ビットコインの未来のシナリオ12選:強気から弱気まで【Future of Bitcoin】

ちょうど3年ほど前、前回の強気サイクルの始まりに、私はビットコイン分野の専門家に取材をし、『The Future of Bitcoin: 12 Scenarios From Bullish to Bearish(ビットコインの未来:強気から弱気までの12のシナリオ)』という記事を書いた。

それ以来、多くのことが変わった。私が取材を始めた頃のビットコイン(BTC)の価格は2万5000ドル前後で、当時は天文学的な高値に思えた。サム・バンクマン-フリード、ビットコインのOrdinals、ChatGPTなどは聞いたことがなかった。誰もビットコインETFを所有していなかった。

ビットコインが4月に4度目の半減期を迎えるにあたり、再び強気から弱気まで、これらのシナリオを刷新する時だ。今回も「未来」を10年後と漠然と定義した。ある程度先なので遊びの余地があり、十分に近いので現実とのつながりがある。

我々の方法論で変わらないことが1つある。それは、我々は皆、想像で発言しており、ビットコインがどうなるかは誰にもわからないという謙虚な認識だ。それが魅力のひとつでもある。

「10年後の最大のユースケースのほとんどは、今の我々には常軌を逸しているように思えるようなものだろう。誰でも編集できる百科事典が、ウィキペディア以前の時代の人々にはクレイジーに聞こえたはずなのと同じように」とブロックチェーン起業家のエリザベス・スターク(Elizabeth Stark)氏は2021年に私に語った。

規制地獄からテレパシーDeFiまで、ビットコインの未来へようこそ。

1. ビットコインで「コーヒーを買う」

スワン(Swan)のCEO、コーリー・クリプステン(Cory Klippsten)氏は、10年後にはついに、本当に、ビットコインがコーヒーやビール、ドーナツなどの決済にメインストリームで使われるようになると想像している。

「2035年までには、世界中のほとんどの商品やサービスをサトシ(ビットコインの最小単位)で買えるようになるだろう」

だからと言ってクリプステン氏は、ビットコインが完全にドルに取って代わると考えているわけではない。ほとんどの商品が「2つの値札」を持つようになることを想定している。1つは法定通貨建て、もう1つはビットコイン建てだ。

「ビットコインがすべての法定通貨に取って代わるわけではない。これまでと同じように、我々は多くの通貨がある世界で生きていく」

2. ビットコインで動くゲーム

世界中には30億人以上のゲーマーがいる。THNDR Gamesのデス・ディッカーソン(Des Dickerson)CEOは、ライトニング・ネットワークのスピードのおかげで、これら数十億人のゲーマーがビットコインで報酬を得る未来を思い描いている。

「ビットコインはインターネットのネイティブ通貨であるべきだ。だから、ビットコインが本来ゲームに存在すべきものであることは言うまでもない」

もちろん、これはまだ理論上の話だ。THNDRはすでに150万人のユーザーを抱えているが、ディッカーソン氏は「ビットコインが登場する大人気ゲームが登場するまでは、大規模な普及は見込めない」と認めている。

3. TradFi(伝統的金融)がビットコインを手なずける

サトシ・ナカモトはホワイトペーパーの最初の一行で、ビットコインを「金融機関を通さずに、オンライン決済を当事者間で直接行えるようにする」ピアツーピア(P2P)の電子キャッシュと表現している。

この言葉は15年以上にわたって議論され、解析されてきた。この分野の多くの人々にとっては、「我々は以下の事実を自明のことと考える」というアメリカ独立宣言よりも象徴的でインスピレーションを与える言葉だ。そして、多くの人にとって重要なのは、「金融機関を通さずに」という点だ。

だからこそ、ビットコインの2024年最大の話題であるETF(上場投資信託)の出現は、何とも気まずい動きだ。『Bitcoin and Black America(ビットコインとブラック・アメリカ)』の著者、アイザイア・ジャクソン(Isaiah Jackson)氏は、ETFを「諸刃の剣」と見ている。

一方では、ETFは新しい資本のパイプラインを解き放ち、ジャクソン氏はそれが「価格を高騰させる」と信じている(そしてこれまでのところ、チャートでもその通りになっている)。

しかしまた、ETFに注入された資本は、ブラックロック(BlackRock)やフィデリティ(Fidelity)のような大手金融機関により大きな力を与える。

「ビットコインが十分にあれば、ロビイストを雇うことができる。そして、『ビットコインのマイニングを規制する必要がある』といったことを彼ら(政治家)に納得させることができる」と、ジャクソン氏は指摘する。

この懸念は、ユーチューブチャンネル『The O Show』のホストで元CoinDeskスタッフであるウェンディ・オー(Wendy O)氏も共有している。オー氏は、ビットコインETF主導による価格高騰の追い風を受け、「道徳的な形で不正な利得を得る」ことの非常に現実的なメリットを認める一方で、「TradFiが介入し、ビットコインを統治する」というシナリオも想定している。

