暗号資産(仮想通貨)ウォレットのメタマスク(MetaMask)など、イーサリアムブロックチェーンのアプリケーションとインフラの開発を手がけるコンセンシス(ConsenSys)は、米証券取引委員会(SEC)がイーサリアムに対する「違法な権限掌握」を行ったと主張し、SECに対して訴訟を提起した。コンセンシスはSECの調査を受けており、これに反撃した形だ。
裁判所に宣言と差し止め命令を求める
コンセンシスは連邦裁判所に対し、イーサリアムは証券ではなく、イーサリアムが証券であるという考え方に基づくコンセンシスに対する調査は、同社の米国憲法修正第5条の権利と行政手続法を「侵害することになる」旨、メタマスクは連邦法の下でのブローカーではない旨、メタマスクのステーキングサービスが証券法に違反していない旨の宣言と、メタマスクのスワップやステーキングの機能に関連するSECの調査や執行措置の実施に対する差し止め命令を求めている。
SECとその委員5人全員に対して25日に提出された訴状の中で、コンセンシスは4月10日にSECからウェルズ通知を受け取ったことを明らかにした。同社のウォレット製品であるメタマスクを通じた証券法違反で同社に対して執行措置を起こす意向を示したものだったという。コンセンシスは、ウォレットは「単なるインターフェイス」であり、「顧客のデジタル資産を保有したり、取引機能を実行したりするものではない」としてブローカーとして機能していることを否定している。
SECの過去の声明に反すると主張
訴状では、イーサリアムに対するSECの権限違反は、暗号資産は商品であり証券ではないとするSECの過去の声明(ビル・ヒンマン元ディレクターの2018年の講演を引用)や、SECの姉妹規制機関である商品先物取引委員会(CFTC)がイーサリアムに対する権限を持っていることに反しているとも主張されている。CFTCはイーサリアムに紐づいたデリバティブ製品を監督している。
コンセンシスはこの訴訟で、同社は「この規制上のコンセンサスを背景に事業を構築した」と主張しており、イーサリアムに対するSECの新たな権力掌握(同社はこれを「急激な方向転換」と呼んでいる)は、それゆえ「適正手続き条項(Due Process Clause)に基づく憲法上の公平な通知の要件に違反する」と主張している。
コンセンシスは、「イーサリアムに対するSECの違法な権限掌握は、イーサリアムネットワークとコンセンシスに災難をもたらすだろう」と主張している。
SECの代表者はこの訴訟についてコメントを控えた。
また、今回の提訴は、連邦規制当局が議会の委任の範囲を大幅に超えることを禁じた最高裁判所の判決である「重要問題法理(Major questions doctrine)」に基づくものでもある。2人の裁判官がすでに、テラフォーム・ラボ(Terraform Labs)と暗号資産取引所コインベース(Coinbase)が提起した主張に対し、暗号資産がこの法理に該当するという考え方を否定している。
ほかの団体や企業もSECを提訴
コンセンシス以外にも、ブロックチェーン協会(Blockchain Association)などの団体やレジット・エクスチェンジ(Legit Exchange)などの企業が、SECが特定の暗号資産企業や資産を有価証券として扱うことを阻止しようとして同様の先制的な訴訟を提起している。
ここ数か月間、SECはバイナンスUS(Binance.US)、バイナンス(Binance)、クラーケン(Kraken)などの暗号資産取引所に対しても訴訟を提起している。ユニスワップ・ラボ(Uniswap Labs)も今月これ以前に、SECからウェルズ通知を受け取ったことを明らかにしていた。
|翻訳・編集:林理南
|画像:Nikhilesh De/CoinDesk
|原文:Consensys Sues SEC Over ‘Unlawful Seizure Of Authority’ Over Ethereum