- カイコが追跡したデータによると、年率換算したビットコインとイーサリアムの30日間のヒストリカル・ボラティリティのスプレッドは、少なくとも直近1年で最大となった。
- 現物ETFによる資金流入とビットコインブロックチェーンの半減期が差し迫っていることがビットコインのボラティリティをさらに高めているようだ。
時価総額と取引高で最大の暗号資産(仮想通貨)であるビットコイン(BTC)は、他のデジタル資産と比べて比較的安定していると考えられており、トレーダーのポートフォリオを市場全体の荒い値動きから守ってくれるものだ。
しかし、ビットコインは最近イーサリアム(ETH)よりもボラティリティが高くなっている。
年率換算のボラティリティが60%近くに上昇
年率換算したビットコインの30日間のヒストリカル・ボラティリティ(実現ボラティリティ)は先週後半に60%近くまで上昇。イーサリアムを10パーセントポイント近く上回った。パリに拠点を置くカイコ(Kaiko)が追跡したデータによると、このスプレッドは少なくともここ1年では最大のものだ。
米証券取引委員会(SEC)がビットコイン現物ETF(上場投資信託)を承認し、トレーダーがビットコインを所有することなくエクスポージャーを持つことができるようになって以来、数週間でビットコインとイーサリアムのボラティリティのスプレッドはプラスに転じた。
それ以来、トレーダーらは現物ETFの活動に真っ向から注目しており、純流入がビットコインや暗号資産市場全体の上昇方向のボラティリティを生み出している。その一方で、SECが5月までにイーサリアムETFを承認する可能性が低下していることは、イーサリアムトレーダーの意欲を失わせているようだ。
半減期もボラティリティの上昇要因
ビットコインブロックチェーンで今後発生する半減期も、ブロックごとのビットコイン新規発行ペースを50%削減する4年に一度のイベントであり、ビットコインのボラティリティが比較的高くなる要因である可能性がある。
4月21日に予定される半減期で、組み込まれたコードによってマイナーに支払われる1ブロックあたりの報酬が6.25BTCから3.125BTCに減額される。バイトツリー(ByteTree)によれば、この報酬は現在年間260億ドル(約3兆9000億円、1ドル150円換算)に上る。
需要側が変わらないか強化されると仮定すると、半減期には強気になるというのがコンセンサスだ。供給拡大のペースが半減し、需要と供給の不均衡が生じて価格上昇に有利なるためだ。ビットコインは非常に大きな上昇をみせており、2012年11月、2016年7月、2020年5月に起きた過去の半減期では半減期後12~18カ月で史上最高値を更新している。
今回の違いは、ビットコインが半減期の数週間前に前回の強気相場のピークである約6万9000ドル(約1035万円)を超えたことだ。これによって、次の半減期に向けてトレーダーの興奮が高まっている。
「ニュースで売る」反動の可能性
アンバーデータ(Amberdata)のデリバティブ担当ディレクター、グレッグ・マガディーニ(Greg Magadini)氏によると、半減期を前にした強気のポジション構築は、半減期後に「ニュースで売る」反動が起こる可能性を示しているという。
マガディーニ氏は週刊ニュースレターで、「現在のポジション構築が大きく拡大しているため、市場では非常に興味深い『ニュースで売る』半減期サイクルの値動きが起きる可能性がある」とし、「実際に反落があれば、過剰なデルタ1(先物)の未決済建玉が清算され、ボラティリティのリスク・リバーサルがプット寄りに傾き、ベーシス(現物価格と先物価格の差)が崩壊することになるだろう」とコメントした。
マガディーニ氏は、ビットコインのオプション市場も半減期イベントを織り込んでいると指摘。「オプション市場に目を向けると、興味深い構造が見えてくる。4/26までの急激な(インプライド・ボラティリティ)コンタンゴと、4/26の満期日に向けた高いフォワード・ボラティリティのよじれだ。オプション市場も半減期イベントを織り込んでいる」と述べた。
インプライド・ボラティリティは、将来の実現ボラティリティを市場の状況から推測するものだ。通常、複数の期間や満期のインプライド・ボラティリティを図にすると、コンタンゴと呼ばれる上向きの曲線となる。
4月26日の満期日を前に急激なコンタンゴが見られるということは、市場が半減期に向けてビットコインのボラティリティ上昇を予想していることを意味する。フォワードボラティリティから読み取れることも同様だ。
|翻訳・編集:林理南
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|原文:Bitcoin Becomes More Volatile Than Ether as Halving Approaches