4. ABI:人工ビットコイン知能

AI(人工知能)が進歩するにつれ、航空券の予約や請求書の支払い、タイ料理の注文などをこなす「スマートエージェント」の台頭がまもなく見られるようになるだろう。

「AIに銀行口座を与える人はいないが、ビットコインはAIが取引するためのデジタルネイティブな手段に最適だ」と、AIエージェントが暗号資産(仮想通貨)を取引・使用するための分散型プラットフォームを構築しているMorpheusプロジェクトのリードコントリビューター、デビッド・ジョンストン(David Johnston)氏は言う(Morpheusは厳密には「チェーンにとらわれない」ものだが、ビットコインにとっての可能性は明らかだ)。

ビットコインとAIの役割は、ビットコインを支払いに使うことにとどまらない。

「トランザクションを送信したり、DeFiにアクセスできるスマートエージェントがあれば、まったく新しいツールにアクセスできるようになる」

ChatGPTによって、プログラマーでなくても平易な英語で簡単にプログラミングできるようになったのと同じように、将来的には、技術的な知識がなくても、銀行を使わなくても、高度なDeFiツールを簡単に使えるようになるとジョンストン氏は語る。

ジョンストン氏は簡単な例を挙げる。「ラッピングもブリッジもサードパーティも使わずに、ネイティブビットコイン利回りを稼ぎたいとしよう」。これは素人には難しい。(そもそも素人が、「ネイティブビットコイン利回り」などという言葉を口にすることはないだろうが、イメージはつかめるだろう)。

AIを搭載したビットコインを使えば、「安全で分散化された方法で、ビットコインに利回りを獲得させたい」と言うだけで、「ユーチューブインフルエンサーが喧伝しているようなたわごとではなく」、しっかりとした、評判の良い、ノンカストディアル型ソリューションを見つけるために調査してくれるだろう、とジョンストン氏は言う。

5. 課税と規制で窒息

ビットコインの未来を占う水晶玉の中で、おそらくこれが最も曇っている。「規制に関しては、何が起こるかまったくわからない」と、ウェンディ・オー氏。エルサルバドルのビットコイン推進政策に勇気づけられている一方で、アメリカでは「お役所仕事が多く、さまざまな分野の公務員がたくさんいて、ビットコインを何に分類するのか誰にもわからない」と心配している。オー氏は、ビットコインが全面的に禁止される可能性は低いと見ているが、政府が「エコシステムへの参加を困難にする」ことを恐れている。

あるいは、ジャクソン氏が疑っているように、政府がビットコインを法定通貨に変換するうえで、まずCBDC(中央銀行デジタル通貨)に変換することを強制するなどの「ある種のボトルネック」を作るかもしれない。

ジャクソン氏の考えでは、もし10年後に1ビットコインの価値が100万ドルにまで高騰し、政府のデジタル通貨をオフランプとして使わなければならなくなれば、それは「CBDCを手に入れるよう多くの人々を罠にかけることになり、監視と管理のために彼らが望んでいること」だろう。

クリプステン氏は規制のリスクを認めつつも、最終的には政治がビットコインに有利に働くのではないかと考えており、次のように語った。

「国民の意思によってルールは変わる。ある時点で、ビットコインを主に所有する人々が多くなり……彼らの邪魔をする政治家にとっては、非常に困難な状況になるだろう」

6. 影のビットコイン

このシナリオは1つ前のシナリオから直接つながっている。政府が何らかの形でビットコインの息の根を止めたり、過剰な規制に成功した場合、当然ながら「闇市場のビットコイン」、つまり政府の監視網から外れたビットコインが欲しくなるだろう、とジャクソン氏は言う。例えば、自宅マイニングでビットコインを稼ぐ人々や、チェイナリシス(Chainanalysis)のようなツールで追跡するのが(不可能ではないにせよ)難しいビットコインを所有する人々だ。

こうした懸念は新しいものではない。FBIは10年以上にわたってビットコインを追跡しており、これを堅実な法執行と見る人もいれば、監視の悪夢と見る人もいる。つまり、追跡と規制がエスカレートすれば、「2つのビットコイン」、あるいは「影のビットコイン」の世界に住むことになり、おそらく人々は追跡されたビットコインにはもちろん定められた価格を支払い、影のビットコインにはプレミアムを支払うことになるだろう。

しかし、ジャクソン氏はその懸念を認めつつも、政府がこれを実行するのは現実的に難しいとも考えている。メインストリームに普及すれば、文字通り何十億ものビットコインウォレットが存在することになり、「それらすべてを止めるなんてどう考えても無理だろう」とジャクソン氏は考えている。

7. ビットコインは価値の保存手段として繁栄する

これはきわめてシンプルだが、最もシンプルなシナリオが最も可能性が高いこともある。常識を無視してはいけない。

「ビットコインの核となる価値提案は、グローバルでデジタルな価値の保存手段。他にも実現する可能性のあるユースケースはあるが、核となる提案こそ、何十年も続く可能性の高い」と、Pomp Investmentsのアンソニー・ポンプリアーノ(Anthony Pompliano)氏は語る。

ポンプリアーノ氏は、世代交代さえ視野に入れている。ビットコインは今や「多くの若い投資家にとってのベンチマーク」であり、S&P500が株式投資家にとってのベンチマークであるのと同様だと言う。

