世界最大の資産運用会社が参入した後も、根強いビットコイン懐疑論
  • 伝統的金融業界の中堅資産運用会社の多くは、ある業界大手が暗号資産(仮想通貨)を支持し始めた後もビットコインに懐疑的だ。
  • ビットコインを 「バブル」と呼ぶ者もいれば、顧客からの需要が見込めないため、参入する理由がないという者もいる。

ウォール街の投資家たちから何年も嘲笑される経験を経て、誕生から15年ほど過ぎた頃、ビットコイン(BTC)は2023年に、世界で最も巨大な投資会社として知られるブラックロック(BlackRock)に受け入れられた。

他の伝統的金融大手のなかに、すでにビットコインを支持していた会社があったことは確かだが、ビットコインETFを申請し、ラリー・フィンク(Larry Fink)CEOがビットコインを声高に賞賛するという形のブラックロックからの承認は、意外かつ重要な出来事として広く受け止められた。

ビットコインをめぐる論調は、その余波で金融関係者(少なくともその一部)の間で変化したようで、より多くが支持を表明した。

しかし、4月初めにマイアミで開催された投資専門家向けのイベントでは、業界のかなりの人たちがビットコインに深刻な疑念を抱き続けていることが明らかになった。

シンプリファイ・アセット・マネジメント(Simplify Asset Management)のポートフォリオマネージャー、マイク・グリーン(Mike Green)氏は、マイアミ投資マスターズ・シンポジウムで「ビットコインは単なる搾取的バブルに過ぎない。事実上、あるグループから別のグループへ富を移転させる仕組みだ」と述べた。

しかし、そのような懐疑的な見方は、シンプリファイがビットコインを完全に無視することにはつながっていない。シンプリファイは、ビットコインに投資する2つのファンドを顧客に提供している。「Simplify Bitcoin Strategy PLUS Income ETF」と、資産の10%をグレイスケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)に投資する「Simplify US Equity PLUS GBTC ETF」だ。

ビットコインに対する需要があり、シンプリファイはその要求に応えているとグリーン氏は言う。しかし、ビットコインは単に富を移転させる仕組みに過ぎないという同氏の全体的な見方は変わらない。

「価値は創造されていないし、何も成し遂げられてはいない」とグリーン氏は語る。

ビットコイン懐疑論は依然として一般的

より広範にも、消極的な兆候が見られる。ビットコインETFについては、新しく登場した金融商品としては、かつてないほどの需要があるにもかかわらず、バンガード(Vanguard)やステート・ストリート(State Street)をはじめとする、一部の資産運用会社の顧客には提供されていない。

顧客にビットコインETFへの投資を許していることを公表しているのは、5、6社の大手に限られ、専門家はビットコインETFの取引高のほとんどは個人投資家によるものと考えている。

米投資銀行のゴールドマン・サックスは、いわゆる公認参加者としてブラックロックのビットコインETF「iシェアーズ・ビットコイン・トラスト(IBIT)」で重要な役割を担っているが、今月初め、ビットコインは投資ポートフォリオに属するとは考えておらず、同社の顧客はビットコインに関心を持っていないと改めて表明した。

ストーンXグループ(Stone X Group)のチーフストラテジスト、キャサリン・ベラ(Kathryn Vera)氏はマイアミのカンファレンスでプレゼンテーションを行い、ビットコインが基軸通貨(世界の貿易や金融を支えるために各国の中央銀行が保有するドル、ユーロ、人民元のような通貨)になることは「自身が生きている間」は、ないだろうと述べた。

従来の主要通貨が金融の要である重要な理由は、この基軸通貨としての地位にある。

金支持者でエコノミストのピーター・シフ(Peter Schiff)氏は、ビットコインを現在も将来も使い道のないギャンブルマネーと呼んだ。ビットコインが7万3000ドルを超える過去最高値を更新するなか、シフ氏はイベントで「すべてが大きなバブルだ。崩壊するだろう」と述べた。

資産運用会社の中には、自らの立場を決め、意見を堅持しているところもあるが、アメリカでは1月、ブラックロック、フィデリティ(Fidelity)、グレイスケール(Grayscale)などから11本のビットコインETFが登場したにもかかわらず、ビットコインを投資対象として検討する状況には至っていないところもある。

グリーン氏は、同氏の会社ではビットコインへの顧客からの関心はあまり高くないと述べている。しかし、それは同社が、暗号資産を積極的に販売したり、暗号資産に投資するよう助言を行っていないことが一因かもしれないと同氏は認めている。

匿名を条件に取材に応じた別の資産運用会社の関係者は、同社は顧客に大きな利益をもたらしているため、ビットコインは必要ないと述べた。特に暗号資産には、同社が行う他の取引には必要ないレベルの予測が必要だからだ。「現状の重点分野で、ビジネスは活況を呈している」とこの人物は述べた。

グリーン氏によると、同業者の多くは、特に顧客からのプレッシャーがない場合、ビットコインなどの暗号資産の背後にあるテクノロジーを本当に理解するために労力を費やしたいとは思っていない。

また、暗号資産について否定的なことを話したり、この分野で懐疑的な意見や憶測を表明したりしても、悪影響はないように思えることも一因だとグリーン氏は言う。

その結果、業界には膨大な量のフェイク情報が出回っている。

「ビットコインのようなものを全面的に追求することはきわめて難しいため、それを本当に理解しようという興味がない」とグリーン氏は語った。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:There Are Many Bitcoin Critics Left in Finance, Despite BlackRock’s Newfound Love