ビットコインETFの資金獲得競争は、ブラックロック、フィデリティ、およびその他の金融機関の間で熾烈なものになりつつある。
専門家は、新規参入した各社が大きな成長を考えた場合、「以前から存在する競合」を買収することも考えられると指摘した。そう、グレイスケールだ。
グレイスケールは1月10日、グレイスケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)をETFに転換する許可を得た。同時に他の9社は、ビットコインETFを組成する能力を得た。
グレイスケールは大きなリードを持ってスタートした。クローズドエンド型ファンドとして10年間運営されてきたGBTCは、運用資産が300億ドル近くにのぼっていた。一方、新規参入組はゼロからのスタート。投資家がいくつかの理由でGBTCから資金を引き揚げ、新たなETFが資金を集めるにつれて、その差は幾分縮まった。しかし、GBTCの運用資産は220億ドルで続く2社を大きく引き離している。ブラックロックとフィデリティはまだともに14億ドルだ。
追いかけている競合各社はGBTCを再検討するかもしれない。
「グレイスケールが買収される可能性は十分にある。彼らは現状のスタンダードであり、私の父でさえ、以前からその名前を知っている」とBDE Venturesの創業者兼CEO、ブライアン・D・エバンズ(Brian D. Evans)氏は語った。
グレイスケールのコメントはまだ得られていない。
伝統的な金融プレーヤーがビジネスを成長させるために取る戦略の1つは、競合他社を買収することだ。今回、新たに10銘柄のビットコインETFが登場したが、これは金融業界では異例のことだ。
「グレイスケールのような企業の戦略的買収は、価格が納得のいくものであれば、伝統的なETF発行会社にとってはきわめて理にかなったものだ」と語るのはアドバイザリー企業ETF Storeのプレジデント、ネイト・ジェラーチ(Nate Geraci)氏。
「ビットコイン現物ETFは、まだ2週間しか経っていないが、すでに激しい競争になっており、明らかに規模勝負になっている。伝統的なETF発行会社は、適切な暗号資産ネイティブの会社をターゲットにすることで、運用資産を迅速に増加させ、事業運営の専門知識を獲得し、さらに「暗号資産業界での信用」を獲得できる。
暗号資産運用会社の英コインシェアーズ(CoinShares)は最近、米投資会社ヴァルキリー・インベストメンツ(Valkyrie Investments)のETF部門を買収した。同部門は米証券取引委員会(SEC)からビットコインETFを承認を受けた発行会社のうちの1つ。ジェラーチ氏は、このような買収がすぐに増加する可能性があると予測している。
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だがグレイスケールについては、同社を取り巻く複数の不確定要素から、買収の可能性の時期を予測することは難しいかもしれない。
「どこかがグレイスケールを買収することは理論的には可能だ。特に親会社を取り巻く現在の問題を考えれば、おそらく十分に長い時間軸で可能性がある」とブルームバーグ・インテリジェンス(Bloomberg Intelligence)のアナリスト、ジェームズ・セイファート(James Seyffart)氏は述べた。
グレイスケールは、デジタル・カレンシー・グループ(Digital Currency Group:DCG)の子会社。DCG、その子会社のジェネシス(Genesis)、ビジネスパートナーだったジェミニ・トラスト(Gemini Trust)は2023年10月、投資家から10億ドル以上を詐取した疑いでニューヨーク州から提訴された。
またGBTCはETF転換以降、20億ドル超が売却されている。
BDE Venturesのエバンス氏は、DCGの法的トラブルとGBTCの大量の資金流出が買収を早める可能性があると述べた。
「タイミングがいつになるかは、気になるところだ。買収が行われる場合、価格がさらに上昇する前にビットコインを手に入れたいと考えるだろう」
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:グレイスケールのマイケル・ソンネンシャインCEO(Shutterstock/CoinDesk)
|原文:Is Grayscale Takeover Bait Amid Bitcoin ETF Battle?