「ビットコインのパフォーマンスに勝てなければ、単に『インデックスを買う』だけだ」

8. マシンがビットコインを送る

2021年初頭、AIが爆発的に流行するずっと前に、エリザベス・スターク氏は私に、「マシンがマシンに、ネイティブに、即座に支払いをする」、そしてビットコインネットワークを介して「テスラがライトニングで充電料を支払う」未来を思い描いていると語った。

それから3年後、スターク氏の予測はさらに現実味を帯びてきた。マシンはもちろん、ロボットでさえも、いつかはお金を使う必要が出てくるだろう。そして、「ロボット」はターミネーターのようなものばかりではない。IoT(モノのインターネット)のように単純なものかもしれない。そして、これらのロボットやマシンがウェルズ・ファーゴの口座から米ドルを使う可能性はどれくらいあるだろうか?

「ビットコイン、ステーブルコイン、デジタル通貨は、多くの自動化ユースケースで選択される通貨になるだろう」とポンプリアーノ氏は言う。同氏は、即時決済を求めるマシンは、「決済に数日かかるため、電子マネーを使うことができなくなる。そこでビットコインやステーブルコインが真価を発揮する可能性がある」と主張する。

9. ビットコインOrdinalsの爆発的成功

これは、暗号資産分野を丁寧に追っている人にとっては、よく語られる、あるいは退屈な話題のように思えるかもしれないが、食料品店で近くにいる人に「ビットコインOrdinalsをどう思うか?」と尋ねると、奇妙な顔をされるだろう(念のためだが、そんなことはしないで欲しい)。

Ordinalsはまだメインストリームには程遠い。しかし、10年後にはそうなるかもしれない。そうなれば、デジタルコレクティブルの世界のすべてが一変し、それに比べれば、2021年の「NFTの夏」が古めかしく見えるようになるかもしれない。

「マスアダプションにより近づけば、NFTよりも安全なので、人々はOrdinalsを使い始めると思う」と、ウェンディ・オー氏は言う。しかしそれは、「まだずいぶん先のことになるだろう」ともオー氏は考えている。

10. 現状維持

「あまりエキサイティングな話ではないかもしれないが、今後起こるであろうことは、ビットコインが現在とまったく同じことに使われるようになることだ」と、ポッドキャスト「Crypto Critics’ Corner」の共同ホストであるキャス・ピアンシー(Cas Piancey)氏は言う。

ピアンシー氏は自称暗号資産皮肉屋だが、これはビットコインをこき下ろすことが大好きという意味ではない。同氏は細かいニュアンスを理解している。

「ビットコインのユースケースがないと主張されるとき、私は一般的にそれに同意しない」とピアンシー氏。10年後もビットコインは送金に細々と使われ、反体制派の道具として散発的に使われ、価値の保存手段として多くの人に保有されているとピアンシー氏は想像している。

ピアンシー氏は終末論者ではない。だから、10年後もビットコインが順調に存続していると想像しているが、「次の世界通貨になると言っている人たちは、どうかしている」と警告もしている。

11. ブラックスワン(想定外の衝撃的な出来事)によるビットコインの終末

量子コンピューターでビットコインはハッキングされるかもしれない。51%攻撃があるかもしれない。ビットコインがChatGPT7によって破壊されるかもしれない。

というわけで、これは「何がわからないかわからない」ことを謙虚に認めるための、「終末シナリオの総まとめ」のようなものだ。ビットコインの支配は「必然的」だと言う関係者は多いが、人生において本当に必然的なことはほとんどない。

アイザイア・ジャクソン氏は、ビットコインに関してこれ以上ないほど強気だが、例えば量子コンピューティングによるハッキングは理論的には可能だと認めている。同氏はそのリスクは低いと考えており、邪悪な量子ハッカーはまず、主権国家のような、よりうまみのあるターゲットに焦点を当てるだろうと考えているが、「常にリスク」があることは認めている。

12. テレパシー・ビットコイン

ジャクソン氏は3年前のオリジナルの記事で、最も楽しいシナリオを提示した。ある時点でビットコインが、火星で使われるようになる、というものだ。そしてジャクソン氏は、かつての自分自身を凌駕するために再び戻ってきた。

ジャクソン氏は、肩から下が麻痺しているノーランド・アーバフ(Noland Arbaughf)氏のことを考えていた。アーバフ氏は、脳内にニューラリンク(Neuralink)のチップを埋め込んだ最初の患者となり、今では考えるだけでチェスをしたり、ツイートできるようになった。「まるでフォースを使っているようだった」と、アーバフ氏はツイートを「考えることで」生み出した後に語った。

そこでジャクソン氏はあることに気づいた。2024年に考えるだけでツイートが送れるなら、テレパシーでビットコインを送れるようになるのも時間の問題だ。「この人はツイートを考えただけで、投稿できたのだ」とジャクソン氏。いつか我々は、「これがプライベートビットコインウォレットのコードだ」と考えるようになるだろう、と続けた。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:12 Future Bitcoin Scenarios: From Bullish to Bearish