ほぼあらゆる指標において、ビットコイン現物ETFは素晴らしいスタートを切った。しかし、待望のETFの市場デビューは、ビットコイン(BTC)を下落させた。米証券取引委員会(SEC)がETFを承認した1月10日以降、当記事執筆時点でビットコインは約15%下落している。
数百万人の新規ビットコイン投資家と数十億ドルの資金を呼び込む可能性があり、最近の暗号資産史上、最も強気イベントと見なされていたものが、実際には少なくとも一時的にはビットコインを冷え込ませた可能性がある。
主な原因は、クローズドエンド型信託からETFに移行し、投資家がようやく資金を引き出せるようになったグレイスケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)から数十億ドルもの資金が引き出されたことだ。
GBTCから、30億ドル(約4440億円、1ドル148円換算)以上が引き出されたが、その一部はGBTCの1.5%よりもはるかに低い手数料を設定した他のビットコインETFに流れている。
弱気な見解
ソーシャルメディア上では、著名なベンチャーキャピタリストのクリス・バーニスケ(Chris Burniske)氏が、ビットコインはまだ底を打っていないと主張し、2万ドルという低い価格予測を行った。これは、ビットコインが年末までに2万ドルを下回る可能性があると回答した人が3人に1人にのぼった最近のドイツ銀行の調査の結果とも一致する。
ドイツ銀行がアメリカ、イギリス、欧州で実施した調査の2000人の回答者のうち、ビットコインが年末までに4万ドルから7万5000ドルの間で安定すると回答したのはわずか15%だった。
ビットコインをめぐる、こうしたネガティブ・センチメントは正しいのだろうか?
バーニスケ氏はどうやら短期的にはあまりポジティブな進展はないと見ているようで、他の多くの市場関係者がビットコインの上昇を期待している半減期(4月予定)にも触れていない。
バーニスケ氏は「新プロダクトのイノベーションは近づいているが、まだそこまで到達していない……状況はまだ限定的なものにとどまっているに思う」と記し、「不安定な」マクロ経済要因がビットコインを圧迫し続ける可能性が高いと付け加えた。
何が起こるのかを正確に言い当てることは難しいように、ビットコインに不利に働く、多くの長期的な逆風を見つけることもまた難しい。規制の面では、バイナンス(Binance)が司法省と和解し、FTXの問題も一段落しており、業界にとって最悪の事態は去ったように思える。
また、GBTCからの継続的な資金流出が最近の相場下落の主な原因であることが事実ならば、それもいずれ収束する可能性が高い。
例えば、FTXはすでに手持ちのGBTCをすべて売却した。GBTCをディスカウント価格で購入した人は、ETF転換によって、結果的に安価でビットコインを手にしたことになった。JPモルガンは「GBTCの利益確定」は終わった可能性が高いと述べている。
浮き沈みが常
しかし、最近の下落を大きな文脈で捉えると、2013年、キャメロン・ウィンクルボス(Cameron Winklevoss)氏とタイラー・ウィンクルボス(Tyler Winklevoss)氏が提出した最初のビットコインETF申請をSECが却下した日にビットコインは30%近く下落した。
一方、中国人民銀行が暗号資産の禁止を決定し、当時の「ビッグ3」取引所だったフォビ(Huobi)、オーケーコイン(OKCoin)、BTCCを規制したことから2017年の強気相場が始まった。
つまり、ビットコインには常に浮き沈みがある。ビットコインETFは、価格上昇を後押しするという点では期待外れだったが、それでもビットコインの長期的な存続可能性を象徴するものだ。
ビットコインETFは、取引開始からしばらくは記録的な取引高を記録しており、ドイツ銀行の調査によれば、ビットコインETFへの資金流入の大半は個人投資家からで、ビットコインETFがビットコインの普及を促す可能性のあるツールであることを示している。
バーニスケ氏が言った通り、「いつものように、忍耐が味方」だ。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Why Is Everyone Suddenly Bearish About Bitcoin?