金に対して強気になる理由はたくさんあるが、逆に弱気になる不変の理由として挙げられるのは、金は「消費」されないということだ。有史以来、採掘された金はすべてどこかに存在する。
週末にブルームバーグ(Bloomberg)が公開した記事では、金が1オンスあたり2400ドル(約36万円、1ドル150円換算)超の記録的な高値をつけたことを受けて、ブルックリンの質屋に金製品を持った客が殺到する様子が報じられた。質屋を経営するジーン・ファーマン(Gene Furman)氏は「人々は金を新しいATMのように使っている」と話し、2ヶ月前に本格的な価格上昇が始まって以来、金を持ち込む客の数が3倍に増加したとブルームバーグに語った。
一方、買い手は価格上昇に手をこまねいているようだ。米国造幣局発表した3月のイーグル金貨の売上は、1年前の水準のおよそ10%程度だった。
ビットコインはどうなる?
金とビットコイン(BTC)の間には明確な違いがあるが、多くの共通点もある。そのうちのひとつが、ビットコインも真に消費されることはなく、これまでに採掘されたものはすべて残っているということだ(秘密鍵の紛失により利用できなくなったものもあるかもしれないが)。
主に現物ETFの需要増加のおかげで、2024年に入ってから3月中旬までにビットコインは70%近く上昇し、7万3000ドル(約1095万円)超の史上最高値を記録した。その後、上昇は失速し、現在では最高値を15%以上下回っている。反落の理由については議論が分かれるところだが、ここ1ヶ月間は、小幅に鈍化したものの依然として堅調なETFの買いペースを、売りが圧倒している。
強気派は、1日に採掘されるビットコインがわずか900BTC(今週起こるとされる半減イベント後は、1日450BTCに減る)であるのに対し、ETFの需要は1日あたり数千BTCに上ることが多いと指摘するが、その計算が必ずしも価格上昇につながるとは限らない。現在ビットコインの流通量は2000万BTC近くあり、十分な高値に達すれば、ファーマン氏の質屋に殺到する人々と同じように、喜んでビットコインを手放す人はたくさんいる。
つい昨日も、初期の暗号資産(仮想通貨)愛好家が2010年に採掘された50BTC(約300万ドル、約4億5000万円相当)を暗号資産取引所コインベース(Coinbase)に移動した。2023年12月にも、13年間休眠していたアドレスから1000BTC(約4000万ドル、約60億円相当)がトレーディングデスクに移動されていた。
金、そしておそらくビットコインについて言い残すことがあるとすれば、ハウス・オブ・カーン・エステート・ジュエラーズ(House of Kahn Estate Jewelers)社長のトビナ・カーン(Tobina Kahn)氏の言葉がふさわしいだろう。「今とても忙しく、宝石を持ち込みたいという顧客からの電話の数はこれまでにないほど増えている」と彼女はブルームバーグに語った。
「現在の価格は前例のないレベルなので、今すぐ持ち込むようにと顧客に伝えている」
|翻訳・編集:行武 温
|画像:Gold bars stacked close up (Unsplash)
|原文:Exploding Gold Sales at Pawnshops Offers Lesson for Bitcoin Bulls