15年前の1月11日、暗号学者であり、サトシ・ナカモトに次いで2番目にビットコイン・プロトコルを実行したハル・フィニー(Hal Finney)氏は「ビットコインを実行中」とツイートした。
15年間での驚異的な進歩
15年前の2009年、ビットコインはほとんど存在していなかった。
Running bitcoin
— halfin (@halfin) 2009年1月11日
ハル・フィニー:ビットコインを実行中
しかし2024年1月10日、ビットコインは世界最大級の複数の資産運用会社によって、グローバル金融の一翼を担うものとして認められた。
何もないところから、ブラックロック(BlackRock)、フィデリティ(Fidelity)、インベスコ(Invesco)など多くの企業に支持されるまでになったビットコインは、新しいテクノロジーとしてはおそらく史上最も驚くべき発展を遂げたものとして歴史に刻まれるだろう。
ビットコインは、企業や政府機関の後ろ盾もなく、運営にVCの資金を使わず、社内のPRチームも持たずに偉業を成し遂げてきた。
ビットコインのコミュニティはおそらくそれほど静かではないが、プロトコル自体には驚くほど騒動がない。バックグラウンドでひっそりと運営されながら、ネットワークが生み出す資産は、国境や規制に関係なく、世界中の機関投資家のポートフォリオや個人投資家の保有資産に入り込んでいる。
管轄する国や地域は存在せず、管理者も存在せず、一片のコード以外の発行者も存在しない資産が、いまや金融の最高峰で、世界最大の金融市場において最大の資産運用会社に受け入れられている。
わずか15年の間に。驚くべき進歩だ。
力を取り戻したウォール街
そして、1月10日はビットコインにとってのマイルストーンのみにとどまらない。ウォール街にとっても、大きな一歩だった。
ビットコインにウォール街は必要ない。確かに、資金が入ってきても損はないが、ビットコインは機関投資家からの関心がなくてもうまくやっていけるだろう。
ビットコインを欲しがっているのはウォール街だ。ビットコインを不可欠とはしていないが、ビットコインを必要としている。これほど大きなメインストリームによる承認はない。
発行者も管轄する国や地域域も存在しない、他の多くの「オルタナティブ資産」も、ウォール街に支えられている。例えば、金(ゴールド)はかつて、一般的に金融領域の片隅にいるとみなされていた「金投資家」向けのニッチな投資だった。
ウォール街が利便性を求める投資家の需要を満たすために金へのエクスポージャーをパッケージ化する方法を考え出した頃には、金は登場から何千年も経過していた。しかし、ビットコインは登場してから、まだ15年しか経っていない。
さらに金は自然の元素であり、私たちが住む惑星を作った銀河の力によって生み出されている。そこには、実施すべきデューデリジェンスはほとんど存在しない。
一方、ビットコインは1人あるいは複数の人間によって作られたが、彼、彼女、または彼らが誰なのか分からないため、コードの修正以外のデューデリジェンスは不可能。ウォール街が、作成者を厳しく精査することなく、人工的な資産を受け入れたことはかつてなかった。
つまり、1月10日はビットコインだけでなく、ウォール街にとっても大きな1日となった。大きな影響力を持つ信頼できる金融機関が、メインストリームの顧客層に「反逆的」な資産を紹介するためにリソースと評判を投資してきた。
規制当局からの圧力にもかかわらず、自主的にそうしてきたのは、独自の調査を行い、ビットコインが顧客にユニークな分散投資の機会を提供することを理解しているからだ。
このような承認は、公的権力の中枢の外で行われた。金融業界の役員室で起きた。ある意味、ビットコインはウォール街にパワーを取り戻し、顧客の需要を満たすという企業の特権と、自らの資金の使い道を選ぶという投資家の権利を再確認した。
ビットコインは、ウォール街が非論理的な規制当局の偏見によるチャンスの制限との戦いに勝利することを後押しした。そしてウォール街は、大方が想定しているほど金融に関する考え方が硬直的ではないことを示した。
1月10日はビットコインにとって大勝利だった。ウォール街にとっても大きな勝利だった。おそらくさらに重要なのは、これら2つのマイルストーンだったこと以上に、投資家にとって大きな勝利だったことだ。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin ETFs and Wall Street: A Double Milestone