暗号資産(仮想通貨)は復活したのか? ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)が、暗号資産市場が高騰していた2021年以来の価格で取引されているというニュースが隔週で出ている状況だ。価格上昇がすぐに止まりそうな兆候はなく、今回は状況が違うように思える。
パンデミック時代の強気相場は、大衆の熱狂、興奮と楽しさの時期だった。イーロン・マスク氏から私の母親まで、誰もが暗号資産について話をしているかのようだった。有名人はミームコインを宣伝し、NFTを購入した。暗号資産は文化的な試金石となった。おそらく、パンデミック後に世界が再び動き出し、「雰囲気」に支配された奇妙な時代が始まるなかで、経済が揺れ動いていることを最もよく表すものが暗号資産だった。
それに比べると、最近の上昇相場は静かなものだ。確かに、数人の友人がビットコインを買うべきかどうか尋ねてきた。個人投資家の関心の高まりを示す指標と言える。しかし、全体的に見れば、暗号資産価格が上昇するなか、注目している人はあまりいないようだ。
もちろん、テラ(Terra)の暴落に始まり、FTXの破綻に至るまで、2022年はプロトコルの崩壊や企業の倒産が相次ぎ、暗号資産は話題にしづらいものになった。そのような失望感のなかで、かつてのような熱意と明るさを取り戻すことは難しい。
暗号資産市場の本格的な回復が始まったことを示す指標は、価格動向以外にも数多くある。イーサリアムネットワークへの主要アクセス手段であるメタマスク(MetaMask)は、月間アクティブユーザー数が過去最高(3000万人)に近づいている。アメリカ最大の暗号資産取引所コインベース(Coinbase)は、取引高の回復に伴い、2年ぶりの四半期黒字を計上した。また、Google Trendsによると、ビットコインの検索関心は(少しだが)回復している。
高まる注目の要因
関心の高まりをもたらしている可能性のある要因は数多い。ビットコイン半減期はおよそ4年ごとに起こるイベントで、常にメディアの人気トピックとなっている。ミームコインやトークンのエアドロップは、暗号資産業界が人々に無料でお金を配っているという考えを助長している。
ブラックロック(BlackRock)のCEO、ラリー・フィンク(Larry Fink)氏のような人物や、香港やアラブ首長国連邦のような政府機関までもが推奨することで、暗号資産は技術的に重要だという意識が醸成されている。
最も注目すべきは、10本以上のビットコインETFのローンチが予想以上にうまくいったことだ。ブラックロックのビットコインETFはすでに、全ETFの中で今年第5位の資金流入を記録し、ビットコインETF全体には数十億の資金が流入している。
さらに、法律に関して言えば、暗号資産にとって最悪の事態は終わったのではないかとの見方が強まっている。大きな懸案事項が多かれ少なかれ解決し、暗号資産にとって有利な結果が相次いだ。
司法省はバイナンス(Binance)と和解し、厳しい罰則を課したが、世界最大の取引所バイナンスは、この罰則を耐えることができるようだ。米証券取引委員会(SEC)の「執行による規制」という暗号資産業界に敵対的な取り組みは、リップル(Ripple)社が法廷闘争に勝利し、また同委員会が法廷での他の困難に直面していることで打撃を受けた。
そして、FTXの破産手続きは、すべての元ユーザーへの完全な返金が見込まれ、収束に向かっている。
アメリカを含む各国政府は、暗号資産の発展を妨げることなく消費者を保護する政策を策定するため、以前よりも業界と協力したいと考えるようになっている。
欧州連合(EU)は重要な規制「MiCA」を可決し、イギリス、香港、ナイジェリアなどは暗号資産の世界的なハブになろうとしている。
今回は違う
ジャーナリストが未来を予測することは、特に暗号資産のように変動が激しく、変化の早い業界では、愚かであるばかりか、同じくらい危険だ。
ビットコインの上昇が続く保証はないし、値動きが逆転する可能性は常にある。しかし、暗号資産が節目にあるとの見方が広がっていることは確かだ。
2021年以降、さまざまなことが変化し、その多くが良い方向に向かっている。話題性が高まれば、暗号資産には今度こそ、もっとうまくやるチャンスが生まれる。前回、暗号資産の悪い雰囲気を決定づけた、恥知らずな有名人による推奨、無謀な投機、純粋な詐欺、再担保化と裏取引を捨て去り、より実質的で長続きするものの開発に集中しよう。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Does Anyone Else Feel the Crypto Vibe Shift?