ブラックロックの「RWAトークン化」参入、そのインパクトとは?

ブラックロック(BlackRock)とセキュリタイズ(Securitize)が連携してデジタル資産ファンドを立ち上げるというニュースは、米国内で認可され、規制を遵守したトークン化市場に対して大きな意味を持つ。

好調な滑り出し

「BlackRock USD Institutional Digital Liquidity Fund(BUIDL)」は、セキュリタイズのプラットフォームに上場する同タイプで初めてのファンドではないが、機関投資家や資産運用大手をセキュリタイズのエコシステムに呼び込むきっかけとなる商品である可能性が高い。

BUIDLは資産の100%を現金、米国財務省短期証券、現先取引(レポ取引)で保有し、デジタル・マネー・マーケット商品に分類される。セキュリタイズは以前から、そして現在もアルカ(Arca)の「Arca U.S. Treasury Fund(RCOIN)」の証券代行および発行プラットフォームとなっている。

アルカは2020年、流動性の極めて大きなファンドのためのブロックチェーンベースの構造を描き、その先駆者となった。だが、ブラックロックの参入は、このビジョンが目指したものの真の火付け役となるかもしれない。

ATS上のトークン化された資産の時価総額と取引高(STM.co)

Security Token Market(STM.co)のデータによると、トークン化された資産向け代替取引システム(ATS)の累計取引高は、2024年3月までに1億1000万ドル(約165億円、1ドル150円換算)を超えた。

ブラックロックがBUIDLのシード資金調達として、1億ドルを集めたことはセキュリタイズ上で最大規模であり、第1週の約1億7500万ドルの資金流入で、BUIDLのAUM(運用資産残高)はすでに2億7500万ドルに達し、フランクリン・テンプルトンの3億6000万ドル超のマネー・マーケット・ファンド(MMF)に次いで、マネー・マーケット分野で2番目の規模を持つ商品となった。

プライマリー市場では(500万ドル以上の投資可能資産を持つ推定270万世帯、または2500万ドルの投資可能資産を持つ投資マネージャーおよび法人と定義される)適格購入者(QP)に限定されているが、いずれセカンダリー市場に取り扱いが拡大することで、投資家にとってインセンティブとなる、より望ましい取引条件が可能になるだろう。

BUIDLは、投資家がセキュリタイズに上場しているKKRやハミルトン・レーン・ファンドのような他の上場オルタナティブ投資を検討しながら利回りを手にし、一度もセキュリタイズから離れることなくポートフォリオを構成し得る、粘着性の高い資産であることが証明されるだろう。

先駆け

セキュリティ・トークン・アドバイザーズ(Security Token Advisors)が「State of Security Tokens(セキュリティトークンの現状)」レポートシリーズで2023年の状況を詳述しているように、マネー・マーケットと米国債は、資産運用大手がトークン化テクノロジー、そのパートナー、そしてその分野に慣れ親しむための手軽な投資対象となっている。

他の大手資産運用会社は、ブラックロックの流動性ファンドをゴールドスタンダードと見なして資本を投下し、自社チームにオンチェーン・ファイナンスの状況を把握させるだろう。

実際、Ondo Financeは3月27日、自社のトークン化短期債券ファンドからBUIDLへの9500万ドルの再配分を完了した。BUIDLへのアクセスを求めて受託者がセキュリタイズにオンボーディングすることによって、ファンドに、ひいてはセキュリタイズのエコシステムに大きな資本が移ることになる。

その結果、セキュリタイズ・マーケッツ(Securitize Markets)のプライマリーおよびセカンダリーの取引所におけるオルタナティブ投資商品と上場商品については、資金の流れと動きが活発化する可能性が高い。

このことは、他のブローカーディーラー、代替取引システム、および同等の規制下にある取引所にとって、発行者の構造や戦略における先例となるだろう。

オンチェーン国際商品の成長(RWA.xyz)

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Where BlackRock Goes, Liquidity Flows