ビットコインのブレイクアウトは一旦停止──アメリカのCPI発表を控えて
  • ビットコインのブレイクアウト失敗は、アメリカのCPI発表を控えた一時的な神経質さを表している可能性が高く、完全な弱気トレンドの反転ではないと10x Researchのマーカス・ティーレン氏は述べた。
  • 暗号資産市場はCPI発表とFRBの利下げを前に動きを止めている。
  • インフレ率が軟調に推移すれば、6月の利下げが見送られ、暗号資産を含むリスク資産のボラティリティが上昇する可能性がある。

ビットコイン(BTC)は、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ開始時期を左右する可能性のあるインフレデータの発表を前に、過去24時間で3%下落し、強気のブレイクアウトが無効になった。

時価総額トップの暗号資産(仮想通貨)であるビットコインは、3月15日と3月27日の高値、3月20日と4月3日の安値を結ぶトレンドラインで特定される三角保合いパターンに逆戻りした。上下対称な三角保合いは今週初めに強気のブレイクアウトで終わり、8万ドルへの上昇の扉を開いたかに思われた。

ブレイクアウトに失敗した場合、短期トレーダーは価格の急落を予想して強気ベットを手仕舞いしたり、反転させたりすることが多い。それでも、10x Researchの創設者であるマーカス・ティーレン(Markus Thielen)氏は、ビットコインのブレイクアウトの失敗に反応しすぎないように投資家に注意を促している。

「ビットコインがブレイクアウトに失敗したのは、アメリカの消費者物価指数(CPI)の発表を控えて神経質になっているためだろう。私はまだそれを帳消しにはしない」とティーレン氏はCoinDeskにテレグラムのチャットで語った。

BTCは三角保合いパターンに逆戻りした。(TradingView)
BTCは三角保合いパターンに逆戻りした。(TradingView)

さらにティーレン氏は、ウォール街のハイテク株指数であるナスダックが4月9日に上昇し、ビットコインやその他のリスク資産にポジティブな手掛かりを与えたと付け加えた。つまり、ビットコインの下落は短期間で終わる可能性がある。この暗号資産は、ナスダックとナスダック/S&P500比率の動きに密接に連動する。

アメリカ労働統計局(BLS)は、2024年3月の消費者物価指数を4月10日の協定世界時12時半(日本時間午後9時半)に発表する予定だ。

ウォール・ストリート・ジャーナルによるエコノミストの調査によると、生活費の指標であるCPIは2023年3月に3.5%上昇し、2月の年間インフレ率3.2%から加速したとの見方がコンセンサスとなっている。月次のペースは2月の0.4%から0.3%に減速すると予想される。

同様に、変動の激しい食品とエネルギー分野を除いたコアインフレ率も、2月の0.4%上昇から3月は0.3%上昇に鈍化し、前年比で3.8%から3.7%に低下すると予想されている。

底堅い経済と労働市場の状況により、市場はすでにFRBの最初の利下げ時期や今年の利下げ回数に対する予想を後退させざるを得なくなっている。4月8日のFF金利先物は、今年の利下げ幅を60ベーシスポイント(bps)と予想し、1月初旬の150bpsから大幅に引き下げた。6月に25bpsの利下げが実施される確率は50%を下回り、4月5日に行われた非農業部門雇用者数の発表前の60%近くから大きく低下した。

このため、予想を上回るCPI発表があっても、ビットコインに大きな下方変動が生じることはないだろう。それどころか、軟調な結果となった場合、6月の利下げが見送られ、主要暗号資産の強気心理が復活する可能性もある。

「シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の値動きによると、6月に最初の利下げが実施される確率は50%に低下している。言い換えれば、多少の変動はあるかもしれないが、市場はすでにインフレ見通しに対してより弱気になっているように感じられる」と、アナリストでニュースレター「Crypto Is Macro Now」の著者であるノエル・アチェソン(Noelle Acheson)氏は4月9日に述べている。

「インフレ率が予想外に低下すると、FRBが6月に利下げを行う口実があるというシグナルとなるため、暗号資産を含む資産により大きな影響を与える可能性が高い」とアチェソン氏は述べている。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:TradingView
|原文:Bitcoin Breakout Halts as U.S. Inflation Data Looms