米NBA八村塁やスター選手の暗号資産を買える日も近い?

全米バスケットボール協会(NBA)で、ブルックリン・ネッツに所属するスペンサー・ディンウィディー(Spencer Dinwiddie)選手は、1,350万ドル(約14億5千万円)の資金調達を行う予定であることを発表した。その方法だが、仮想通貨企業のパクソス(Paxos)と提携し、自身の3年・3,450万ドル(約37億円)の契約の内、初年度部分をトークン化する。

上記は「DREAM Fan Shares」プラットフォームと名付けられたが、投資家は、ディンウィディー選手の隔月の給与から利益の分配を受ける形となる。投資家として参加するための最低額は、15万ドル(約1,600万円)だ。

ブルックリン・ネッツのガードとして活躍する同選手は、自身の契約金は完全に保証されたもので、負傷その他の理由でプレーできなくなったとしても、投資家は資金を失うリスクがない、とCoinDeskに対して説明した。同選手は今シーズン1,600万ドル(約17億円)の収入が見込まれており、事前支払いを確実にするために250万ドル(約2億7千万円)分をトレードしている。

トークンのオファリングは初回シーズン限りの予定だが、同選手はCoinDeskとのインタビューで、トークン所有者が同選手の契約の2年目と3年目まで継続して投資可能なオプションを設けると述べた。

トークンはプレイヤーに対する「所有権のようなものではなく、契約上の価値として捉えていただきたい」と同氏はCoinDeskに対して説明した。

DREAM Fan Sharesの投資家は、同選手のイニシャルとナンバーにちなんだ「SD8」トークンを受け取ることになる。少なくとも100万ドル(約1億円)の純資産または20万ドル(約2,000万円)の年収を過去2年間にわたって有する者のみが適格投資家として参加できる。

パクソス・トラスト・カンパニー(Paxos Trust Company)はこのプロジェクトでカストディ及びエスクローサービスを提供し、トークン所有者に対して、ドルに連動したパクソス・スタンダード(PAX)という同社ステーブルコインで支払いを行う。

バスケ以外のアスリートやエンターテイメント産業の将来のためにも

ディンウィディー選手によると、この新たなプラットフォームは、スポーツ選手やエンターテインメント業界に身を置く者が自らの報酬をうまく活用する助けとなるよう設計されているとのことだ。

NBAというブローカーが抱える資産としての「選手は、収益を生み出す源泉」であり、その資産価値とは「選手の知的財産としての価値ではなく、毎晩バスケをプレーし、リーグを支える働きそのもの」だと主張する。

もし選手やその他業界における個人が、自らの頑張りに紐づいてビジネスを構築できれば、より経済的に安定した状態を長期に維持することができると同選手は考えている。今回のトークン・プラットフォームを使用して新しい資産クラスを構築することは、このような未来の実現に資するだろう。

コロラド大学で3年間プレーした後に、NBAドラフトに参加したディンウィディー選手は、資産のトークン化は将来の世界的な景気後退への備えだと考えている。トークンは旧来の金融システムに縛られないため、不況にも強いだろうと同選手は話す。

(「もちろん、NBAが倒産したらその限りではないけれども、そんなことは起こらないと思う」と同選手は説明した。)

不況の懸念は脇に置いたとしても、選手は契約に基づいた金額を通常であればシーズン中に定期分割払いされるところ、トークン化によってその一部に相当する額を前もって手にでき、それによって何かに投資することが可能となり、最終的に自身へのより大きなリターンにつながるだろう、と同選手は述べた。

「リーグ中の多くの選手から関心が寄せられている。私の[計画]が成功すれば、多くの人がそれに追随して、仮想通貨というものがより存在感を増すようになるかもしれない」

他の選手はそれぞれ独自のトークンをカスタマイズすることができる。ディンウィディー選手が思い描いているのは、投資家がトークンを取引できるシステムだ。たとえば、同選手のトークンを、はるかに巨額な契約を締結しているケビン・デュラント(Kevin Durant)選手(4年で1億6400万ドル(約175億円)、ブルックリン・ネッツ所属)や、レブロン・ジェームズ(Lebron James)選手(4年間1億5400万ドル(約165億円)の契約、ロサンゼルス・レイカーズ所属)のトークンとトレードできるといった具合だ。

「Fan Sharesプラットフォームでは、こうしたことをすべて念頭に置いている」と同選手は胸を張る。

さらに、このようなトークンを設けられるのはアスリートだけではない。同選手は、どんなエンターテインメント業界の人間でも、同様のトークンを設けられるはずだと考えている。たとえ個々の契約の詳細が異なっていても、である。

投資家にとっては「ブロックチェーンを使った方が、より透明性が高い。誰も我々が彼らのお金を持ち逃げするとは思わないだろう」

しかし、この計画は急遽、NBAより思わぬ「ディフェンス」を受けることとなった(詳細記事はこちら)。

翻訳:新井朝子
編集:T.Minamoto
写真:Spencer Dinwiddie image via Erik Drost/Wikimedia Commons
原文:Spencer Dinwiddie Could Decentralize Pro Sports – If Accredited Investors Want In