バイデン大統領、ビットコイン支持を表明したのか?

タイトルの質問に答えよう。ノーだ。バイデン大統領は突然、ビットコイン支持者になったわけではない。

誤解を生んだミーム

しかし、大統領のSNSチームは、X(旧Twitter)に「レーザーアイ」(レーザー光線を目から発する)の大統領の画像を投稿した。レーザーアイは、筋金入りのビットコイナーを表すとされている。

だがバイデン大統領の画像は、ビットコイナーではなく、どうやら民主党の選挙運動家が推進しているミーム「ダーク・ブランドン(Dark Brandon)」を表しているようだ。Mashableは次のように伝えている。

「日曜日に(NFLチームの)チーフスがサンフランシスコ 49ersを破ったことを受けて、大統領はリベラルが再解釈し、2022年以来バイデン大統領をスーパーヒーローとして描くために使っている不気味な画像を投稿した」

「ダーク・ブランドン」というミームの起源は、まさにインターネットらしく、不明瞭で解明は困難だ。2023年にVoxが説明したように、このミームは2021年10月に行われた自動車レース、NASCAR Xfinityシリーズで、NBCのリポーター、ケリ・スタバスト(Kelli Stavast)氏が優勝ドライバーのブランドン・ブラウン(Brandon Brown)氏との実況インタビューで、観客の「ジョー・バイデンをやっつけろ!(F**k Joe Biden!)」という声を「行け、ブランドン!(Let’s go Brandon!)」と聞き間違えたことに端を発しているようだ。

目から光線を発し、腕を交差させ、歯をキラキラと輝かせたバイデン大統領は、特にビットコインが好調であることも相まって、世界を混乱させた。ビットコインは現在、2021年12月以来の高値で取引されている。

しかし、バイデン大統領がビットコイナーに転身したわけではない。Mashableによると、このミームは、バイデン政権が億万長者のスーパースター、テイラー・スウィフトからの支持を確保するためにスーパーボウルを操作するという右派の陰謀論に対するものだという。

手短に説明すると、2020年にバイデン候補(当時)への支持を表明したスウィフトは最近、カンザスシティ・チーフスのタイトエンド、トラビス・ケルシー(Travis Kelce)選手と交際を始めた。彼は新型コロナウイルス感染拡大の際、ファンにワクチン接種を呼びかけた。こうしたことから、2人はどちらも右派からは民主党支持と見られている。

陰謀論

テイラー・スウィフトは、史上最高の興行収入を記録したことで知られている大ヒットツアー『Eras』の後、ますますその名声を高めている。

彼女の名声をさらに高める数少ない方法は、彼女のボーイフレンドが、スーパーボウルの優勝チームの一員となることだろう。

実際、チーフスは延長戦の文字通り最後の数秒で49ersを突き放し、20年ぶりにスーパーボウルを連覇したチームとなった。

「我々の思惑通りだ」と、ダーク・バイデンはソーシャルメディアに投稿し、奇想天外な陰謀論を一笑に付した。

ビットコインを支持するレーザーアイのジョークが意味を持たなくなってから約2年、アメリカ大統領がレーザーアイを投稿したことに興奮しすぎたビットコイナーに公平を期して言うならば、バイデン大統領のソーシャルメディアチームによる「ミーム」を読み解くことは必ずしも簡単ではなかった。しかし、見極められるべき人たちがいたとすれば、それは暗号資産マニアだったはずだ。

結局のところ、テイラー・スウィフトとケルシー選手がバイデン大統領の利益のためだけに偽装交際しているという考え方の最大の支持者は、暗号資産支持者で、大統領候補のひとりだったヴィヴェック・ラマスワミ(Vivek Ramaswamy)氏だった。同氏は先月、Xにこう書いている。

「人為的、文化的に支持されたカップルからこの秋、大統領候補への大きな支持があるだろうか」

バイデン大統領の「ミーム」(民主党の内部関係者しか理解できないなら、ミームと言えるのだろうか?)への反応のほとんどすべては、暗号資産/金融インフルエンサーが「何が起きているのか?」と尋ねるものや、「最初はジョー・バイデン(パロディ)だと思った」と述べるものだった。

我々はすぐに忘れてしまうようだ。バイデン大統領のXアカウントは何度かダーク・ブランドンを投稿しており、毎回、同じ人たちが同じように反応している。

大統領チームの思惑は?

バイデン大統領のSNSチームは、なぜ暗号資産マニアの行動をコピーしているのか不思議に思わざるを得ない。

バイデン大統領は暗号資産に対する取り組みを調整するよう政府全体に呼びかけたことがあるが、潜在的に大きな有権者層と再びつながろうとしているのだろうか? いずれにせよ同氏を支持しないであろう「シングルイシュー有権者(1つの争点を重視する有権者)」を釣ろうとしているのだろうか?

ソーシャルメディアは有権者とつながるための強力なツールだが、裏目に出ることもある。フロリダ州知事のロン・デサンティス(Ron DeSantis)氏は、インターネットの影響を受けた文化戦争問題を中心に大統領選挙キャンペーンを展開した失敗に終わった。

選挙政治において何を投稿するかは、しばしばどのように投稿するかの問題であり、「流行に敏感」であるかのように見せるために自身の品位を落とすか、より宣伝的な表現に選ぶかの問題だ。

ダーク・ブランドンのレーザーアイはある意味、文化がどのようにオンラインで創造されるかを示している。多くの場合、関心を共有する人々によるボトムアップ現象だ(ビットコインは、皆が十分に信じれば10万ドルを達成できるという考えのように)。

この「レーザーアイ」というミームは、ビットコイン支持を示すために資産運用大手フランクリン・テンプルトンのような企業だけでなく、選挙で選ばれた政治家も使っているほど有名であることを考えると、ありそうもない偶然の一致のように思える。しかし、現代のアメリカ政治に関しては最近、あり得ないことなど何もないようだ。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:バイデン米大統領(X)
|原文:Did President Biden Just Endorse Bitcoin?