米証券取引委員会(SEC)がイーサリアムETF(上場投資信託)に乗り気ではないことは驚くことではない。SECは1月24日、ブラックロック(BlackRock)が11月に提出したイーサリアムETF申請についての決定を延期した。
延期は予想通り
SECは延期の理由として「委員会は、規則変更案とそこで提起された問題を検討するための十分な時間を確保するために、規則変更案について措置を講じるためのより長い期間を設定することが適切だと判断した」と述べている。SECは先週、フィデリティのイーサリアムETF申請についての決定を延期した際にもほぼ同じ文言を使用した。
これは、ほとんどの市場アナリストが予想していたことだ。JPモルガンのアナリストは最近のレポートで、SECが5月までにイーサリアムETFを承認する確率を50%以下とした。ブルームバーグのベテランETF専門家ジェームス・セイファート(James Seyffart)氏は、イーサリアム現物ETF申請の決定延期は今後数カ月間、「散発的に起こり続ける」だろうと述べた。
SECのパース(Pierce)委員は、ビットコインETF承認後にゲンスラー委員長が記した厳しい公式声明に触れ、SECは投資家から需要のある商品を遠ざけ、「個人投資家をビットコインを手にするために効率の悪い手段に走らせることになった、不必要だが、重大な結果を伴った長い混乱」の中で、「我々が仕事をする10年間にも及ぶ機会を無駄にした」と述べた。
パース委員は現在、SECとゲンスラー委員長はこの教訓を受け止めており、ビットコインETF申請者に対して行ったように、「ゴールポスト」を移動すること(あらかじめ決まっていた条件などを後になって変更すること)はないだろうと示唆したが、「特定の」暗号資産商品で何が起こるかを予測することには二の足を踏んでいる。
パース委員はCoinageのインタビューで、ETFを市場に出す準備には「多くの労力」が必要であり、「事実と状況」が重要だと指摘している。
進行中の訴訟の影響
ビットコインは、規制当局がコモディティと分類している唯一の暗号資産であり、承認に有利な立場にあった。イーサリアムは「十分に分散化されている」とした以前の規制当局関係者とは異なり、ゲンスラー委員長はイーサリアム、特にステーキングメカニズムに移行した後のイーサリアムについて懸念を表明している。
「イーサリアムを含むプルーフ・オブ・ステーク(PoS)ブロックチェーンのステーキングサービスを提供する暗号資産取引所に対するSECによる訴訟が続いており、少なくともこれらの訴訟が解決されるまでは、イーサリアム現物ETF承認はより困難になる」と、JPモルガンのアナリスト、ニコラオス・パニギルツォグロウ(Nikolaos Panigirtzoglou)氏は述べた。
パニギルツォグロウ氏は一方で、SECが暗号資産取引所のクラーケン(Kraken)、コインべース(Coinbase)、バイナンス(Binance)に対して証券取引法違反の疑いで起こしている訴訟の中ではイーサリアムについて直接言及していないことから、SECがイーサリアムもコモディティと分類する可能性があるとも指摘している。
さらに、もしSECがイーサリアムETFをめぐって争うことになれば、イーサリアムの管轄権を主張するライバル規制機関の商品先物取引委員会(CFTC)と争うことになるかもしれない。
これらを総合すると、イーサリアムETFの登場は不可避だが、まだ多くのハードルが待ち受けていると言えそうだ。
最終的には吉と出るか
SECが決定を遅らせたことで、アメリカの消費者は時価総額第2位の暗号資産へのエクスポージャーを得るための、安全で税制優遇された方法へのアクセスを妨げられているが、最終的にこれはイーサリアムに有利に働くかもしれない。
パース委員は、ビットコインETFに異議を唱えることで、SECは間接的にビットコインETFをめぐる「人為的な熱狂」を作り出し、需要を誘導したと繰り返し述べている。
「議会は私たちに、特定の投資が国民にとって正しいかどうかを指示する権限を与えていない」とパース委員は語り、「しかし我々は、行政手続きを乱用して、自分たちが好まない投資を市民から遠ざけてきた」と述べた。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:ゲーリー・ゲンスラーSEC委員長(Jesse Hamilton/CoinDesk、加工済み)
|原文:ETH ETFs Are Inevitable — But When?