FRBの利下げはビットコインの強気要因か?──景気後退はいつも緩和の後に
  • 1月3日に発表された連邦準備制度理事会(FRB)の議事録は、政策立案者が今年中に利下げを行う可能性を示している。
  • 過去のデータによれば、FRBが利下げを始めると景気後退に陥る傾向がある。

1月3日に発表されたアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の12月会合の議事録は、2024年に利下げが行われる可能性が高いことを示している。

待望の流動性緩和は、目前に迫ったスポット上場投資信託(ETF)のローンチやビットコイン・ブロックチェーンの4年に一度のマイニング報酬半減と並んで、ビットコイン(BTC)にとって重要な強気の追い風として広く注目されている。

しかし、これには問題がある。MacroMicroから入手した過去のデータによると、景気を刺激するとされるFRBの利下げサイクルの初期段階は、しばしば経済が景気後退の瀬戸際にあり、世界最大かつ最も流動性の高い国債市場に支えられた世界的な基軸通貨である米ドルが短期間だが顕著に上昇するという特徴がある。

言い換えれば、歴史を参考にすれば、FRBが金利の引き下げを開始した後、ビットコインは2024年に短期間で強烈なリスク回避の動きを見せるかもしれない。

景気後退とは、経済生産高が減少し、失業率が上昇する期間が長引くことだ。市場原理に任せておくと、不況は投資家のリスクテイク能力を急激に低下させ、資産価格のデフレを招く。そのため、中央銀行は金融刺激策で対抗することが多い。

ドルは世界的な基軸通貨であり、世界貿易、国際債務、ノンバンクからの借り入れにおいて大きな役割を担っている。ドル相場が上昇すると、ドル借入を抱える企業は債務返済コストの上昇に直面する。これは財務の逼迫につながり、投資家はビットコインのようなリスク資産へのエクスポージャーを減らすことになる。

米金利、ドルインデックス、S&P500のチャート。(MarcroMicro)

米ドルの対主要通貨レートを示すドルインデックスは、FRBが2000年半ば、2007年9月、2019年8月に利下げサイクルを開始した後、当初は上昇した。世界の投資家のリスク選好度を示すS&P500指数は、利下げサイクルの初期段階でリスク回避の動きが見られた。

上の図の網掛け部分は、FRBが利下げに軸足を移した後に景気後退が起こったことを示している。

利下げの後には景気後退が来る?

歴史的に見て、FRBが利下げに踏み切ったのは景気後退が目前に迫ってからだ。そのため、先見的な市場は利下げを悪材料の前触れとみなし、米ドルの安全性を求めるようになった。

投資会社のPiper Sandlerが追跡したデータによると、過去60年間、景気後退は一貫して緩和サイクルの開始の後に続いている。

「FRBは高金利を必要以上に引き上げ、維持することでオーバーシュートしがちで、不注意にも経済成長を抑制してしまう。利下げは通常、経済が目に見えて落ち込み、失業率が上昇したときに初めて実施される。その時点では景気後退は避けられないのが普通だ」と、Piper Sandlerは1月2日付の顧客向けメモで述べている。

「今回も同じパターンが繰り返される可能性が高く、FRBは必要以上にタカ派的なスタンスを維持するだろう」とPiper Sandlerは付け加えた。

一部の観測筋によれば、2022年7月までの16カ月間に借入コストが5.25%へと急上昇したFRBの急ピッチな利上げサイクルを受けて、市場は現在、アメリカ経済の景気後退回避能力を過大評価している。そのため、景気後退の可能性について市場が否定的な反応を示す可能性があるという。

アメリカの景気後退はいつもFRBが緩和を始めた後に起こる。(FRED, Piper Sandler)

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:FRED, Piper Sandler
|原文:Expected Fed Rate Cuts Support Bull Case in Bitcoin, But There is a Catch