米証券取引委員会(SEC)のゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長は、グレイスケール(Grayscale)によるビットコイン現物ETF(上場投資信託)申請の却下をめぐりSECが敗訴したことで、同様の現物ETF申請十数件を承認する以外にほとんど打つ手がなくなったことを10日に認めた。
ゲンスラー委員長は、暗号資産業界と投資家が待ち望んでいた決定をSECが発表した直後に発表した声明の中で、今回の承認は「最も持続可能な前進」だと述べた。
暗号資産商品に注意喚起
ゲンスラー委員長は、「我々はビットコイン自体を承認または推奨したわけではない」とし、「投資家は、ビットコインや暗号資産と価値が結びついた商品に関連するさまざまなリスクについて、引き続き注意すべきだ」と警鐘を鳴らした。
また、ビットコインは「主に投機的で価格変動の大きな資産であり、ランサムウェア、マネーロンダリング、制裁回避、テロ資金調達などの非合法活動にも使われている」と説明。これらのETFの承認は米証券規制当局によるさらなる措置への道を開くものではないことを明確にしようとした。
ゲンスラー委員長は、「これは委員会が暗号資産証券の上場基準を承認する意思があることを示すものではない」とし、さらに「承認は、他の暗号資産の連邦証券法における地位、特定の暗号資産市場参加者が連邦証券法を遵守していない現状に関する委員会の見解を示すものでもない」と述べた。
同委員長が証券ではないと日常的に認めている唯一のデジタル資産はビットコインであり、他の暗号資産の大部分は正当にSECの管轄下にある証券の法的定義に適合すると主張している。
反対した委員「身勝手な道」
SECの5人の委員のうちの1人、キャロライン・クレンショー(Caroline Crenshaw)氏は承認に異議を唱えた。
クレンショー委員は声明で、「彼らは投資家保護をさらに犠牲にする可能性のある身勝手な道に導いた」とし、「これらの措置が我々の法律上または基本的な投資家保護義務を果たすということに同意できない」と表明した。
長年にわたり暗号資産業界を着実に支援してきたヘスター・パース(Hester Peirce)委員は、今回の決定を「不必要だが結果的に生じてきた物語の終焉」だと賞賛。米コロンビア特別区控訴裁判所で行われたグレイスケールとの訴訟でSECが敗訴したことに言及し、「同様の申請を最後に却下して以来、唯一の重要な変化は司法による叱責だった」と指摘した。
|翻訳・編集:林理南
|画像:Jesse Hamilton/CoinDesk
|原文:Gary Gensler’s Begrudging Bitcoin ETF Concession: ‘We Did Not Approve or Endorse Bitcoin’