ステーブルコインはアメリカ経済にとって有益:米証券会社キャンターCEO
  • ステーブルコインは米国債の需要を高めると、テザーのカストディアンであるキャンター・フィッツジェラルドのCEO、ハワード・ルトニック氏は言う。
  • ルトニック氏によれば、中国はデジタルドルをスパイウォレットとみなす可能性があるという。

暗号資産(仮想通貨)市場で長く続いている議論のひとつは、米ドルのステーブルコイン(価値が他の資産にペッグされた暗号資産)が米ドルの世界的支配力を強めるかどうかというものだ。キャンター・フィッツジェラルドのCEOによれば、米ドルのステーブルコインは世界最大の経済にとって有益だという。

ブルームバーグによると、ハワード・ルトニック(Howard Lutnick)CEOは4月10日のチェイナリシス・カンファレンス(Chainalysis Conference)で「ドルによる覇権はアメリカ合衆国の基礎だ」と述べた。 「それは我々にとって、我々の経済にとって重要なことだ。だからこそ、私は適切に裏付けられたステーブルコイン、テザー(USDT)とサークル(USDC)のファンなのだ」。

ステーブルコインは「アメリカ経済にとって基本的なものであり、米国債の需要を牽引しており、世界にシステミック・リスクをもたらすものではない」と彼は語った。

世界経済におけるドルの力によって、アメリカは多額の赤字を抱え、他国よりも低い金利で借り入れを行い、敵対国には破壊的な制裁を課すことができるとされている。

キャンター・フィッツジェラルドは、世界最大のステーブルコインであるテザー(USDT)を発行するテザー(Tether)社のカストディアンだ。CoinGeckoによると、4月11日の時点でUSDTは1070億ドル(約16兆円、1ドル=150円換算)の時価総額を誇り、2位のUSDCの時価総額は322億5000万ドル(約4兆8300億円)だった。

暗号資産トレーダーは、ステーブルコインをスポット市場での資金調達通貨やデリバティブ取引の担保として広く利用している。そして、2022年のアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の引き締めサイクルの間は、避難所としても機能した。

2022年5月にテラ(Terra)のアルゴリズム型ステーブルコインであるUSTが破綻し、ステーブルコインに対する投資家の信頼は失墜した。しかし、テザーはストレステストに合格し、裏付けとなる準備金に対する懐疑的な見方が残る中、償還に応じた。1月、ルトニック氏はテザーがUSDTを支える資金を持っていることを確認したと述べた。

しかし、ルトニック氏は中央銀行デジタル通貨(CBDC)のファンではなく、中国はデジタルドルをアメリカのスパイウォレットとみなすかもしれないと10日に述べている。

「私が恐れているのは、中央銀行が中央銀行デジタル通貨を発行したいということだ」と述べ、「しかし、問題は中国がどう考えるかだ。彼らはそれをアメリカのスパイウォレットと定義するだろう」と付け加えた。

ルトニック氏は、技術が十分に高速かつ安価になれば、債券のような現実世界の資産がトークン化され、今後10年以内にブロックチェーン上で取引される可能性があると述べた。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:キャンター・フィッツジェラルドのハワード・ルトニック会長兼CEO。(Manuel Lope/World Economic Forum)
|原文:Stablecoins Are Beneficial to U.S. Economy, Tether’s Custodian Says