- ETH/BTCレシオは3年ぶりの低水準に下落し、年初からの低下は約16%に拡大。
- アメリカでのイーサリアムスポットETFの立ち上げに関する不確実性や、ソラナなどのイーサリアムキラーの成長など、いくつかの要因がイーサリアムの不調の原因となっている。
イーサリアム(ETH)とビットコイン(BTC)のドル建て価格の比率は下落を続けており、1カ月前の弱気なデスクロスが示唆するように、年初からの低下が拡大している。
TradingViewによると、ETH/BTCレシオは5月16日、暗号資産取引所バイナンス(Binance)で0.04563まで下落し、2021年4月以来の安値に達した。今年、この比率は16%近く低下しており、ビットコイン、つまりや時価総額でトップの暗号資産(仮想通貨)に偏っていることを示している。
3年ぶりの安値への下落は、イーサリアムに連動する上場商品(ETP)への需要減退を受けたものでもある。
ETCグループが週次レポートで引用したブルームバーグのデータによると、世界のイーサリアムETPは先週、約6350万ドル(約98億4000万円、1ドル=155円換算)の純流出を記録し、香港上場の上場投資信託(ETF)が最も損失を被った。一方、ビットコインETPは先週9250万ドル(約143億4000万円)の資金を集めた。
競合する他のレイヤー1やアメリカでのスポットETF承認に関する長引く不確実性など、いくつかの要因が投資家の支持を失った原因だと考えられる。
コインベース・インスティチューショナル(Coinbase Institutional)のリサーチアナリスト、デビッド・ハン(David Han)氏は5月15日のメモで「アメリカにおけるビットコインスポットETFの承認は、ビットコインのストアオブバリューのストーリーとマクロ資産としての地位を強化した。一方、暗号資産セクターにおけるETHの基本的な位置付けには、未解決の疑問が残る。ソラナ(Solana)のような競合するレイヤー1は、分散型アプリ(dApp)展開のための『頼りになる』ネットワークとしてのイーサリアムのポジショニングを損なう」と述べている。
分散型取引所(DEX)の総取引量に占めるソラナのシェアは1年で2%から21%へと10倍に拡大し、イーサリアムの市場シェアを食っている。
アメリカ証券取引委員会(SEC)は1月、12本近いBTCスポットETFを承認した。それ以来、ファーサイド・インベスターズ(Farside Investors)によると、これらのファンドはおよそ120億ドル(約1兆8600億円)の純流入を引き寄せている。
SECがいつ承認するかは不明だが、イーサリアムに関連するスポットETFが承認されれば、イーサリアムのネイティブトークンに同様の資金プールが開かれることになる。
分散型予想市場のポリマーケット(Polymarket)の参加者は、SECが5月31日以前にイーサリアムのスポットETFを承認する可能性はわずか10%と見ている。SECは5月23日までにヴァンエク(VanEck)によるイーサリアムスポットETFの上場申請を承認するか否かを決定する。ブラックロック(BlackRock)の期限は6月23日だ。
財務専門弁護士のスコット・ジョンソン(Scott Johnsson)氏によると、SECはブラックロックなどによるETF申請が、商品ベースの信託株式としては不適切に申請されており、有価証券として保有している場合は適格ではない、などといった却下する理由を探しているという。
I'm aware this is widely considered a possibility, but this is your official notice that the SEC is considering the security question for ETH in this upcoming spot ETF order. Note that this question was never (afaict) asked regarding a spot/futures BTC ETF product. pic.twitter.com/TwhqmTnJfC
— Scott Johnsson (@SGJohnsson) May 14, 2024
マレックス・ソリューションズ(Marex Solutions)のデジタル資産部門共同責任者であるイラン・ソロット(Ilan Solot)氏は、イーサリアムは暗号資産ネイティブや外部のプレーヤーからのネガティブな感情の「避雷針」であり、いくつかの弱点があると述べた。
「資本は細分化される。多くのレイヤー2トークン(OP、ARBなど)やネイティブ・プロトコル・トークンを通じてエコシステムに触れる方法は比例して多くなる。すると、資本は細分化される」とソロット氏は電子メールで述べた。
ソロット氏は、(ライバルである)ソラナのコミュニティやビットコイン支持者からの強い反ETH感情が、否定的なイーサリアム・ナラティブを推進しており、高ベータの暗号資産は、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)などの伝統的な取引所で取引されていることから、外部のプレーヤーが弱気な見方を表明するための「完璧な媒体」だと付け加えた。
最後に、イーサリアムは最近インフレに転じ、2022年9月にプルーフ・オブ・ステーク・コンセンサスに移行して以来、一貫して見られた強気のデフレ供給トレンドを反転させている。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Ether-Bitcoin Ratio Slides to Lowest Since April 2021. Here’s Why