ビットコインETFの影響と、次の半減期を控えた市場ダイナミクス

主にビットコイン(BTC)が主導した暗号資産(仮想通貨)市場の上昇を経験した今、1月のアメリカにおけるビットコインETFの承認こそが形勢を一転させたと言って良いだろう。

1月10日以降、暗号資産の時価総額は1兆5000億ドル(約225兆円、1ドル150円換算)から2兆4000億ドルへと60%急増した。とはいえ、暗号資産はまだ始まったばかりのニッチな資産クラスであり、その規模は金のほんのわずか(10%)、マイクロソフト(3兆1000億ドル)よりも小さい。

多くの否定派は、ETF承認は典型的な「噂で買い、事実で売る」状況になるだろうと予測していた。しかし、価格が大幅に上昇したことを考えると、実際に起こったことは予想からはかけ離れたものだったようだ。

今、切実な疑問は、次は何か? だ。

ETFと需給不均衡

アメリカのビットコインETFだけで約190億ドルの資金流入があった。

ブラックロックのビットコインETF「IBIT」は、ビットコインETFのみならず、全ETFのなかで運用資産100億ドルに最も早く到達したETFとなった。IBITはわずか2カ月で、2020年以降のマイクロストラテジー(Microstrategy)を上回るビットコインを集めた。

こうした大量の資金流入により需給バランスが崩れ、ビットコイン価格が上昇している。アメリカのビットコインETFだけで、流通する全ビットコインの約4%を占めている。これに加えて、ビットコインの全供給量の約29%が5年以上アクセスされていないか、永遠にアクセスが失われているかもしれないという事実があり、ビットコインETFは今や極めて大きな需要源となっている。

4月にはビットコイン半減期も予定されており、需給関係はさらに悪化する可能性が高い。伝統的な世界で事前に発表された企業の取り組みのように、半減期はすでに織り込み済みで、価格にあまり影響を与えないはずだ。しかし、過去の事例が参考になるとすれば、半減期は価格上昇の心理的触媒として作用し、ビットコインだけでなくアルトコイン市場も上昇に転じさせてきた。

現実的なユースケース

ビットコインETFへの資金流入の大部分は機関投資家からのもので、個人投資家はビットコインを直接購入することを好んでいる。そしてこれが、上昇がまだ続く可能性がある大きな理由かもしれない。

個人投資家とは異なり、機関投資家は投資に長期的視点を持つ傾向があり、市場が調整(下落)する際に保有するETFを売却する可能性は低い。機関投資家は、ときおりシステマティックにリバランスを行うものの、個人投資家に比べて日々の変動の影響を受けにくい。

その意味で、機関投資家の参入は全体としてビットコインETFのボラティリティを低下させ、伝統的金融システムにより深く組み込む可能性がある。それでもこれは、ゆっくりと、段階的なプロセスとなり、ビットコインETFは確かに1つの触媒ではあるが、資産クラス全体がメインストリームになるには、それだけでは不十分だ。

暗号資産エコシステムには、決済、マーケットメイキング、貸し借り、ゲーム、メタバース、物流、アート、著作権行使など、さまざまなユースケースがあるが、そのほとんどはまだ初期段階か、ニッチなターゲットに焦点を当てているように思える。

暗号資産がメインストリームになるためには、より現実的なユースケースが登場し、技術的に高度な問題やテクノロジーに精通したユーザーに影響を与えるだけでなく、我々の日常生活に具体的なイノベーションを提供する必要がある。

サイクルのどこにいるのか? どうすれば参加できるのか?

Googleトレンドを見ると「暗号資産」や「ビットコイン」といった単語の検索結果はここ数週間で増加しているが、2021年の前回の強気相場のピーク時からはほど遠い。

さらに、最近の上昇は主にビットコインとイーサリアム(ETH)が主導している。アルトコインはまだ晴れ舞台に上がっておらず、そのほとんどが2021年11月の最高値の数分の1で取引されている。

ビットコインのドミナンスはまだ50%前後で推移している。一般的に、アルトコインはサイクルの後期にビットコインとイーサリアムをアウトパフォームする傾向がある。良好なマクロ経済状況を考えると、この上昇にはまだ余地がありそうだ。

図1 – ビットコインのドミナンスと半減期

リスクとリターンの観点からは、暗号資産はアーリーステージのVC投資と比較できるかもしれない。世界には9000以上の暗号資産が存在することを考えると、その中で我々の日常生活に大きな経済的影響を与え、長期的な投資が正当化されると考えられるのは比較的少数だろう。

以下の図2は、2019年6月のトップ100トークンのうち、いくつが長期にわたって上位を維持しているかを示したもの。ここには、厳しい現実が映し出されている。

同じように、ドットコムバブルも勝者を選ぶことがいかに難しいかを示した。90年代後半、アマゾンとグーグルが業界内で支配的な企業になると誰が考えただろうか?

図2 – 2019年6月のトップ100コインのうち、いくつのコインが長期にわたってトップ100にとどまったか?

過度な集中投資を避け、近視眼的なトレンドを追うことを控える1つの方法は、広範に分散されたバイ・アンド・ホールド・インデックスに長期投資することである。

インデックス・エンジニアリングにかなりの時間を費やしてきた我々は、定量的・定性的な組入基準をミックスすることで市場サイクル全体にわたって最良の結果が得られると感じている。

90年代後半以降、ナスダックをアウトパフォームしたグロース株がまだあまり存在しないように、個人投資家が厳密に設計されたインデックスを長期的にアウトパフォームする世界は想像することは難しい。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Sean Pollock/Unsplash
|原文:What’s Next for Crypto?