ビットコイナーは、米エネルギー省(DOE)の統計部門であるエネルギー情報局(EIA)がマイニング業界にデータ収集を求めた「緊急命令」を撤回させる働きかけで、大きな勝利を収めた。
法廷での勝利
法廷文書によると、EIAは何百ものマイナーに送った強制調査を取り下げ、法律で義務付けられている適切な通知とコメント期間の設定を選択しようとしている。EIAは2月上旬に突然、命令を出し、データ要求は国家的重要事項だとしていた。
今回の動きは、テキサス・ブロックチェーン協議会(Texas Blockchain Council)、ライオット・プラットフォームズ(Riot Platforms)、ニュー・シビル・リバティーズ・アライアンス(New Civil Liberties Alliance)、デジタル商工会議所(Chamber of Digital Commerce)がDOEを相手取って起こした訴訟によるもので、原告側は2月、政府のデータ収集を制限する一時的な差し止め命令を勝ち取っていた。
裁判所は、当初の緊急命令の正当性が「不十分」だった可能性が高いとしている。
暗号資産(仮想通貨)業界は当初から動員をかけ、法案の正当性が疑わしいと訴えていた。不当な規制当局からの干渉の脅威を目の当たりにして、業界関係者が反撃を決意した珍しい瞬間だった。
例えば、テキサス・ブロックチェーン協議会のリー・ブラッチャー(Lee Bratcher)氏は、データ要求は容易に政治化され、ブロックチェーン業界がアメリカの送電網とどのように相互作用しているかについて、不完全なストーリーを煽る可能性があると指摘した。
ニュー・シビル・リバティーズ・アライアンスは、EIAの命令は「公共の害」を防ぎたいという願望よりも、むしろ「政治的圧力」に起因している可能性が高いと述べた。
EIAは現在、人々の憲法上の権利を踏みにじらない手段で、真に有用となり得るデータの取得を進めることになる。法廷文書によれば、EIAはその提案について連邦官報に公告し、すでに収集された情報を破棄する予定だ。
調査要請の問題点
DOEに勤務していたブラッチャー氏によると、当初の調査依頼には、政府がどのように機密性の高い企業情報を保護するのか、また、この種のデータ収集では標準的な慣行である通り、公表された場合に匿名化されるのかどうかについての情報が欠けていたという。
さらに重要なのは、ライオットや他の原告団が訴訟で主張していたように、暗号資産マイナーは「EIAに機密性の高い専有情報を開示させられることで、即座に取り返しがつかない損害を被る」ことだ。この調査では、マイナーが回答しなかった場合、刑事罰が科される恐れがあった。
ブラッチャー氏は、この情報収集は最終的に、ますます重要性を増している業界に光を当てる可能性があると述べた。しかしブラッチャー氏は、EIAが業界と協力して、より正確で有用な調査を設計することを望んでいる。
例えば、マイナーがどの事業者から、どれだけの電力を消費しているかだけでなく、そのフレキシブルな電力消費が送電網にどのようなメリットをもたらし、より環境に優しいエネルギー生産にどのようなインセンティブを与えるかについても質問するべきだ。
テキサス州では、マイナーは州の送電網運営者と直接連携し、数百万人が停電に見舞われた2021年の寒波のときのように、送電網に負荷がかかる時間帯に電源を落としている。
EIAの緊急命令の正当性を裏付ける根拠が、マイニングがいかに「公共の害」につながるかを評価するためだったというのは皮肉な話だ。
この調査は何らかの形で復活する可能性が高いが、この瞬間は、当局の標的となっているように思える業界にとって真の勝利と言える。
米証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長、ジャネット・イエレン財務長官、エリザベス・ウォーレン上院議員といった人物は、暗号資産を常に詐欺と同一視しているだけでなく、間違いなく、暗号資産を抹殺しようと積極的に取り組んでいる。
ウォーレン議員がマイニング業界の取り締まりを求め、ニューヨークを含む各州がその発展を遅らせることを意図した政策を可決していることは注目に値する。リップル(Ripple)対SECのケースのように、暗号資産業界が反撃に出るとき、裁判所で公正な審理が行われれば、ときには勝利することもできる。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:JSquish/Wikimedia Commons
|原文:Bitcoin Miners Show Muscle Pushing Back Against Warrantless ‘Emergency’ Order