ソラナ、「ベータ版」のフリをするのはやめよう

最も急速に成長しているブロックチェーンの1つであるソラナ(Solana)は2月6日早朝、深刻な障害に見舞われた。

エンジニアたちは迅速に対応し、米東部標準時午前6時前に作業を開始し、停止したチェーンを再開するために必要なパッチを適用した。

しかしネットワークが再び動き出したのは、ステーキングされた暗号資産ソラナ(SOL)の80%を管理するバリデーターが一斉にソラナのソースコードの新バージョンにアップデートした午前10時頃だった。

ソラナがダウンしたのは今回が初めてではない。2021年以降、毎年少なくとも1回はブロック生成に深刻な影響を与える大規模なクラッシュが発生しており、一部のメディアによれば、マイナーな事象を含めると、過去2年間で少なくとも11回の障害が発生している。

ソラナのメインネットネットワークはしばしば「ベータ版」で稼働していると言われている。この用語は通常、正式なローンチの前に一部のユーザーグループによってテストされている、完成間近なソフトウェアを指す。

ソラナチームのインシデントレポートには「エコシステム全体のエンジニアが、メインネット・ベータで発生した障害を調査している」と書かれている。

バグを特定し、実環境でのパフォーマンスを評価するための期間であるベータテスト段階からソラナが脱したことを公式に発表したことがないのは事実だが、現時点では、このフレーズはますます言い逃れのように聞こえる。

ソラナの実態

ソラナは完全に機能しているブロックチェーンであり、大規模で献身的なユーザーを抱えている。TVL(預かり資産)で5番目に大きな「DeFi(分散型金融)チェーン」であり、さまざまなオンチェーンアプリに約17億ドル(約2516億円、1ドル148円換算)の資金が委ねられている。

ネイティブトークンであるソラナ(SO0)Lは、時価総額約420億ドル、第5位の規模を誇る。ソラナは最もエキサイティングな開発者コミュニティを誇るブロックチェーンの1つとして頻繁に挙げられている。

ブロックチェーンアーキテクチャに対するソラナの斬新なアプローチ(取引を迅速に処理するために特別な「プルーフ・オブ・ヒストリー」アルゴリズムを使用し、しばしば「モノリシックチェーン」と呼ばれる)には、完全にサービスを提供できるようになるまでに準備する時間が必要だという主張がある。

また、プログラミングの柔軟性を高め、ユーザーエクスペリエンス(UX)を向上させるために、このネットワークには多くのメジャーアップグレードが計画されている。同時に、非営利のソラナ財団を含む開発者コミュニティは、普及を促進するための取り組みやプロジェクトを推進している。

例えば同財団は、通行人にこのテクノロジーを紹介しようと、ニューヨークの中心部に店舗をオープンした。ソラナはまた、独自スマートフォンを手がける唯一のネットワークでもある(廉価版として2機種目を準備中)。

サム・バンクマン-フリード(Sam Bankman-Fried)氏のようなインフルエンサーや有名人によって、プレー・ツー・アーンゲーム「STEPN」をはじめとする数多くのアプリが大々的に宣伝され、拡散した。

イーサリアムとバイナンススマートチェーン以外では、ソラナはユニークな取引コミュニティを発展させたと言える数少ないチェーンであり、多くの素朴なNFTプロジェクトやミームコインが外の世界に波及し、国際的なメディアに取り上げられることもあった。

不誠実

これらはすべて、ソラナとは何か、そして何が開発されようとしているのか、さらに開発責任者であるアナトリー・ヤコヴェンコ(Anatoly Yakovenko)氏のカリスマ性とリーダーシップの証だ。

このプロジェクトは、主要な支援者であるバンクマン-フリード氏の凋落後、不死鳥のように再生したことからもわかるように明らかに永続性がある。

しかし、未完成であると言いながら、積極的に世界に乗り込もうとしていることは、どこか不誠実な感じがする。暗号資産に本当の価値があると心から信じているなら、なおさらだ。そうでなければ、不必要に人々を危険にさらすことになる。

例えば、Solana Mobileのスマートフォン「Saga」の次世代バージョンの予約ページには、「ベータ版」という言葉はどこにもない。その代わりに、1機種目が「ほぼ一夜にして……完売した」というFOMO(機会を逃すことへの恐怖:Fear of Missing Out)を煽るようなコピーがあり(大きな話題になるまでの数カ月を無視しない限り、正確には真実ではない)、「アーリーアダプターになるチャンスを逃さないように」「エコシステムの特典や景品がもらえるチャンスを最大限に生かすように」と伝えている。

SagaのFAQでは、ソラナが実験的なテクノロジーであるという記述はなく、代わりに「何台注文できるか 」といった質問が並んでいる。

また、ソラナがいつ「ベータ」期間を終了するかもほとんど示されていない。実際に稼働しており、他のブロックチェーンと同様にオープンでアクセス可能で、ユーザーがフィードバックを提出したり、バグを見つけたりする必要がないことを考えると、この言葉はもはや実態を表していないと言えるだろう。

イーサリアム、ジーキャッシュ(Zcash)、カルダノ(Cardano)はいずれも、サービスを中断したり、ベータ版に再突入したりすることなく、コアアルゴリズムを入れ替えることに成功した。

だから、何か問題が起きたときにしか出てこない「ベータ版」という言葉は、そろそろ引退させるべきだろう。ソラナが最終的に問題を解決できないと言いたいわけではないし、ダウンは今回が最後になると願いたい。ただし、ミスはしっかりと認めるべきだ。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:ソラナが手掛けるスマートフォン「Saga」(Danny Nelson/CoinDesk)
|原文:Can We All Stop Pretending That Solana Is in Beta?