再生、そしてWeb3マスアダプションへ──伝統的金融インフラに浸潤する暗号資産・ブロックチェーン【2024年始特集10本】

「冬は明けた」。FTX崩壊の衝撃のなかでスタートした2023年。その余波を受けた米暗号資産大手の倒産劇、クリプト銀行と呼ばれた米地銀の破綻、米証券取引委員会(SEC)によるバイナンス、コインベースの提訴、さらに年末にはバイナンスがマネーロンダリング対策違反で米当局に巨額の罰金を支払い、創業者でCEOのジャオ氏が退場した。暗号資産と業界は徹底的に追い込まれているかのように思えた。

だがビットコインは静かに足元を固め、復活のタイミングを見据えていた。2023年を1万6000ドル台でスタートさせると第1四半期(1−3月期)には2万5000ドル手前まで回復、続く2四半期は3万ドルの手強さを試す展開となったが、第4四半期に入ると一本調子での上昇となり、現時点では4万3000ドル台で推移している。円安の影響もあるが日本円では600万円を超えている。

こうした展開を予想できた人はいるだろうか。

2023年6月、世界最大の資産運用会社ブラックロックがビットコイン現物ETFをSECに承認したことが潮目の変化となったことは多くが指摘している。これまで、数多くの申請をSECは拒み続けてきた。だが今回はブラックロックの後に、同じく伝統的な資産運用大手であるフィデリティ、フランクリン・テンプルトンなども続いた。こうした動きに一部では「SECはビットコインを伝統的金融の手に委ねようとしているのではないか」との見方もあるほどだ。

2024年1月にはアメリカでビットコイン現物ETF(上場投資信託)の承認が予想され、4月にはビットコイン半減期を控える。ウォールストリートの莫大な資金がビットコインに流入する一方、半減期による供給ショックが起きればどうなるか、想像に難くない。

ウォールストリートがビットコインをはじめとする暗号資産を呑み込もうとしているのか、あるいは暗号資産がウォールストリートに浸潤しているのか。見方はポジションによって分かれるだろう、だが暗号資産を支えるブロックチェーンテクノロジーが伝統的金融に広がっていることは間違いない。

例えば、RWA(リアルワールドアセット:現実資産)のトークナイゼーション(トークン化)がグローバルで加速している。その代表例は法定通貨をトークン化したステーブルコイン。日本でも2024年半ばの登場が予想されている。また不動産をトークン化したセキュリティ・トークン(デジタル証券)が着実な成長を見せている日本は、グローバルで見てもRWAの取り組みを動きをリードし、社債、VCファンドなど裏付け資産の拡張も見据えている。

人と人のつながり、コミュニティのあり方にもブロックチェーンテクノロジーが新たな可能性を生み出している。DAO(分散型自律組織)だ。株式の発明が資本主義を発展させたといわれるが、DAO、そしてその運営を支えるトークンは株式をベースにした資本主義を変える可能性を秘めている。

もちろん、こうした変化はすぐに起きるものではない。2024年、Web3のマスアダプションが期待されているが、おそらく5年後、10年後に振り返ったとき「2024年が転換点だった」と気づくに違いない。

転換点にいる私たちは、その幸運と面白さを享受して、前に進みたい。CoinDesk JAPANのNew Year’s Specialがその一助となれば幸いです。

CoinDesk JAPAN編集長 増田隆幸

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