Facebook「リブラ」が金融に与えるリスクをめぐり各国中央銀行が質問

ソーシャルメディア大手のフェイスブック(Facebook)が率いる仮想通貨プロジェクト「リブラ(Libra)」は、金融安定性に対するリスクをめぐって26の中央銀行からの質問に直面しようとしている。

国際決済銀行(Bank of International Settlements)の中央銀行向けフォーラム、決済・市場インフラ委員会(Committee on Payments and Market Infrastructure)は2019年9月16日(現地時間)、スイスのバーゼルにおいて、リブラの運営・開発を目的に設立されたリブラ協会(Libra Association)に質問を行うと関係者がフィナンシャル・タイムズ(Fincancial Times)に語った。参加銀行には、イングランド銀行(Bank of England)やアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が含まれると報じられている。

欧州中央銀行(European Central Bank=ECB)の専務理事、ブノワ・クーレ(Benoit Coeure)氏が議長を務める会談では、計画の範囲や構造についての質問にリブラ協会が答えることが見込まれている。この会談によって中央銀行が得た回答は、先進7カ国(G7)向けの10月の報告書に盛り込まれる予定だ、と関係者はフィナンシャル・タイムズに語った。

クーレ氏は9月13日(現地時間)にフィンランドの首都ヘルシンキで開かれたEU(欧州連合)の財務大臣会談の後に、リブラのような仮想通貨プロジェクトは、「非常に強い懸念」を生んでいる、と述べた。

9月13日(現地時間)付のブルームバーグ(Bloomberg)の報道によれば、クーレ氏は次のように述べた。

「こういったプロジェクトは慎重に検討しなければなりません。規制当局による承認のためのハードルは非常に高く設けられてきています」

しかしクーレ氏は、リブラが「我々の支払いシステムをいかに改善するかという点で新たな考えを促した」とも述べた。

フェイスブックが世界中に抱える数十億のユーザーにデジタル通貨ベースの支払い方法を提供するリブラプロジェクトをめぐって、世界中の規制当局が懸念を表明する中、リブラ協会はおそらく、その計画について力強い主張を展開しなければならない。

特に強い懸念を表明したのはおそらく、フランスのブリュノ・ルメール(Bruno Le Maire)仏経済・財務相で、9月12日には、EUでリブラを阻止すると警告し、次の通りに述べた。

「完全に明確にしておきたいと思います。我々は、このような状況では、ヨーロッパにおいてリブラの開発を許可することはできません」

リブラのもたらす国家通貨への脅威はまた、中央銀行をベースとしたデジタル通貨の計画の整備を当局に促した。

中国の中央銀行にあたる中国人民銀行は、リブラを受けてデジタル人民元のローンチに向けて急いでおり、同行本店から離れた秘密のオフィスで特別チームがプロジェクトに取り組んでいるとされる。

ルメール経済相は9月12日の発言の中で、ECBのマリオ・ドラギ(Mario Draghi)総裁と、10月末に総裁に就任するクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)氏とともに「パブリックデジタル通貨」の作成について話し合ったことを示唆した。

フィナンシャル・タイムズによれば、クーレ氏は9月13日(現地時間)、規制当局が「中央銀行デジタル通貨に関する考えを進歩させる」時である、とも述べた。

翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Benoit Coeure image via ECB/Flickr
原文:Central Banks to Question Facebook-Led Libra Over Financial Risks