「あなたの100万、私1,000万で買うわ」──ダークウェブ上での闇取引

資金を盗むためにオンラインアカウントにハッキングするスキルや、そのリスクを取れない犯罪者に向けた闇のサービスが存在している。

セキュリティ・アズ・ア・サービス企業のアーマー(Armor)による9月のレポートによれば、ダークマーケットのハッカーらは、法定通貨をその評価額のほんのわずかな値段で販売することで、訳ありな金を自分で取り扱うリスクを回避している。

アーマーの脅威対抗ユニット(Threat Resistance Unit=TRU)の研究チームはレポートの中で次のように述べた。

「盗んだ資金を、指定の銀行口座やオンライン決済のペイパル(PayPal)アカウントに送金したり、送金業者ウエスタンユニオン(Western Union)を通じて送金することを厭わないハッカーが数多く存在している」

研究チームは、こうした新しい形態は過去1年に散見されるようになったもので、ダークウェブ上で「主要なサービス」へと発展してきた、と述べた。

こうしたサービスを利用する人々は、1ドル(約108円)当たり約10〜12セント(約10円81銭〜12円97銭)でビットコインに対して現金を獲得するという、かなり割のいい取引をすることができる。例えば、顧客は販売者に対してビットコインで800ドル分(約8万6000円)を支払うと、1万ドル(約108万円)の現金が指定の口座へと送金される。

安いこと以外にも、このサービスは顧客にとって物事をずっと容易にしてくれる。盗まれたオンライン銀行口座の認証情報を買い、資金の受け取り用に「マネーミュール(money mule)」アカウントを設定し、資金を送金するために盗まれたアカウントにログインする必要がないからだ。

同社はこれを、「シームレスなターンキーマネーロンダリングサービス」と呼んでいる。

ダークウェブでの売り手がそのような低価格を提示しているのにはもちろん理由がある。

このサービスは、資金を自ら保有しなくていいという点で売り手にとって魅力的である。現金を送金するということだけで、買い手にリスクの大半を押し付けることになる。

ビットコインはいまだに最も人気の仮想通貨であり、ダークウェブの取引では「ほぼ独占的に」利用されている、とレポートには記されている。モネロ(monero)やダッシュ(dash)、ジーキャッシュ(Zcash)などのよりプライバシー機能が充実した仮想通貨も時には利用されるが、被害者側により技術的知見があることが必要となる、とアーマーは述べる。

翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Hacking image via Shutterstock
原文:Cybercriminals Selling Hacked Fiat Money for Bitcoin at 10% of Its Value