ソラナがイーサを抜いて2位に浮上──その理由と背景【マネックスクリプトバンク 格付けレポート】

昇り龍のようなビットコイン価格の上昇から始まった2024年。米SECによるビットコイン現物ETFの承認にあたり、相場は年初から激しく動いている。そんな暗号資産の春の幕開けとなっている2024年、最初の格付けの更新を1月10日に行った。その結果を見ていこう。

格付け結果概観

まずは全体感からだ。1位はやはりビットコイン【BTC】で857点だった。そして今回の注目ポイントでも述べるが、ソラナ【SOL】が不動の二番手であったイーサリアム【ETH】を抜いて698点で第2位に浮上。カルダノ【ADA】やアバランチ【AVAX】も着実に得点を増やし、それぞれ6位、7位へと躍進。一方、前回6位だったリップル【XRP】は順位を落として8位となった。またトップ10の中ではトロン【TRX】が唯一ランク外となり14位に。代わって、バイナンスコイン【BNB】が12位から10位へと順位を上げた。

前回トップ10に入った銘柄の多くは昨年末にかけて価格が下落。ビットコインETFの一連の盛り上がりで相場全体が上向いたが、2023年12月格付け基準日を上回った銘柄は少なく、 同格付け基準日比で価格がプラスになったのはBTC、ETH、SOLの3銘柄のみだった。

2024年1月10日付マーケットパフォーマンス格付け※1000点満点:マネックスクリプトバンク作成

投機リスク

しかし、格付けの総合評価としては多くの銘柄が漸増している。総合得点が増加したのは上位10銘柄中5銘柄。ライトコイン【LTC】とTRXの2銘柄がマイナスとなったが、変動はわずかであった。この大きな要因としては投機リスクの評価が全体としてプラスになったことが挙げられる。投機リスクにはボラティリティやシャープレシオ、ROIなどの項目が考慮されているが、これらの項目で得点が上がった全48銘柄中27銘柄と50%を超えていた。これは相場全体の上昇による部分も大きいが、項目別で見ると特にオプティミズム【OP】やインジェクティブ【INJ】はそれぞれ投機リスクの項目で、+170点、 +180点と他の銘柄の上げ幅に比べても高い点数を積み増した。この2銘柄に関しては流動性の観点でも得点を上げ、得点上昇率ではダントツのトップ2となった。OPとINJは前回の格付け基準日からそれぞれ70%から100%と大きく価格が高騰しており、これだけの大きな上昇が、本格付けにおいても高く評価されたと言える。

流動性

流動性では以下でも言及するSOL、そしてアスター【ASTR】やAVAXが最も得点をあげた3銘柄となった。SOLとAVAXは昨年12月に入ってミームコインブームが到来。SOLでは犬をテーマにしたドッグウィファット【WIF】とボンク【BONK】の2銘柄が、AVAXでは鶏がテーマとなっているコック・イヌ【COQ】がブームを牽引。先月比でネットワーク取引量が2倍以上になりアクティブウォレットや新規ユーザーが増加したことが、流動性評価の向上に大きく貢献したと考えられる。

一方、ASTRに関しては韓国最大手の暗号資産取引所であるUpbitに上場したことが大きな理由として挙げられる。上場後、一時は価格が2倍になる場面もあった。昨年9月には同じく韓国のbithumbにも上場するなど、韓国での事業拡大を行っており、同国内でASTRへの関心が高まっていることが伺える。

このような要因により、SOLは前回4位から2位へ、AVAXは9位から7位へ、ASTRは36位から27位へと総合順位を上げた。ちなみに今回の記事では20位までのランキング表しか掲載していないが、ASTRのような注目銘柄は21位以降にも多く存在している。是非、全48銘柄分のランキングが掲載された完全版を弊社サイトからチェックしていただきたい。

集中リスク

集中リスクの項目で最高得点を得たのはBTC、SOL、LTC、AVAXの4銘柄だった。これらを含む48銘柄中41銘柄で集中リスクの得点の先月からの増減はなかった。集中リスクはトークンが特定のウォレットに集中しているか否かを評価しているため、長期保有しているクジラが大きな額を動かすということがない限りは大きく変動しない。裏を返せば集中リスクの評価が大きく動いた時は要注意ということである。

そんな中で100点以上得点が減少した銘柄が二つある。ファントム【FTM】とジリカ【ZIL】だ。これらの銘柄はトークン保有者の集中が大きく進んでおり、大量保有しているウォレットの動向に十分注意されたい。一方で、得点が増加したのはメイカー【MKR】とアーベ【AAVE】のみだった。この2銘柄は保有者の分散度がさらに高まっているようだ。ちなみに、集中リスクで高評価だった上位10銘柄の得点の比率で各銘柄に投資を行っていた場合、3%程度のプラスとなっていると試算できた。全体的に前回基準日対比で価格が下落した銘柄が多い中で、このような結果になったことはブロックチェーンの本質である分散の重要性を示唆していると言えるのではないだろうか。なお、FTM、ZIL、AAVEは21位以下のため本記事上でのランキングに掲載はない。

注目ポイント:ソラナがイーサを抜いて2位に!その背景は?

今回、最も格付けの中でも目を引いたのは不動の2位のポジションを持っていたイーサリアムをソラナが抜いたことだろう。本格付は基本的に長期的な視点で評価を行っているため、短期的なブームで大きく得点がブレることは少なく、これは特に元々上位に位置している銘柄で顕著だ。それにもかからわず、点数を一気にあげイーサリアムを抜いたというのは、それほどにこの1カ月間でソラナのリターン期待値やユーティリティの高まりが大きくなったことを表している。

出所:Messari

特にこの1カ月の高騰は急激なものではあったが、チャートを見てみると昨年10月の中住ごろから順調に伸びていることがわかる。先述したミームコインの影響はかなり大きいだろう。特にBONKがこのソラナエコシステム全体の盛り上がりを牽引した部分は大きく、SOLトークンだけでなく、ソラナの主要開発元であるSolana Labsが手がけるweb3スマートフォン「Saga」の中古価格も高騰。12月16日にはソラナモバイル公式XアカウントがSagaが完売したと発表し、話題となった。Sagaが売れた背景にはやはりBONKの存在があり、Sagaユーザー限定のBONKエアドロップ目当ての購入者が続出したようだ。

2022年のFTXショックでかなり減速したソラナだったが、2023年は新製品の発売ペースの加速、オンチェーン流動性の上昇、開発者向けツールの利用可能性の広がりなどがミームコインのブームと重なり、年末に一気に爆発したように思われる。本格付でも2位となったソラナに2024年は大きな期待が持てそうである。

今年の展望

今回の格付けは暗号資産の春の幕開けとともに始まった2024年を占うようなものだったように感じられる。総合評価もさることながら、各項目ごとの評価の変動に注目すると今年の注目銘柄が見えてきた。特に先述したSOL、OP、INJ、ASTRなどには今年前半、格付け評価がどのように遷移するか目が離せない。

長期的な視点での格付けであるため、格付け開始1カ月ではまだまだ格付けの真価が発揮されたとは言えないが、この一年をかけて格付け結果の評価と改善を進め、各プロジェクトのマーケットパフォーマンス評価が妥当であるとユーザーの方に納得いただけるようブラッシュアップしていく所存である。ブル相場の2024年は、ビットコインに集中した2023年とは違い、アルトコインの売買も盛んに行われる年になると思われる。相場やニュースと合わせて格付けの方もチェックいただければ幸甚である。

|編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:マネックスクリプトバンク