昨年暗号資産(仮想通貨)市場にとって主なプラスの材料となった現物ビットコインETF(上場投資信託)の発売は、2024年には反転して投資家を失望させる可能性がある。JPモルガン(JPMorgan)が22日の調査レポートで指摘し、米暗号資産取引大手コインベース(Coinbase)の株式の格付けをアンダーウェイトに引き下げた。
JPモルガンは格付けを中立からアンダーウェイトに引き下げ、目標株価は80ドル(約1万1600円、1ドル145円換算)に据え置いた。コインベースの株価はプレマーケットの取引で4.1%下落し、122.90ドルとなった。JPモルガンは、株価は昨年390%上昇していたが、コインベースが多くの重要な取り組みで前進しているにもかかわらず、2024年はより困難に年なる可能性があると述べた。
ビットコインETFで失望する可能性
ケネス・ワーシントン(Kenneth Worthington)氏が率いるアナリストらは、「我々はコインベースが暗号資産エコシステムにおけるアメリカの支配的な取引所であり、世界的な暗号資産の取引と投資のリーダーであると引き続き見ているが、エコシステムを冬から脱却させたビットコインETFの材料は市場参加者を失望させるだろうと考えている」と述べた。
先月米証券取引委員会(SEC)がビットコイン現物ETFを承認したことは、暗号資産の新時代の前触れになり、主流マネーがこの分野に流入すると期待されていた。現物ETFの発売により、デジタル資産の所有を禁止されていた投資家が、原資産を自ら所有することなくこのセクターにアクセスできるようになった。
レポートは、「我々が懸念しているのは、ビットコインETFに対するこれほどの熱意と、それに続く暗号資産エコシステムへの新たな資金の流れを考えると、ETFの資金の流れに失望があれば、主に2023年下半期、特に10月以降の暗号資産の上昇を牽引してきた熱狂が萎縮してしまう可能性があるということだ」と述べた。
企業にも悪影響
JPモルガンは、ビットコイン価格は4万ドルを下回っており、すでに圧力にさらされていると指摘。コインベースのような企業にとって「暗号資産ETFの熱意はさらに萎縮し、それに伴ってトークン価格の下落、取引高の減少、付随的な収益機会の減少」が起きる可能性があると見ていると指摘した。
レポートでは、コインベースは承認されれば現物イーサリアムETFについても同様のカストディアン、監視、取引の役割を果たすことが期待されるとされている。
ビットコインは現物ETFが承認されて以来下落を続けており、23日には2カ月ぶりの安値を付けた。破綻した暗号資産取引所FTXの破産財団は、グレイスケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)がETFに転換されて以来、10億ドル相当を放出しており、これが原資産であるビットコインへの売り圧力を高めている。
|翻訳・編集:林理南
|画像:Matthew Foulds/Unsplash
|原文:Coinbase Falls After JPMorgan Downgrades Stock to Underweight on Disappointing Bitcoin ETF Catalyst