場であれば売買のハードルが下がる。これにより投資家がセカンダリー市場に参入すれば、プライマリー市場への参入も促進され、「両市場がスパイラルで発展していくことができる」と強調した。STARTのマイルストーンとしては、向こう数年かけて時価総額1000億円に持っていきたいと語った。
なお、この日上場した2銘柄は、ケネディクス、SMBC信託銀行、大和証券が協業して発行・運営する「ケネディクス・リアルティ・トークン ドーミーイン神戸元町(デジタル名義書換方式)」と、いちご、三菱UFJ信託銀行、SBI証券が協業して発行・運営する「いちご・レジデンス・トークン-芝公園・東新宿・都立大学・門前仲町・高井戸・新小岩-(デジタル名義書換方式)」。発行基盤として、前者は「ibet for Fin」を、後者は「Progmat」を使用する。
|文・編集:水野公樹・増田隆幸
|画像提供:START PR事務局