ゲームのネクソン、アバランチを採用──ブロックチェーン版「メイプルストーリー N」を2024年中に配信へ

ブロックチェーン技術の導入を検討してきた大手ゲーム開発のネクソン(NEXON)が、アバランチ(Avalanche)を採用する。

ネクソンは、大ヒットした大規模マルチプレイヤー・ロールプレイングゲーム(MMORPG)『メイプルストーリー(MapleStory)』のブロックチェーン版を、アバランチ・ブロックチェーンを基盤に開発し、『メイプルストーリーN(MapleStory N)』の2024年中の配信を目指す。

メイプルストーリーは2003年に誕生したMMORPGで、過去20年間の累計登録者数は1億9000万人を超えるヒット作品。プレイヤーはさまざまなロケーションで旅をし、他のプレイヤーと共に敵と戦うゲームで、ネクソンの収益基盤を支えるオンラインPCゲーム部門の担い手の1つだ。

ネクソンは、メイプルストーリーとブロックチェーンをかけ合わせたプロジェクトを進めるため、「メイプルストーリーユニバース(MapleStory Universe)」と名づけたエコシステムを構築している。メイプルストーリーNは、同エコシステムで開発される初のRPGとなる。

ゲーム内で利用できるアイテムはNFT(非代替性トークン)として取引されることが予想されるが、11日の発表では、メイプルストーリーユニバースを通じて、ユーザー生成コンテンツ(UGC)を活用した新しい仕組みをつくる。例えば、ユーザーがメイプルストーリーの世界を生成する活動を行えば、それに対する報酬を受け取ることが可能となる。

金融、ゲーム業界で利用ケースを増やすアバランチ

(写真:CoinDesk)

アバランチは、世界の金融取引にも対応する高速の処理速度を有するオープンソースプラットフォームを目指し、開発が進められてきたブロックチェーンで、2023年1月にはAWS(アマゾンウェブサービス)がアバランチとの提携を発表した。

世界の金融界では、銀行や資産運用会社などがブロックチェーンを基盤とした金融インフラを試験的に整備する動きを強めているなか、米銀大手のシティグループやJPモルガン・チェース、資産運用の米ウィズダムツリーなどはアバランチを概念実証プロジェクトに採用している。

ネクソンは東京・六本木に本社を置くゲーム開発会社で、世界で約8200人の社員を有しているが、約6700人の人材は韓国を拠点に働いている。2023年(1月~12月)の売上収益(売上高)は約4230億円で、国・地域別に見ると、韓国と中国でそれぞれ2550億円と1000億円を稼ぎ、両市場をあわせると全体の8割以上を占める。

プラットフォーム別では、PCオンラインゲームが3000億円の収益を計上し、モバイルが1200億円。2003年に配信を開始した「メイプルストーリー」シリーズの累計総売上高は50億ドルを超える。ネクソンの主力ゲームタイトルのもう1つは、アクションRPGの「アラド戦記」で、英語圏タイトルは「Dungeon Fighter Online」、世界登録ユーザー数は約8億5000万人で、累計総売上は約220億ドル。

「(アバランチの開発元の)Ava Labsとのパートナーシップを通じて、安定したブロックチェーンのエコシステムを作り上げることができ、メイプルストーリーNと他の分散型アプリケーション(dApps)をつなぐサービス展開を安全に行うことが可能となる」と、メイプルストーリーユニバースでパートナーシップ・リードを務めるアンジェラ・サン(Angela Son)氏はコメントした。

メイプルストーリーにブロックチェーン技術を実装する取り組みを巡って、ネクソンは昨年3月にポリゴンブロックチェーンを開発するPolygon Labsとパートナーシップを締結していたが、同プロジェクトは今後、アバランチを基盤に開発が進められる。ネクソンは、ポリゴンからアバランチへの移行理由を明らかにしていない。

|文:CoinDesk JAPAN編集部
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※編集部より:一部数字を最新のものにアップデートし、更新しました。